言質は取ったし、当然逃す手はないでしょ!

「ライカン、お非~リア、随分早かったのう……」



 女王ティターニアの背後に現れた二人の騎士。

 そのうちの一人は、なんと『銀龍聖騎士団』のクランリーダー、お非~リアだったのだ!



「もちろん、ティターニア様の行動は分かりきっていますから」


「くっ……今回は完全に逃げ切ったと思ったのに……」


「カローナ様、我が姫がご迷惑をおかけしました」


「これお非~リア、『ラ・ティターニア』と呼ぶが良い」


「別にいいけど、お非~リアさんがなんで? ティターニアちゃ……様と知り合い?」


「はい。私は《任命近衛兵》の称号を持っておりまして、ティターニア様の命の下、専属騎士として活動しております」


「はぇ~……」


「聞いておらんのか、お非~リア!」



 堕龍おろち戦では、あんまりお非~リアさんの実力を見ることができなかったけど……女王様から認められるほどの実力を持っていたとは。


 実際に見たわけじゃないけどね。



「専属騎士って、こっちのライカンさんも同じ?」



 狼の獣人、ライカンに目を向けると、プンスカ怒るティターニアを宥めるライカンが私の視線に気づき、小さく会釈して口を開く。



「お初お目にかかります、竜騎士殿。私はライカン、ティターニア様の誇るです」


「これはご丁寧にどうも。カローナです」


「竜騎士殿の噂はかねがね……堕龍おろち戦の際でも活躍したようですね」


「お主も私の話を聞かんかーっ!」


 ・ティターニアちゃんが専属騎士に振り回されてて可愛い

 ・プンスカしてるティターニアちゃん可愛いよね……

 ・純白ノースリーブドレスからちらちら覗く腋とちっぱいにしか目がいかない



「ところで、なんでこんなところに女王様が来てるの? 普通に出歩ける身分じゃないだろうし、ましてや護衛を振り切ってまで……」


「本当に子供みたいな理由ですよ。王城での勉強が嫌で、目を盗んで逃げたに過ぎません」


「べ、別に勉強が嫌なわけじゃないのじゃっ……!」


「初対面の貴殿に会いに来たのも、堕龍おろち戦での活躍を耳にしたティターニア様が、貴殿を『欲しい』と考えたからでしょう。『そんな人物を従えてる私はすごい』と、周りに見栄を張りたいのですよ」


「ライカン、お主さては私を馬鹿にしておるな?」


「女王様というより、ただの子供みたいね……」


「はい、見た目通りの子供ですから」


「……お非~リア、ライカンが私の話を聞いてくれないのじゃ……」



 なんかティターニアちゃんの気持ちも分かるなぁ。束縛が強い環境にいると、それに背きたくなるよね。


 私もそんな感じで配信者になっちゃった人だから……ゲーム自体は最初から好きだったけどね。



「そういうことなので、ティターニア様の言葉も子供の戯言だと思っていただけると……」


「勝手なことを言うでないライカン! 私は本気じゃぞ!」


「えっとね、ライカンさん……無かったことにしようとしているところ申し訳ないけど、私もティターニアちゃんの言葉を聞いちゃったし、『専属騎士』に興味が湧いてきたなって」


「……ティターニア様、本気にされていますよ」


「言っておるじゃろう、私は最初から本気なのじゃ!」



 ライカンさんが、ハァッ……と小さくため息をこぼす。

 呆れの感情と、『またか……』とでも言いたげな表情だ。



「いつものことですよ。ティターニア様は興味が湧くと、こうしてすぐに声をかけてしまうので、実際『任命近衛兵』の多くはティターニア様が拾ってきた者が多いのです」


「あー、女王様にそんなこと言われたら、言われた方はそりゃ舞い上がって従うわよね。……もしかしてお非~リアさんも?」



 急に私に話を振られたお非~リアさんは、ティターニアを宥める手を止めてこちらに顔を向ける。なんかやけに顔が緩んでるのは見なかったことにしておこう。



「はい、防御ランキングに乗った頃にティターニア様から声を掛けていただきまして。『銀龍聖騎士団』にメンバーも全員が『任命近衛兵』ですよ」


「へぇ、あの人たちそんなにすごい人達だったんだ」


「そうやって様々な人に声をかけるものですから、近衛兵も数が多くなってきていまして……とはいえティターニア様の言葉はなかったことにできません。貴殿もすでにその気・・・になっているようですし」


「それはもちろん。だって、なんか珍しい職業ジョブとかアビリティを手に入れるチャンスじゃない?」


「近衛兵が多いのであれば、秘書でも良いじゃろ! ちょうど優秀な女性の秘書が欲しかったのじゃ!」


「ティターニア様は静かにしていてください」


「なんじゃとーっ!」


「……女王様の扱い、そんなのでいいの?」


「えぇ、ティターニア様もやり取りを楽しんでいるところもあるので」


「ならいっか」


「しかしながら、仮にも女王であるティターニア様の身を守る者。生半可な実力では認めることはできません」



 鋭い目つきでそう言い放つライカンさんに、周囲の空気が一変するのが分かる。

 ピリッと張り詰めるような、そして突き刺さるような鋭い闘気だ。


 これ、そういうこと・・・・・・か?


 それを分かったうえで、あえて私はライカンさんに問いかける。



「それじゃ、どうすれば私の実力を認めてくれるのかしら?」


「もちろん、『決闘』です。《女王の剣》ライカン、私が自ら見極めましょう」



『エクストラクエスト: 妖精女王ティターニアの我儘、専属秘書の採用試験 を開始します』

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