その翼に誇りを、その瞳に覇天の輝きを 36
釘のように鋭い雹を広範囲に降らせる
その冷気を上回る熱波で吹き飛ばし、技をキャンセルさせたのは炎を纏うドラゴン、『ドラグアグニ』であった。
けど、私が驚愕したのはそこじゃない。
ドラグアグニの背中で仁王立ちしてドヤ顔してるミカツキちゃんの存在だ!
しかもドラグアグニが燃え盛るような翼をもっているのと同じように、ミカツキちゃんも炎のようなオーラを纏っているのだ。
しかも『アグちゃん』とか呼んでるし……この短時間でどうやってそこまで打ち解けたのか……。
「ミカツキちゃん、それどうやったの?」
「別にぃ? 普通にしてたら仲良くなったけど?」
・『ドヤ顔』の参考画像として使いたいほど見事なドヤ顔
・ミカツキちゃんも大概ヤバいPSでは?
・いやこれPS関係あるのか?
・なんてドヤ顔が似合う幼女なんだ……
「ドラグアグニ! 貴様背中に人間など乗せて、龍としての誇りはないのか!」
「愚問だな、ボレアバラム。俺はいつだって可愛い女の子の味方だ」
「ロリコ……じゃない。ミカツキちゃん、このドラゴンには簡単について行かない方がいいんじゃない?」
「そう? 背中に乗りたいって言ったら喜んで乗せてくれたけど」
「そういうところなのよ」
・ロリコンドラゴンは草
・おいドラゴンそこ代われ
・俺もミカツキちゃんに『背中に乗せて』とか言われたい……
・踏んでくれるだけでいいんだけど
「お姉ちゃんも仲良くなっておいた方がいいよ? たぶん攻略の鍵になるから、ね!」
ドラグアグニの背中の上で、ミカツキちゃんは
狙いは
ミカツキちゃんを脅威だと判断したのだろう。一つ眼を持つ触手はミカツキちゃんへと襲い掛かり……
———
「【レックスピア】!」
「えっ?」
・はっ?
・なんで槍術!?
・弓で槍術アビリティ発動しよったww
ミカツキちゃんから放たれたアビリティエフェクトの矢は、真っすぐに触手へと突き刺さり……触手の正面についている一つ眼を軽々と粉砕し内部から破壊、そのまま触手の後方から突き抜けて遥か彼方へと消えていった。
カローナは知る由もないが、ミカツキが成したその技こそが『
『ルーナ・クレシエンテ』の能力は、通常の矢の代わりに
槍術だろうと斧術だろうと、果ては魔法だろうと関係なく、ルーナ・クレシエンテを通すことで使用することが可能になるのだ。
プライマルクエスト『
さらにドラグアグニから力を与えられたことによって『特殊状態: 煌焔龍装 』が付与されており、効果は一撃で触手を破壊したのを見れば一目瞭然だろう。
「ミカツキちゃん何それ!? お姉さん聞いてない!」
「だって言ってないもん。お姉ちゃんも遊んでないで戦いなよ? アグちゃん、行こっ!」
「任せろ!」
翼を一撃ちしたドラグアグニが身を翻し、触手を避けながら宙を舞う。
その背中に乗るミカツキちゃんは、どこか自信に満ちた表情をしていた。
「ほらぁ、やっぱり共闘した方がいいじゃない!」
「ぐぬぬ……あいつの趣味が特殊なだけだ!」
「それはっ……そう!」
・草
・否定してやれww
・いやでもロリコンだぞ? ギルティ
・異種族の小児愛者は闇すぎる……
・ドラゴン自体は格好いいのにな
「我はそう簡単に靡いたりはせん!」
「あっ……もう」
さらにスピードを上げて飛び去るボレアさんを追いかけようとも思ったけど、
流石にまだ心を開くのは難しいかな。
とりあえずボレアさんを目で追いつつ、触手を避けながらアビリティリキャストを回復———
———
「ふっ……っ!?」
【アントルシャ】と【パドル・ロール】でAGIを盛って迫ってきた触手を避けた後、次に迫ってきた触手に思わず目を見開く。
その触手は他のものより2倍近く太く、私を丸呑みにせんとばかりに大きな口を開けていたのだ。口の中にはナイフのような鋭く長い歯がびっしりと並んでおり、これに噛み付かれたら、間違いなく私は瀕死、若しくは一撃死だろう。
「まずっ……【ア・ナリエール】!」
スルリと、私の身体が真横にずれる。
その真横を通り抜けた
「っ……」
そんなことを気にしている暇などない。
一本の触手を避けたからといって、眼前にはまだ視界を埋め尽くすほどの触手が牙を剥いているのだから。
「“妖仙流棒術”———【細雪】! 【木ノ葉舞】」
迫る触手の牙に薙刀の石突を当てて僅かにずらし、できた余裕に自分の身体をねじ込んで回避。そのまま回転させた薙刀の刃を二本目の触手にぶつけ、【木ノ葉舞】を発動した私の身体は、トラップされたサッカーボールのように回転しながら宙に浮く。
「ふっ……!」
【トゥール・アン・レール】起動!
慣性によらない回転を生み出すアビリティによって突然回転の方向を変えた私は、目の前を触手が通過するのを肉眼で確認、回転のまま触手を蹴り上げて反動で下へ———
【グラン・ジュテ】の最後の一歩を使って空中で向きを変え、横から迫ってきた触手を回避。
そのまま少し離れた場所に着地した私は、薙刀を構えながらSPポーションを口に流し込む。
「そう簡単に私に当てられるとは思わないでよ?」
そう口にしたのは、自分を奮い立たせるためだ。
そうでもしないと、目の前を埋め尽くす牙を剥く触手に気圧されそうだからね。
私が投げ捨てたポーションの瓶が
「ッ——————!!」
「えっ、はっ……!?」
———耳を劈く言葉にならない叫びは、私の頭上から。
思わず視線を上げた私の視界に飛び込んだのは、ダメージエフェクトを弾けさせるボレアバラムと、その尻尾に噛り付いた
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