モラクス火山へ!(即帰宅)
「皆さんこんにちは! 今日も張り切ってやっていきますよ~」
●オルゾ・イツモ:[¥5,000] 待ってました!
●チョロリスト:[¥3,000] 支援!
・なんか周囲の景色が不穏
・お、騎士装備が復活してる
「そうなんですよ!
・ちゃんとお礼言えるカローナ様えらい
・ヘルメスの宣伝をしとかないといけないからね
・カローナ様の明るさと周囲の不穏な空気にギャップがありすぎるww
・ここどこ?
「あ、今日はですね、【モラクス火山】に来ています。いやー、いい天気ですね!」
・いい天気は草
・雨どころか火山弾が降ってくるんですがそれは
・火山灰で空も鉛色だし
「冗談なんだからちょっとは笑ってよ。それにしても暑いですね……って、近くにマグマが流れてるから当たり前か」
・エッッッッッッッ!
・カメラ、上から覗き込む感じで頼む
・首筋を伝う汗とか、いいよね……
胸元を指で引っ張って、手で扇いで空気を送り込む仕草をすると、コメント欄が一気に勢いを増す。ごめん、ちょっと狙い過ぎだった。
そんな風にコメント欄と掛け合いしつつ、『熱耐性バフポーション』を飲み干す。これがないと、マグマの熱でスリップダメージを受けるのだ。
実際は、マグマほどの熱になると市販のポーションでも耐性が足りない。しかし、『
さて、そんな【モラクス火山】なんだけど……これは確かに厳しいフィールドだ。
草木一本も生えていない不毛の大地どころか、ひび割れた地面の隙間からマグマが流れ出し、凄まじい熱を放っている。
見える範囲にはモンスターは居なさそうだけど、巣穴のような穴が見渡す限りに数えきれないほどある。
「……絶対、あの中にモンスターが潜んでるよね……」
聞く限り、ここに住んでるモンスターは
「ま、臆してても仕方がない! 突撃ぃっ!」
・勢いで草
・なんでこんなに思い切りがいいの
・恐怖という言葉を知らない女
火山フィールドにゆっくりと、しかし力強く一歩を踏み出す。二歩、三歩と歩を進めていき———そして、戦闘範囲に入った。
「っ!」
地面の下からゴリゴリと何かが削れるような音が響き、地面が揺れ始める。直後、目の前にあった穴から、巨大なハサミが飛び出てきた。
【
「【クロワゼ・デリエール】!」
狙いすましたかのように私に迫って来たハサミは、滑るように横にずれた私の身体を捉えられずに地面を穿った。
【クロワゼ・デリエール】は、【ア・ナリエール】から進化したステップ系アビリティだ。相手の攻撃を躱し、回避に成功したときにヘイト値を下げる効果を持つ。
後はヘイトが高いほどリキャストが短くなる効果もあり、ソロで戦う私に取ってはとてもありがたいアビリティだ。
「これが金剛蟹……思ったよりデカいわね!?」
穴から姿を現した蟹———『金剛蟹』は、甲羅の幅が数mはありそうな巨大な蟹だった。その名の通り全身がダイヤモンドのように美しい殻で覆われており、素材としての価値は高そうだ。
さて、後は強さが問題なんだけど……っ!
スタートを切った私は一気にカニの横を抜け、背後へ回り込む。もちろん、すれ違いざまに脚の関節部分に一発入れてやった。
「硬っ……!?」
薙刀を通して伝わる、カニの異常な硬さ。
アビリティなしとはいえ、強化された薙刀が全く通らないなんてね。
「ちょっ、デカいくせに速いのね!?」
「キュララララッ!」
その場で回転しながらハサミを振り回すカニは、まさしく超信地旋回する戦車のよう。そんなカニのハサミの下をくぐり、薙刀を引き絞って【グラン・ペネトレイション】発動!
放たれた赤黒い閃光が真っすぐにカニの脚に突き刺さり、ダメージエフェクトが弾ける。クリティカル補正も相まって、それなりのダメージだ。
「まだまだぁ!」
【グラン・カブリオール】の大ジャンプを発動しつつカニの顎を下から斬り上げ、そのままカニの上空へ。
眼下のカニを目掛け、【グラン・ジュテ】の空中ジャンプで加速、【兜割かち】を叩き込む!
ガキィンッ! と激しい金属音を響かせ、ダメージエフェクトが弾ける。
が、私の手も痺れるし、これでも殻が欠けることがない。
マジか……【グラン・ペネトレイション】と【兜割かち】は、私のアビリティの中でも一番カニの殻を割るのに適したアビリティだったんだけど。
「けど、その殻で装備作ったら最高ね!」
バックステップを踏んで間合いを開け、一度体勢を整える。
普通に殻を叩いてもダメだ。
有効打をコンスタントにクリティカルヒットさせないと……
改めて頭の中で攻略法を組み立てる私は、目の前のカニが動くのとは
ふと思い出して周りを見渡せば、背後にも、隣にも、カニの巣穴……
「ねぇ、これってまさか……」
・あっ(察し)
・あっ(察し)
・あっ(察し)
「て、撤退ぃぃっ!」
複数の穴から同時に飛び出てきた無数のハサミが、地面を打ち砕いて轟音と響かせる。それだけでは収まらず、少し離れた場所にある巣穴からも、音に反応したのかゆっくりとカニが姿を現した。
ええい、【セカンドギア】! 【セカンドウィンド】! 【グリッサード・プレシピテ】!
最速で駆け抜けないと逃げ道さえなくなる!
【グラン・ジュテ】の空中ジャンプの残りも惜しげもなく使い、時にはカニの甲羅を足場に駆け抜ける。
「逃げるわけじゃないから! 戦略的撤退だから!」
・言い訳で草
・それは噛ませ役の台詞なのよ
・滲み出る小物感ww
あんなのに殺到されたら、せっかく直したばかりの装備がまた壊れるわ!
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