その翼に誇りを、その瞳に覇天の輝きを 35
タイミングを合わせ、空中で翡翠色のドラゴン———『ボレアバラム』の背中に取り付くことができた。
けど……やばい。
流石にエグいスピード、身体がバラバラになりそうなほどの衝撃だった。
「やっほー、ボレアさん。久しぶり、ちょっと痩せた?」
「なっ……貴様、いったいどうやって……!」
・その挨拶は笑う
・なんであのスピードで捕まえられるの
・気軽に『ボレアさん』って呼んでるの軽いな
「私だってスピードに自信があるんだから。……でももうちょっとスピード落としてくれると———」
「ふんっ!」
「ぅわっ!?」
私が背中に乗ってるにも関わらず、ボレアさんは横回転……いわゆるバレルロールで私を振り落とした。
もうっ、乱暴なんだからっ!
「っと、また
「GyuooooooooooooooooO!」
仰向けに落下する私の視界の中で、
まずいなぁ……『檜の棒』が無いから、最悪『ヴィクトリアン・スイーパー』を……
「小賢しいっ! 【カタストロフィ・ストーム】!」
「っ!?」
空を見上げたボレアさんがそう叫ぶと同時、ガパッと広げた顎から漏斗状に発生した破滅の旋風がどす黒い雲を吹き飛ばした。
「いや、ナイス!」
ここで
【トゥール・アン・レール】起動! さらに【ペネトリースパーダ】!
【トゥール・アン・レール】によって生み出した回転で勢いをつけ、【グラン・ジュテ】の残りの歩数を使って踏み込み、【ペネトリースパーダ】を叩き込む。
その対象は、旋風を撒き散らすボレアさんを狙う、
ボレアさんを見てて思ったんだけど、ドラゴンゆえのハイスペックボディがあるからか
大技の後隙があったことも相まって、今の触手は私が弾かなければボレアさんに当たっていただろう。
「ボレアさーん、ちょっと油断しすぎなんじゃない?」
「馬鹿にしているのか貴様! あの程度の攻撃など我には効かぬわ!」
「だって危なっかしいんだもん」
「だいたいさっきから貴様はっ、我の名を気安く呼ぶなと———ゴボァッ!」
「あっ」
今のはごめん!
私のせいで気が散ったのかも!
私と言い合っている隙に上から触手で叩き据えられ、落下していくボレアさん。
おしゃべりしすぎたと反省しつつ、
案の定ボレアさんへと殺到する触手の根元を掴み———
「“妖仙流柔術”———【山嵐】!」
んぐっ、重っ……!
触手のスピードがある程度あったからか、今まで使ってきた【山嵐】と比べて格段に重い。
けどまぁ、投げきれない重さじゃない!
野球のように触手をフルスイングし、他の触手へとぶつけると、ゴシャァッと鈍い音が響き、触手の表面の鱗が飛び散る。とはいえこれでも大したダメージじゃないけど、ほんの数秒だけでも動きを邪魔してやれば、ボレアさんが体勢を整えるのに十分!
「ボレアさん! 左後ろから二本来てる!」
「ぬぁあっ!」
咆哮と共に、ボレアさんは鞭のようにしなる尻尾で触手を打ち据え、二本まとめて弾き返す。
そして、鋭い目つきでこちらを睨むボレアさんの口元に、深緑に輝くエネルギーが集まり———
「【ディザスター・テンペスト】ォォォォォオッ!!」
「ちょっ……あぁぁぁぁぁっ!?」
ボレアさんから放たれた乱気流のブレスは真っすぐに私へと迫り、投げ出すように身体を伏せた私の頭ギリギリを掠めて、背後から生えていた触手に直撃した。
相当な威力があったのだろう。
ブレスを受けた触手はズタズタに斬り裂かれ、目に見えないほど細かく分解され、風に攫われて消えていった。
「ちょっと! 私に当たったらどうするのよ!」
「ふんっ、我が助けてやったのだ。感謝するが良い」
「くっ……それはそうだけど! 軌道的に私に直撃だったよね!? 狙ったでしょ!」
「今のが当たって貴様が死ぬというのであれば、貴様もそれまでの者だったということ。“妖仙”の名が聞いて呆れる」
「え……? “妖仙”のって、もしかしてボレアさん、カグラ様のこと知っています?」
「
「ちょっ、気にしてるんだから言わないで!」
そりゃカグラ様と比べたら実力は全然足りないわよ。
後ろから肩に手を置かれるまで、カグラ様の術中に嵌っていることにすら気づかなかったぐらいだからね。
「っと、そんなことしてる場合じゃなかった」
アーカイブの情報によると、この技は【
だんだん分かってきたけど、これ
「ボレアさん、これ防げない!?」
「だから我の名を気安く呼ぶなと言っておるだろうが!」
「そんなこと言ってる場合か! あれ受けたら私死ぬって!」
「後先考えずに突っ込むから『脳筋』って呼ばれるの、分かりますかぁ? アグちゃんよろしくぅ!」
「任せろ! 【プロミネンス・バースト】!」
こ、この脳に突き刺さるようなロリボイスは……!
幼女特有の甘い声は、
赤々と燃え盛る炎を纏った翼をはためかせ、真紅のドラゴン———『ドラグアグニ』が放った熱波が、
声の主の居場所は、そんなドラグアグニの背中から。
ドラグアグニとお揃いの真紅のオーラを纏ったツインテールを逆立てたミカツキちゃんが、ドラグアグニの背中に仁王立ちしてドヤ顔を浮かべていた。
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