病葉の舞う孤島 7
大幅な妖気ゲージの消費により黒羽根が散っていく中、ふと聞こえた声の方へと目を向けると、声の主はようやくログインしてきたグレープさんだった。
「え……もしかして終わった?」
「……ごめん、倒しちゃった」
「えぇ……」
だって手を抜けるほど楽な相手じゃないんだもん!
それに、クエスト自体は終わってないんだからいいでしょ!
「おぉ……こ奴を倒してくれるとは……」
私とグレープさんの間に流れる微妙な雰囲気を打ち破るように、家から出てきた村長さんが声を掛けてきた。
ナイスタイミング!
『
ひとまずはグレープさんに今の状況を説明しておかないとね!
♢♢♢♢
「えーっと、つまりアップルとオレンジが明るいうちにあの悪魔みたいなやつを見つけていたと」
「あぁ、そうだな」
「で、カローナさんがログインした後、その悪魔みたいなやつが村を襲撃してきたと」
「はいっ」
「そうしたら、カローナさんは5分足らずでボコボコにしたと」
「あはは、つい……」
「……強すぎん?」
「「ホントそれ」」
世界トップレベルのプロゲーマーと格ゲーで修行しまくった強さは伊達じゃないからね。アネファンはアバターの操作性もすごいし。
「まぁそれはいいとして……村長さん、あれの正体って、まさかとは思うけど……」
私達4人の視線が村長さんに集まる。数秒の沈黙が流れる中、腕を組み、目を伏せ、重々しく口を開く村長さんの声は、悲痛に歪んでいた。
「うむ……あれは、我々の
「つ、つまり、『
「うむ……
「「「「っ…………」」」」
オレンジちゃんが目を見開き、両手で口元を覆う。
ショックを受ける気持ちも分かる。
自分たちが倒した相手が、もとは村人だったなんて……たとえ悪魔になってしまっていたとしても、気持ちの良いものではない。村長さんの沈痛な想いを察するべきだろう。
「いや、よいのじゃ……ああなってしまっては、もはやもとに戻る望みもない。我々としても、そして彼自身としても、村の者を傷つける前に成仏できてよかったじゃろう」
「……そう言ってくれるとありがたいけど……ちょっと、というかかなりモヤッとするわね」
「うむ……だからこそ我々も、この負の連鎖を早く断ち切りたい。いつ自分が
「…………」
いつ自分が、友人が自我を無くし悪魔になり果ててしまうのかと、怯えながら暮らすのは気が狂いそうになるだろう。
病の治し方が分からない以上、鎖国的に交流を絶って、
タイムリミットまでに全て解決できるか……
「ギブアップかも……」
「えっ……?」
「アップルさん、グレープさん、オレンジちゃん。これの解決法、何か思いつく?」
「いえ……早く何とかしてあげたいとは思いますけど……」
「正直何をどうしたらいいかさっぱりっすね」
「だよね、私も。……てことで、私たちだけでの攻略を諦めて、視聴者さんに助けを求めようかなって」
・おっ?
・俺らの出番か?
・カローナ様が『お願い♡』って可愛く言ってくれたら
「視聴者さんも心待ちにしてるみたいだし」
「私はいいですけど、二人は?」
「助けてもらおうぜ……」
「俺何もしてないけどいいのかな……」
「反対意見はなさそう? それじゃあ……」
カメラを両手で掴んで覗き込み、咳払いをして喉をチューニング。俄かに活気づくコメント欄を眺めながら……
「私を助けさせてあげるわ。ほら、クリアの方法を教えなさい?」
・くっそ上から目線で草
・これだよ、これ
・カローナ様はぶりっ子より女王様系だからよぉ
・知 っ て た
・はっ! 森の中で唯一緑の葉をつける樹をお探しください!
・すっかり調教されてて笑う
あー……そんな気はしてたんだよね。
だって樹が全部変色してるって言われたら、まだ影響を受けていない樹もあるんじゃないかって思うよね。
見つけてどうするか、ってところが不透明だったから、『
・あいつを倒したら、山頂の付近で見つかるようになるはず
あっ、なるほどね。
「三人とも、視聴者さんが『無事な樹を探せ』だって」
「そうなりますよね……」
「え、この暗闇の中を?」
そう、それが問題だ。
外は完全に日が落ち、暗闇の中を一本の樹を探して彷徨うなんて、場所がある程度分かっていても非常に効率が悪い。
「今からってなるとなかなか難しいし、アップルさんとオレンジちゃんはもう結構な時間プレイしてるでしょ? 休んだ方がいいんじゃない?」
「確かに……もう何時間もやってますもんね」
「俺さっき来たばっか……」
「……じゃ、グレープさんはもう少し私と探索する? 今日のうちに樹を見つけておけば、明日楽になりそうだし」
「ぜひ!」
・うらやま
・カローナ様からのお誘いだと……?
・まぁカローナ様が早まって倒しちゃったからね
「じゃあ、アップルさんとオレンジちゃんは終了、私とグレープさんは引き続き探索……でいいかしら?」
「あー、それぐらいだったら俺らも協力するっすよ?」
「さすがにグレープさんが可哀想ですしね」
「お、お前ら……!」
「あなた達、仲いいわね」
「もちろんです! 私達、友達なので!」
「「友達、ね……」」
「はいはい、それじゃもうちょっと協力してもらって……手分けして探すわよ!」
「「「お———っ!」」」
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