病葉の舞う孤島 8
さてさて、『
結局、昨日はみんなで緑の葉をつける樹を探すことにしたんだけど、意外と早く見つかって助かった。
そりゃまぁ、すでにクリア済みの視聴者さん達にナビしてもらって探したんだから、すぐに見つかるよね。
一応、樹が見つかるポイントにいくつかパターンがあるらしく、視聴者さん達に案内されるままに歩き回ることになった。
まさか、見つかったのは
大きい樹にばかり注意が行っていて、スルーしそうになったよ……暗いから色の違いとか分かりにくいし。
そんなわけで、何とか発見した
「じゃ、今日も張り切っていきましょうか!」
・おーっ!
・おーっ!
●オルゾ・イツモ:[¥5,000] 応援!
スパチャにお礼を言いつつ移動、場所が分かってるからあっという間だ。木々の間を縫って最短距離を行き、ポイントへと向かう。
移動を開始してしばらく、苗がある場所に着くと……すでに作業を始めている3人と、切り倒され木々が周囲に転がっていた。
「今日はみんなもう揃ってるのね」
「あ、カローナさんこんにちは!」
「お、どうもです。今日はバイト無かったからね」
「それは良かったわ。樹切ってよかったの?」
「あぁ、それね。昨日カローナさんがネタバレOKって言ってくれたんで、ログアウトしてから調べたんすよ」
「あー、なるほど」
アップルさんの言葉に納得する。配信の都合上初見で攻略を頑張ってたわけだけど、その配信者の私が攻略法見始めたら、もう制限解除だもんね。
むしろ、調べて貰ったから目的が一致して攻略がスムーズに行くだろうし。
「私の配信に気を遣ってくれたんだね、ありがとう♪」
「当たり前ですよ!」
「ぜ、前回みたいに配信の邪魔したくないんで……」
「あれな……『何カローナ様の配信に乱入してんだこの野郎』って何人の知り合いに睨まれたことか……このクエスト配信もそうなんだけどね」
「あはは……あれは事故だし、今回は私が乱入したわけだから、皆さんあんまり虐めないようにね?」
・ちゃんとフォローするカローナ様優しい
・俺も知り合いがカローナ様と一緒にクエストやってるとこ見たら戦争だしな
・本物のファンなら見守ってあげるのが一番だろ
・寄ってくる奴らは出会い厨か承認欲求モンスターだから気を付けなよ
「皆さん良いこと言うじゃん。ありがとう」
・あぁぁぁっ、カローナ様の笑顔がクリティカル!
・たまんねぇなおい
・なんだかんだ言ってカローナ様はこういう供給多いから絶対配信見てた方がお得
・こういう笑顔は配信じゃないと見れないからな
「あ、それで話を元に戻すんだけど、樹を切ってよかったの?」
・それで合ってるよ
・緑の木の周りを円形に切り開いて、そこに魔法陣を描く
・このポイントだと直径10mぐらいか?
「結構大変ね……」
樹を剣で切り倒すのはなかなか難しい。しかも今は『魔皇蜂之薙刀』が修理中だし、モップか『ヴィルトゥオーソ』で切れるかと言われると……
「まぁやってみますか」
【魔纒】を発動してモップに風属性を付与。モップを腰だめに構え……
「【大伐断】!」
緑の魔力を纏うモップが宙を薙ぎ、目の前にあった樹に裂傷を刻む。モップの効果によって魔力攻撃が発生しているため、刃物でもないモップでも斬撃を扱うことができる。
けど、さすがに一撃とはいかず。
幹の半分いかないぐらいまで裂傷を刻んだところで止まってしまった。
「モップじゃ無理があるかな……【グラン・ペネトレイション】!」
今度は上位アビリティの貫通攻撃。
幹の無事な部分にモップによる刺突が叩き込まれ、僅かな抵抗の後に後方へと貫通した。
エフェクトが収まって数秒、アビリティを受けた樹はミシミシと音をたて、ようやく倒れた。
「おぉぉぉ」
「アビリティ2回で倒せるのはさすがっすね……」
「あはは、ありがとう。でも効率悪いわね」
この2つのアビリティのリキャストは少し長めだからは次の樹を切るにはしばらく待たないといけない。
他の斬撃系アビリティだと、【シークエンス・エッジ】があるけど……ナイフで連撃して切り倒せるならとっくにやってるって。
こうなるとやっぱり、魔法職が効率いいなぁ。物理よりも魔法が効くみたいだし、昨日あんまりできなかった分、グレープさんが張り切ってるし。
「大体さ、私立ち止まって攻撃するの苦手なのよね。スピードで攻撃力加算して殴るタイプだし」
・アビ二回で倒せるのすごいと思うけど
・この作業、魔法職いないとかなりの労力だからなぁ
・カローナちゃん、スピードに乗ってやってみて
・動かない樹に対して全速力出すの想像するとなんか笑う
「……一回やっとく? 無理だと思うけど」
まだ倒されていない樹に狙いを着け、十分に距離を取る。せっかくだからノリよくいかないとね!
「【レム・ビジョン】、【レール・アン・ドゥオール】、【マキシーフォード】、【ドゥヴァン・デブーレ】起動! 【グリッサード・プレシピテ】!」
各種AGIバフを使い、前方移動アビリティでスタートを切る。数mあった距離はあっという間に0になり、狙いの樹はすでに目の前だ。
「【千手夢奏】!」
私の身体が樹の真横を通り抜けると同時に、幾重もの打撃音が響いて樹を揺らす。すれ違う一瞬の間に、モップによる多段ヒットを叩き込んだのだ。
表面の皮を砕かれながら、狙いの樹は大きく揺れ———何事もなかったかのように次第に収まっていった。
「ほらーっ! 無理って言ったじゃん!」
・草
・ちゃんと応えてくれるカローナちゃんホント好き
・無理なの分かってて全力でやってくれるのも、ちゃんと無理なのもさすが
・カローナ様の攻撃を耐える樹もハイスペックなのでは?
「まぁいいですけどぉ……タイムリミットが来る前にさっさと終わらせないと!」
そんな風に楽しみつつ、協力して伐採を開始。攻略を聞く限りまだ工程が残ってるから、サクサクいかないとね!
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