頼れる上司、ヘルメス専務

まえがき


★1000いきました!

いつもありがとうございます!


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 【棒術】から【柔術】、そして【剛術】へ……私が習得している“妖仙流”アビリティを駆使し、急所へと剣を突っ込まれたオリハルダイン・オラトリアは、ついに力尽きたようだ。


 エビの〆方、動画で勉強しといてよかった……。



『レアモンスター: オリハルダイン・オラトリア を討伐しました!』


 ・いったぁぁぁっ!!

 ●チョロリスト:[¥3,000] おめでとう!

 ・金蝦蛄の討伐って初?

 ・この素材使って作る装備を想像するだけで恐ろしい……



「チョロリストさん、ありがとうございます! ちゃんと倒し方勉強しておいて良かったわ!」



 討伐したはずのオリハルダイン・オラトリアの姿は、そのまま残っている。つまり、全身全てが素材としてドロップアイテム扱いだということだ。


 まぁ、そりゃ全身が甲殻に覆われてるんだから、全身が使えるよね。なるべく綺麗に討伐することができてラッキーだ。



 オリハルダイン・オラトリアをインベントリに仕舞い、後は帰るだけ……



「あっ」



 纏っていた妖気が霧散し、私の姿がもとに戻る。と同時に、『妖仙之姫ようせんのひめ——戦舞装せんぶのよそおい』も強制解除となった。


 【紫電】の連打に【小夜嵐】と【風花】と、“妖仙流”アビリティを連打していた私は、それだけ妖気を消費していた。それがたった今0になって、『妖気解放』状態が解除されたのだろう。


 【ファイナルゼーレ】は後数十秒、【サードギア】はエンスト。『禍ツ風纏まがつかぜまとい』の効果で残りHPは1。


 この周辺はオリハルダイン・オラトリアが一掃したとはいえ、ここは【モラクス火山】のど真ん中だ。


 ……生きて帰れるかな?



        ♢♢♢♢



「いや、無理」


「戻ってきたと思ったら、いきなり何を言っておるんじゃ」



 鬼幻城の自室にリスポーンした・・・・・・・私は、そこで見かけたカグラ様につい愚痴ってしまった。


 だって……無理でしょ、あの状況で死なずに突破なんて。

 オリハルダイン・オラトリアが何十とカニを撃破したけど、あそこに住むカニは数百では済まない数だ。


 帰る途中にもカニの巣を通らないといけなかったから、できるだけ頑張ってみたんだけど……HPは1だった私は、カニのハサミが掠って終了。こうしてリスポーンしてきたわけだ。


 まぁ、死んでもインベントリの中身は無くなったりしないから、素材は持ち帰ることができたんだけどね。



「という訳でカグラ様、忙しいのでまたすぐに出ますね」


「【剛術】を習得したばかりだというのに、慌ただしいのう」


「人を待たせちゃってるからね……せっかくカグラ様も戻ってきたっていうのに、全然時間が取れなくて申し訳ないけど」


「構わんよ。じゃが、妾から一つ助言しておこう」


「助言? なんでしょう?」


「怒りで我を忘れること勿れ。何があろうと、お主はお主じゃ」


「……?」



 どういう意味だろう。

 今この場では分からないけど、あの月が偽物だということを短歌にして私に知らせたカグラ様のことだ。きっと何らかの意味があるのだろう。



「分かりました、忘れないようにしておきますね」


「うむ、それでよい」


「それじゃ、またしばらく行ってきますね」













「ヘルメスさぁん!!」


「なんなんだ、来て早々……」



 『アーカイブ』の秘密部屋へと足を運んだ私は、さっそくヘルメスさんのところへと突撃する。ここで作業しているだろうという私の予想は当たっていたようだ。



「なんなんだは酷いでしょ、せっかく注文の品を持ってきたのに」


「注文の品って……まさか、昨日の今日でか?」


「そのまさかよ。ま、私にかかれば楽勝かな」



 リスポーンで戻ってきたことを棚に上げつつ……というか、私が言わなければバレないし。ひとまず取ってきたオリハルダイン・オラトリアをインベントリから取り出す。



「うおっ」


「ふふ、すごいでしょ」


「ここまで原形が残った状態で持って帰ってくるとはな。カローナに頼んで正解だったようだ」


「でしょ~? ヘリの修理にどれだけ使うか分からないけど、この大きさなら足りるでしょ?」


「十分だ。余った素材でお前の装備も作っておくことを約束しよう」


「さっすがヘルメスさん! そう言ってくれると思ってた! 強い装備を期待してるわよ!」


「装備の注文はあるか?」


「注文? ん~~……あ、どうせなら籠手みたいな武器が欲しいかな」


「籠手? 棒じゃなくてか?」


「まぁ、あれよ。新しいジョブを手に入れた、的な……」


「……こう何度も出会う度に新しい何かを持って帰ってくると、もはや呆れるな」


「もう、ちょっとは褒めてくれたっていいじゃない」


「一応褒めてはいるんだがな」


「ツンデレってことね、素直じゃないんだから……」



 ちょっと、無言のまま溜息は酷いじゃない!



「デザインはこっちで決めてもいいな?」


「もちろん! あ、時間がかかってもいいからね? ヘリの修理が最優先だし、『恋人ザ・ラバーズ』の装備もあるしね」


「あぁ、超特急で修理を済ませる。明日には飛べるようにして見せよう」


「そんな風に言い切るのなら、信用してもよさそうね」


「事実だからな」



 やだ、カッコいい。

 ヘルメスさんが装備を色々と作ってくれるのももちろんあるけど、私が何かとヘルメスさんを頼るのは、こういう『頼れる上司』感があるからかな。



 よし、じゃあこっちは全部ヘルメスさんに任せて、私は明日に備えようかな!

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