霧隠れの霊廟リベンジ 5
———
切っ先を天に掲げるMr.Qから大量のダメージエフェクトが漏れ出し、それに比例して宝剣の輝きはさらに強くなっていく。
いったい何事か、と聞く暇もなくヘルメスへと殺到する三頭の
おそらく【ウェーブスラッシュ】だと思われるそのアビリティが
聖剣エクスカリバー。
正しくは、
装備時にHPの8割を削る代わりに高倍率の永続バフを付与する効果がある。
そして使用者が『勇者』系列の
そして、つい先ほど
漆黒が美しいその剣の銘は『
もともとノックバック性能が高い剣であるうえ、ノックバックに特化した5段階強化により、アビリティを使用しないただの攻撃でさえノックバックを発生するぶっ壊れ性能となる。
「はっ!」
【ウェーブスラッシュ】発動後の硬直をエクスカリバーの効果で踏み倒したMr.Qは、そのままエクスカリバーでの【ペネトリースパーダ】により、2頭の
「何今の、どうなってんの?」
「ネグロ・ラーグルフでノックバック、エクスカリバーで硬直の踏み倒し、【
「無双ゲーかな?」
「【
再び迫ってきた
徐々に頻度が増してきた
さすがはプロゲーマーだなぁとか、これ私要らないなぁとか思いつつ、穴掘ってるヘルメスさんと軽い会話をするぐらいには余裕ができていた。
というか、【
ちなみに、私の『冥蟲皇姫の鎧』に施されている【
それなら他にも装備を作れないかと聞いてみたところ、特殊なモンスターの素材が必要らしく、簡単には作れないようだ。
「カローナちゃん手伝って! 数が増えてキツい!」
「っ! ごめん、すぐ行く!」
おっと、Mr.Qから救援依頼が来た。
見てみると、十頭近い
その様子に若干引いた私は、慌ててMr.Qの元へと向かった。
♢♢♢♢
残り―――6分58秒。
さらに苛烈さを増した
「見てみなよカローナちゃん、奴さん、相当キレてるみたいだぜ!」
「なんでっ、あんたはっ、そんな余裕なのよっ!」
「軽口でも叩いてないとやってられないのさ!」
しかしまぁ、
残り―――5分。
「っ! ごめん! 一頭逃した!」
「オッケー! 【アビス―――」
くっそ、クリティカルを外した!
もっとレベルを上げておけばよかったと、今ほど思ったことはない。
そんな
「―――アラーネア】!」
エクスカリバーの『逆境強化』があるとはいえ、相手は巨体。いかに【アビス・アラーネア】が強制行動阻害とはいえ、超重量の
「その一瞬があれば十分よ」
後悔するのは後にして、とりあえず今できることをする。
【パ・ドゥ・シュヴァル】を発動し、空中にアビリティの残光を残して駆け抜けた私は、糸に雁字搦めにされている
「【”妖仙流柔術”――山嵐】!」
今度は地面に叩きつけるのではなく、他の
阿吽の呼吸で糸を離したMr.Qは一緒に飛んでいくということはなく、別の一頭を巻き込んで靄の向こうに消えていった。
残り―――2分30秒。
「ぐっ……!?」
「
「問題ないっ……!」
腹に突進の直撃を受けたMr.Qが、『食いしばり』のエフェクトを漏らし、押し込まれて地面に
「むしろ全く当たってないカローナちゃんのが驚きだよ……!」
「私は回避しないと死ぬからね!」
残り――……
集合体恐怖症の人が発狂しそうなほどに数が増えた
単純なステータスの高さとエクスカリバーのバフ、そしてネグロ・ラーグルフのノックバック性能で、ギリギリを保っている状態だ。
「っ……」
空中ジャンプで地面まで戻り、【パドル・ロール】で避けまくる。
回避に特化している私ですら、徐々に被弾が増えている。直撃はしてないからHPの心配はないけど、直撃するのは時間の問題だ。
ヘルメスさん、早く―――
「ヘルメスっ!」
「待たせた!カローナ、飛び込め!」
「っ!」
待ってましたぁ!
【連獅子】で周囲の
私より先に生産職のヘルメスさんが……なんて迷ったりしない。
迷っていたらそれだけ死ぬ可能性も増えるし、今この場で一番足手まといは、避けるしかできない私だ。
私が穴に飛び込む直前、黒傘を開いて何らかのアビリティを発動するヘルメスさんの姿が見えた―――
♢♢♢♢
私が地下に到着してから数秒後、Mr.Qに続きヘルメスさんも地下へと降りてきた。
「ヘルメスさんが最後なんだ」
「Mr.QもHPギリギリだったし、黒傘の耐久値と引き換えに発動する一発限りのアビリティもあったからな」
「いやぁ、ヘルメスがあの傘より俺を選んでくれてうれしいよ」
「…………まぁ、お前の戦力には代えられない」
そんなことを言うヘルメスさんの表情は、苦虫を嚙み潰したかのようなすごいものであった。
ちらっと聞いたところ、私の『冥蟲皇姫の鎧』やMr.Qの『ネグロ・ラーグルフ』よりもさらに大量の素材を突っ込んだものだったらしい。
そんな装備を失ったヘルメスさんは、とてもとても悲しそうだった。
「さて、何とか地下に来れたんだけど……これどう思う?」
「……はは、言葉が出ないね」
周りを見渡して漏らした私の言葉に、Mr.Qがそう答える。
そんな私たちの眼前に広がるのは―――
―――4体のドラゴンの石像が置かれた、祭壇のような場所であった。
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