VS ダイハード・メガランチュラ 3
「【ヘイト・エンチャント】!」
まりッピが手に持つ杖を振るい、放たれたエフェクトが私とユキウサちゃんを包み込む。【ヘイト・エンチャント】は黒魔導士の持つアビリティであり、ヘイトを他のプレイヤーに移す効果を持つ。
私が稼いでいたヘイトがそっくりそのままユキウサちゃんに移動し、メガランチュラの目がユキウサちゃんへと向けられた。
「キュロロロロッ!」
メガランチュラが振り降ろす爪に対してユキウサちゃんが盾を掲げると、アビリティの発動に応じて盾が輝きを放つ。
「【ラディエルカウンター】!」
ギィィィィィィン———ッ!!
ユキウサちゃんの盾とメガランチュラの爪がぶつかった瞬間、銀色のエフェクトと共にそのエネルギーは向きを変え、メガランチュラに襲い掛かる。
【ラディエルカウンター】は盾で受けた物理攻撃をそのまま相手に返す、物理カウンターのアビリティである。
相手の攻撃を正面から受ける必要があるため、タイミングがずれれば盾ごと貫通されかねないリスクはあるが、逆にクリティカルのタイミングでカウンターに成功すれば、単純に攻撃を跳ね返す以上のダメージを与えることできる。
そして、ただ振り降ろされる攻撃にクリティカルを取れないようなユキウサちゃんではない!
「ッ――――!」
私でも逸らすのがやっとであったメガランチュラの爪を受け止め、なお有り余るエネルギーがメガランチュラの巨体を大きく弾き返す。
「ナイスッ!」
隙を作ってと頼んだけど、まさかここまでやってくれるとは……正直予想以上だ。
もちろん私もその隙を逃す訳がない!
「【ペネトリースパーダ】!」
黒紫色の
【ペネトリースパーダ】は、【ピアースレイドⅡ】から進化したアビリティである。
より鋭く、より早く、より遠くへ、そしてより高威力に。
貫通効果はそのままに、さらに相手を殺すことに特化したアビリティだ。
「キュロォッ!?」
正確に関節部分に突き入れられた深紅のエフェクトは、メガランチュラの装甲に散らされながらも、その装甲にヒビを入れるという快挙を成し遂げた。
その事実に、メガランチュラもどこか驚愕の表情を浮かべた……ような気がする。
再び、私にヘイトが移動した。
『女王魔蜂の刻印』の効果と【ペネトリースパーダ】でのダメージで、一気にヘイトを稼いでしまったようだ。
まぁ【ヘイト・エンチャント】もヘイトを固定する訳でもないしね。
【ペネトリースパーダ】を使用した後の僅かな隙を晒す私だけど、そこにすかさずまりッピの魔法が飛んできてメガランチュラを直撃する。
ダメージがほとんど無くても、目眩ましとしては十分効果があるだろう。その間に私は悠々と次の行動に移れるわけだ。
この中で一番アネファン歴が長いだけあって、やっぱりまりッピは合わせるのが上手い。
「マジ? あの装甲にヒビとか入るんだ」
「ユキウサちゃんもナイスカウンターだったわよ」
「当然! あれは失敗しないって」
「でもカローナちゃんの攻撃でやっとヒビが入る程度って、これいけるのかなぁ?」
「同じ場所にもう一発当てればワンチャン……」
・えぇ……あれでヒビはいるの
・火力もおかしくない?
・あれだろ、豆腐も音速でぶつけたら人を殺せる理論
ディアボロヴェスパの毒の性質上、相手の体内に直接打ち込まなければ効果が発揮されない。逆に言えば、毒を打ち込みさえすればかなり有利になるということなのだが……強堅な装甲が邪魔なのだ。
「【ペネトリースパーダ】……いや、【大伐断】で砕けるか……?」
「まりッピ、黒魔導士ならデバフとか使えないの?」
「やってるんだけどねー。デバフ耐性高いみたいで、成功しないんだなこれが」
「えぇ……まりッピあんまり役に立たな……」
「前衛の役割を全部カローナちゃんに持ってかれてるあんたが言う?」
「お? お? 喧嘩か?」
「演奏の邪魔だから静かにして」
「「ごめんなさい」」
・つよい
・メグメグちゃんっょぃ
メグメグの一喝で途端に真面目顔になるユキウサちゃんとまりッピ。
まぁメグメグの様子を見る限り、本気で怒ってないから大丈夫だと思うけど。
冗談を言い合っているが、実際なかなか骨が折れる相手だ。ヘルメスがプレイヤー内でも屈指の鍛冶師ということもあり、『
そこに、メグメグの【フォルテシモ】のバフも乗せて放った【ペネトリースパーダ】のクリティカルヒットでも、まだ装甲が砕けないというのは素直に驚きだ。
高威力だけど、リキャストが長くアビリティ発動の前後に僅かに隙がある【ペネトリースパーダ】は、そう簡単に当てられるものではない。だからこそステップ系アビリティによる機動力を絡めて確実に当てていく必要があるんだけど……。
「リキャスト回復まで逃げ回ってもいいんだけど……これだけの巨体が暴れるだけでも被害甚大だしなぁ」
メガランチュラに好き勝手に動かれるより、攻めまくって自由にさせない方が戦線も維持できるし。
……もう少し、アビリティに頼らない機動力があれば———
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