何故か私は、一日で英雄になったらしい
「さて、気を取り直して配信を続けていきますが……なんだか様子が変じゃないですか?」
カルラの【
この街も
気になるのは街の状況ではなく、街の人々の様子。
やたらとNPCに話しかけられるのだ。
プレイヤーに話しかけられるなんてことはよくあったし、アネファンの民度は良い方だと思うから、変に絡んでくるプレイヤーは少ない。まったくいないわけじゃないけど。
んで、最近は他のプレイヤーも私の配信を邪魔しないようにと、遠巻きに眺めていることはあっても絡んでくること自体はかなり少なかったのだ。
しかし今は、多くのNPCが私を取り囲み、『竜騎士様だ』とか『
「私が
・オロチ戦で活躍したプレイヤーはNPCからの好感度が高くなってるらしい
・でもこれほど囲まれるのは初めて見たけど
やっぱりね。
NPCはこの世界で生きているわけだし、戦う能力がない者にとっては、あれだけ巨大なモンスターが現れて襲ってきたら恐怖だろう。
そして、そのモンスターに立ち向かい討伐してしまうプレイヤーを、『英雄』と囃し立てるのも納得だ。
「困っちゃうわね」
・そんな嬉しそうな表情で言われても
そりゃこれだけ好意を寄せられたら嬉しいでしょ。
取り囲むNPCに愛想よく挨拶しつつ、リンゴみたいな果物などを受け取る。
気前のいいNPCが色々と分けてくれたのだ。
英雄扱いされちゃって、ちょっと気恥ずかしい感じもするけどね。
「そこな竜騎士よ」
何処からともなく、可愛らしさを含みながらも威厳に満ちた声が聞こえてくる。
NPC達の間にざわめきが広がり、まるでモーセの伝説のように人混みが左右に割れた。
でも、キョロキョロと辺りを見渡しても、声の主らしき人物は見つからない。
「こっちじゃこっち」
こっちって……普通はそっちには留まれないんだけど?
私は、声がする方へ顔を
そこには、高貴なドレスを靡かせ、アゲハ蝶のような優雅な翅を羽ばたかせて宙に浮く、人外じみた美しさを持つNPCの少女が、こちらを見て笑みを浮かべていた。
美しい少女だ。
ぱっと見は10歳前後の少女といった見た目だけど、その造形には運営の本気が伺える。
日の光を受けてキラキラと輝く金糸の髪。
世にも珍しい、オパールのような
そして、ステンドグラスのように色鮮やかな翅。
自分でも何故かは分からないけど、彼女の姿を見た瞬間から、『妖精だ』と確信した。
「あなたは……」
「私の名は『ラ・ティターニア』。妖精女王にして、
「えっ…………このゲーム、
・そこかよ
・一応アネファン世界にも王国があるぞ
・俺も初めて知ったんだが……
視聴者さんに色々と教えてもらったところ、アネファンには一つの王国があるらしい。
国が一つ故、ただ単に『王国』と呼ばれているこの国は、【ティエラ】から始まりいくつかの街が存在する。
確かにオープンフィールドのVRゲームにしてはマップが狭いと思ってたけど、たった一つの国だったとはね。もしかしたら『鳥籠』の外には別の国があるかも?
「それで、ティターニア……女王様? は、どうしてこんな街中に?」
「名前の前に『ラ』を付けるが良い。これは王族の血統を表す高貴な名であるぞ」
「なら、ラ・ティターニア様」
「うむ。たまたまこの街にいたとき、ちょうど
あー、のじゃロリかぁ……カグラ様と被ってる……。
いや、似合ってるからいいかもしれないけど。
「
「お待ちください、ティターニア様」
「っ!? しまった……もう見つかってしまったのじゃ……」
ティターニアの言葉を遮り、彼女の背後に現れたのは、鎧に身を包んだ二人の人物。
その人物を見た私は、思わず目を見開いた。
片方は頭の上にNPCを示すマークがあるため、NPCであることが分かる。
そのNPCは獣人族……それも狼の獣人だろう。
よくある『ケモ耳と尻尾がある普通の人間』ではなく、狼が二足歩行しているかのような、深度の深い獣人である。
灰色でふわふわな毛並みが暖かそう……。
そして普通にイケメンである(カローナ個人の感想です)。
それはそうとして、驚くべきはもう一人の人物だ。
もう片方はなんとプレイヤー……それも顔見知りのプレイヤーだったのだ!
「ライカン、
そう、ティターニアに呼ばれたその人物は、
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