本当に女王様になった気分ね
私が戻ってきても少しの間無言だった3人は、私が困惑の声を上げると、3人で顔を突き合わせてひそひそと話し始めた。
「うそ……超カッコいい……」
「えっ、ちょっ、カローナちゃんって実はめちゃくちゃ強い……?」
「人間ってあんな動きできたっけ。雑技団の方?」
「私の彼氏より全然強いわ、あれ……」
「しかもカッコつけるつもり無くアレだからね……」
「正直惚れそう……」
「聞こえてる、聞こえてるわよあなた達」
・お? お友達もカローナ様に惚れたか?
・カローナ様のPSに驚く姿もなんだか懐かしい感じ
「カローナちゃんに一目惚れ?」
「いけるって! カローナちゃんは
「そうよね……うん! 取られる前に私から仕掛けないと!」
もはや隠す気もないヒソヒソ話を終えたメグメグは、クルリと身体を私に向けて少し頬を赤らめつつ、意を決した表情で———
「———あのっ、ひ、一目惚れしました! 私と付き合っください!」
・言ったぁぁぁぁぁ!!
・配信で公開告白!
●ロッケン:[¥5,000] 応援!
「バカなことしてないで次行くわよ」(チョップ)
「痛っ! ちょっとぐらい乗ってくれてもいいじゃん!」
「子供かっ! あんまり時間かかると明日に響くでしょ?」
「むー、分かったし……」
・こんなに可愛い女の子でもダメか……
・カローナ様の希望が高いのか
・いや超ハイスペックカローナ様につり合う男っているの?
「なんか妹のお世話する姉みたいな……」
「なるほど、姉ックス・ファンタジアってことね」
「誰が上手いこと言えと」
「でもそれ聞き方によっては姉とセッ……」
「まりッピ、アウト」
「……それはそうとして、メグメグも妙に聞き分け良いの地味に笑うんだけど」
「それな」
この調子だと、一体いつまでかかるのやら……先が思いやられるなぁ。
けど、まぁ、なんだ……いつも一人でやってるから、こうして友達と賑やかにやってるのはなんだか……楽しいな。
♢♢♢♢
「これで……ラストっ!」
「ギィッ!?」
私が振り抜いたヴァリュアシオンがハニーヴェスパを切り裂き、一撃でそのHPを消し飛ばす。
ハニーヴェスパは、よほど追いつめられない限りは基本的に逃げようとするモンスターであるため、10個の蜜袋を集め終えた今でさえノーダメージだ。
幸い、
「いやー、疲れたね」
「なんかやりきった感出してるけど、あんたまともにやってないでしょ」
「というか、カローナちゃんが一人で全部……」
「いや、まりッピが索敵してハニーヴェスパを見つけてくれたし……」
「「それってつまり私達は役立たず……」」
「えっ、いやっ、そんなつもりじゃっ」
「ふふ、冗談だって!」
「でもカローナちゃんに助けてもらったのは事実だし、ありがとね?」
「思ったより早く終わったしねぇ。次は樹液の採取でしょ? カローナちゃん、行けそう?」
「ん、余裕余裕」
「さすが!」
「オッケー、私の索敵によるとこっちだよ!」
私が初めて【極彩色の大樹海】を訪れた時のように、昆虫達は樹液が出ている場所に集まる習性がある。そうなればまりッピの【索敵魔法】に簡単に引っ掛かるわけで、むしろハニーヴェスパより発見は容易だ。
途中、現れたオーガヴォスパやホウオウカマキリを素材にしつつ歩くこと10分ほど。一際太い木の幹にメガロヘラクレスをはじめとする無数のモンスターが群がっているのを、木々の隙間から発見できた。
「あー、やっぱり大量に集まってるよねぇ」
「うわぁ……ゲームだと分かってるけどこれだけ集まってると気持ち悪い……」
「アネファンってこういうところやたらリアルだからね……どうする? もっとモンスターが居ないところ探す?」
「その必要は無いわよ。これを突破しましょう?」
別に、決死の特攻を仕掛ける訳ではない。あの群れに正面からぶつかったら、さすがに私も死ぬ可能性が高い。……100%ではないけどね。
私がこんな提案をしたのは、もちろん称号の『女王魔蜂の刻印』があるからだ。
———昆虫系モンスターに対する脅威度が大幅アップ———新緑の主、つまり【極彩色の大樹海】のトップに君臨する絶対強者の威光がそのまま宿っていると言っても過言ではない。
つまり、この刻印を存分に利用して群れに近づくというのは、昆虫系モンスターにとっては平民の集まりに女王様が近づいてきたようなもので……当然、
「退きなさい」
ズザザザザザァァァァァ~~~~ッ!!
精一杯の睨みを利かせてそう言い放った瞬間、まるで化け物にであってしまったかのような勢いでその場から退くモンスター達。
その様はまるでモーセの伝説の如く、私と樹液が出ている樹とを繋ぐ道には一切のモンスターはいなくなり、さっきまで我が物顔で樹液を啜っていたメガロヘラクレスでさえ、機嫌を損ねてはならぬとばかりに息を潜めて樹の脇に固まっていた。
そして、それを見ているまりッピ、メグメグ、ユキウサギの3人は———
「「「 」」」
———同じように固まっていた。
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