これ、ヤバいことに気が付いたんじゃない?
———絶対リベンジしてやるから!
って決意を新たにしたはいいけど、割と落ち込んでいた私は、配信終了後に一旦『パレードリア』のクラン拠点に来た。
なんで『パレードリア』かって?
ちょっとセレスさんに慰めてもらおうと思って……。
金剛蟹に負けたこと自体は、そんなに気にしてない。
まぁ
言い方はあれだけど、殺され慣れてるからね。
私が落ち込んでるのはそこじゃない。
元から勝てないつもりだったから、負けることも想定内だった。
けど金剛蟹には、必勝チャートを組んでいてバトル自体も想定通りに進んでいたのに、最後の最後で一手でひっくり返されたのだ。
しかもそれは、カニの自切を読み抜けていた私のミスで……
あぁぁぁぁぁぁぁぁっ——————!!
「セレスさぁぁぁぁんっ!!」
「んんんんんんっ! カローナ様ぁぁぁぁぁっ!」
クラン拠点に到着して早々セレスさんに飛び込んだ私を、セレスさんは受け止めてくれた。ドレスの上からもはっきり分かるほどの巨乳に若干跳ね返されそうになったけど、セレスさんは拒絶することなく受け入れてくれる。
あ~……この包容力、最高だぜぇ。
やっぱり傷心したときは、誰かに慰めてもらうに限る。
セレスさんは私のことを全肯定してくれるから、気持ちよくなれるしね。
セレスさんの胸に顔を埋めながら、頭をなでなでしてもらうこと1分ほど。
よし、元気チャージ完了!
「セレスさん、ありがとう!」
「カ、カローナ様が私に甘えて……? これは夢ですの?」
「セレスさん、戻ってきて」
「んふふふふふ……今日から
「チャージできたからいいかな。さすがにちょっと恥ずかしいし……」
「カローナ様から『慰めて』なんて連絡が来た時には目を疑いましたわ。
「あんまり何度もしたくないわね……今日はちょっと落ち込んだから」
「どうかしましたの?」
「……カニに、負けた」
そうして、金剛蟹との戦闘での出来事を語った。
追い詰めたことと、アビリティを自切で逃げられたこと、そしてHPが0になったこと……ぐぬぬ、悔しい……。
「まぁ、自切したハサミはちゃんとインベントリにしまって持ち帰ったんだけどね」
「初めてのチャレンジで素材を持ち帰られるだけで十分ですわよ! よく頑張りましたわ♪」
「えへへ、ありがとう。元気出たわ!」
「っ~~~、もうっ!
そんなことを言うセレスさんは、確かに頬を紅潮させながら鼻息を荒くしている。これが配信されてなくて良かったね……。
「カローナ様はまた【モラクス火山】に挑戦しますの?」
「もちろん! 負けたままで終われるわけないもんね」
「一度負けたのに、やる気に漲っているカローナ様の闘争心は流石ですわね」
「昔から負けず嫌いだからね……【モラクス火山】も攻略するまで挑戦するわよ。……ちょっと攻略の目途が全くないけどね」
「お手伝いしたいところですけど、金剛蟹は魔法耐性も高いですから……力になれなくて申し訳ありませんわ」
「ううん、大丈夫! 自分で何とかしてみせるわ。その代わり、何かいいアドバイスとかないかしら?」
「そうですわね……カローナ様はハサミを一本取ったのですわよね? でしたら、その個体のハサミが再生する前に討伐したいですわね」
「あ、そっか……私が戦闘範囲から離れたからと言ってリセットされるわけじゃないのよね」
毎回リセットされるなら、女王蜂さんも進化してないはずだしね。
「結構早く再生しちゃう?」
「脱皮を経ての再生ですから、数日で再生するものではないと思いますわ。ですが……倒し易いですので、他の方々も狙ってくるかと」
「あー、確かに片腕がないカニが居ることを配信しちゃってるしね……」
集中力切れてるし、連戦したくね~……。
「連戦したくね~、って顔してますわね」
「よく分かったわね」
「
「……当然セレスさんも見てますよねぇ。いつもありがとうございます」
「
「セレスさんもクリアしてるんじゃ?」
「えぇ、
「あはは……そのつもりで配信してたし、楽しんでくれたのなら何よりね」
んお……?
なんか違和感……。
「セレスさんがクリアしたときも、私がやったみたいな手順だったの?」
「えぇ、細かい所は違いますけど、大筋は同じでしたわ。どうかしましたの?」
「あれで病気が治ったんだよね? 私もセレスさんも、視聴者さんもクエストやってるし……あの島、何度も病気になってる?」
「
「アネファンに限って、そんなゲーム的な処理をするかしら」
どう考えても、このゲームはリアルタイムで世界が進行している。
【極彩色の大樹海】の異変もそうだし、ハサミを自切した金剛蟹もそう。
『ある事象』は、それを発生させたプレイヤーだけではなく、他のプレイヤーにも共有される。
だから、【テルクシノエ】の病魔を浄化したのなら、それ以降【テルクシノエ】を訪れるプレイヤーは、浄化された後の村を見ることになるはずだ。
しかし、実際は『
だとすると、【テルクシノエ】は何度もあの病魔に脅かされているということになる。
「……でも、おかしくない? 村人たちは何度も病気になっていたとして、それについて何も言わないの? 『その方法では治らなかった』と言えば、プレイヤーだってクリア方法を考えるのに」
「そうですわね。でも、クリアしたときの村長さんの感謝の言葉は、心からのものに感じましたわ。それこそ、その時が初めてであるように」
……もしかして、病魔が、とか『
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