病葉の舞う孤島 2
まえがき
さて、新たに始まった『病葉の舞う孤島』クエストですが、実は作者的にかなり書くのが難しかったり……多少違和感があったらごめんなさい(_ _)
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「いやー、上手くいったっすね」
「あんた何もしてないでしょ……全部カローナさんじゃん」
「女王様の直筆の依頼書とか、まさか過ぎるでしょ! チートじゃんそれ!」
「まぁだってティターニアちゃんに依頼されたのは事実だし……《専属秘書》の称号貰ったら発生したのよ」
「専属って……それ女王様のお抱えってことじゃないですか!」
「は~……上位陣はそんなところまで行ってるんすね……」
「お前ら、乗せてやるのはいいが海に落ちても自己責任だぞ」
結局あの後、私達はおじさん……サレオスさんの船に乗せてもらい、【テルクシノエ】に向けて出港したのだ。
サレオスさんは終始仏頂面だったけど、さすがに『女王様の依頼』と言われては止めようがなかったのだろう。連れていくだけ、という条件で船を出してもらえることとなった。
村で何が起きても自己責任。
まぁ、ゲームなんだから常に自己責任なんだけどね。
すでに日が落ちて真っ暗闇の中を、オレンジちゃんが出した小さな明りを頼りに進んでいるから、ムード的にもホラー感がすごい。
……ちょっと怖いな……。
「そういえばサレオスさん。もし良ければ、村の病について教えてくれないかしら?」
「……悪いがそれはできない」
サレオスさんから帰ってきた言葉に、全員の視線が集中する。まさか断られるとは思っていなかったのだ。
本当に『連れていくだけ』ではないだろうし、それを隠すのは彼にとってもむしろマイナスだ。
「どうして? 教えてくれた方がスムーズに解決できるかも———」
「記憶がないんだ。あの村に居た時の」
「「「「えっ……」」」」
「俺が覚えているのは、俺があの村の生まれであること、あの村の場所……そして、何か身の毛もよだつ恐ろしいものを見た、ということしか分からない」
「そう……それはごめんなさい」
「いや、いい。協力できなくて悪いな」
『身の毛もよだつ恐ろしいものを見た』か……酔っぱらいおじさんから聞いた話と照らし合わせれば、『病によって悪魔になってしまった村人を見た』と考えるのが自然かな。
化け物を見て命からがら逃げてきたのなら、記憶が無くなっていても不思議ではない。
そんな感じかな。
・カローナちゃんもっと喋って
・視聴者置いてけぼりで勝手に話を纏めてるときあるから
「あ、ごめんごめん……それほど恐ろしい体験をしたのかなって」
長い付き合いだからか、視聴者さんも私の扱いが分かっているようだ。
思考に耽ると無言になる癖、なかなか治らないんだよね……。
「見えてきたぞ」
そう呟いたサレオスさんの視線の先、暗闇にぼんやりと巨大な影が見えてくる。近づくにつれ、それが木々に囲まれた島であることが分かってきた。
ここが【テルクシノエ】なのだろう。
「すまないが、俺はあまり村の者に見つかりたくはない。裏の岩場に着けるから、その後は何とかしてくれよ」
「オッケー! ここまで連れて来てくれてありがとう! ところで、帰りはどうすれば?」
「……二日後の日没後にまたここに来る。それまでには何とかなるか?」
「二日後ね。何とかするわ」
「分かった。……村を頼んだ」
私たちが船を降りる直前、照れ隠しなのかこちらに視線も向けずぶっきらぼうに呟いたサレオスさんの言葉が私の耳に届き、私はグッとサムズアップを返した。
♢♢♢♢
「さて、【テルクシノエ】に到着したっぽいけど……村どこ?」
「真っ暗で全然見えないですね……」
「とりあえず歩いてみるっすか?」
「そうね。裏に着けるって言ってたし、グルっと回ってみたら見つかるかも?」
島の大きさがどれ程かは分からないけど、シルエットを見る限りそれほど大きくはなさそうだ。第一、村が一つあるだけの島だ。それほど大きくないと思いたい。
サレオスさんの話では、『村人も多くはない』ってことだったしね。
そんなわけで歩くこと10分ほど、断崖絶壁の岩場の間に
「そこに誰かいるのか!?」
門の支柱の上部、見張り台となっているであろうその場所から声が聞こえる。
暗闇だから姿は見えないけど、若い男の声だ。
「私たちはラ・ティターニア様に村の調査を依頼されてここに来たの!」
「何っ!? 少しそこで待っていろ」
そんな声が聞こえてきて、待つこと数十秒。
腰に剣を携えた二人の男がこちらへと向かってきた。
二人とも、サレオスさんと同じように頭にターバンのようなものを巻いている。この村の風習的なものなのかな?
しかし、帯剣したままとは……いや、仕方がないか。こんな夜に島の外から人が来たら、不審者だと思われても仕方がない。
やってきた二人は私たちの姿を認めると、そのうちの一人が警戒する表情のまま問いかける。
「証明できるものはあるか?」
「これでいいかしら?」
「これはっ……ふむ、確かに。おい、村長に知らせて来てくれ」
「分かった」
「信じてくれたのかしら」
「あのサインと印璽、ラ・ティターニア様のもので間違いない。……しかし、そうすると何故こんな夜に? 明るいうちから来ればいいものを」
「結構早い時間から来ようとはしていたのよ? でも、誰もこの村に連れて行ってくれないんだもの」
「あぁ、病の話が伝わっているのだろう。それを知ったうえで、貴殿らは良く来てくれたな?」
「あら、人を助けるのに理由が必要かしら。ね、そうでしょ?」
「も、もちろん!」
「困ってたら助けるのは当たり前っすよ!」
「そ、そんな話聞いたら放っておけないしな!」
・全然思ってなさそうで草
・称号のためって言ってた気がするけど?
・カローナ様、シレっとバレバレの嘘吐くよね
コメントが好き放題言っちゃってくれてるけど、なんのことだろう? 私には分からないなぁ。
「……貴殿らの高潔な意思に感謝する。さて、村長にも話が通ったようだ、入ってくれ」
門番の男がそう言うと、ゴゴゴッ———と音を立てて門が開いていく。
門の向こうには開けた空間と、点在する民家。
そして、遅い時間にも関わらず出迎えてくれた数名の村人。
その中で中心にいる、杖を突いて腰も曲がっているおじいちゃん……じゃなくて、お年を召した人がきっと村長なのだろう。
「ようこそ【テルクシノエ】へ……と言っても、歓迎できる状況ではないのじゃがな。この村を救うため、ぜひ協力していただきたい」
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