極彩色の女王 3
私が受けたのも
とは言え新しい問題が次から次へと発生してくる。
と言うか、何か、もう、ヤバすぎるでしょ
アビリティキャンセルから相手の行動を誘う手筋を、この
しかも、一度見せた【流葉】のパリィのタイミングを学習し、二回目からはディレイ入れてきたし……モンスターなのにどんなAI積んでんのよこいつ。
モンスターと言うよりは、NPC並の頭の良さを想定していた方がいいかもね。
この戦闘力があってこそ、レアモンスターであるディアボロヴェスパを束ねることができるのだろう。
唯一の女王魔蜂、故に
戦闘が長引くほど相手が学習してしまうから厄介なのだが……今の私のステータスじゃほとんどダメージを与えられていない。
【神斬舞】で派手に吹っ飛ばしたけど、おそらくまだ90%以上は残ってるんじゃないかな?
短期決戦は不可能だから耐久戦で……と行きたいところだが、ここからが問題二つ目だ。
さっき【パ・ドゥ・ポワソン】で痛み分けした際、女王蜂の爪で『ヴィクトリアン・サーヴァンツ』が引き裂かれて耐久値が0となり、全損した。
胸下から腰辺りまでザックリ切り裂かれ、昔のソシャゲのダメージイラスト差分みたいになってしまったのだ。
素肌がチラリと覗くメイドなんて、私が見てる側だったらいいんだけど……自分がなると流石に笑えない。
アネファンでは、ビキニアーマーも見た目通りのVITしかない。つまり素肌が見えている部分を、装備は守ってくれないのだ。
自身のVITが高ければいいんだけど……素のVITはゴミみたいなものだからね。
とりあえず『フルールド・ジョーゼット』に装備を変えて……モップ拾う時間くれるかな?
あれ?
女王蜂さん動かないんだ。
警戒しているとは言え、こんなに隙だらけにモップを回収しているというのに、女王蜂は見ているだけ……。
何かありそうで怖いけど、ひとまずラッキー。
装備を変換したことで、カテゴリースキル:『ビクトリアン』の効果は下がる。そのため、火力はあまり期待できなくなるけど、『フルールド・ジョーゼット』は【ステップ】系のアビリティの効果を上昇させる効果を持つ。簡単に言うと……
「今の私は更に速いわよ!」
「ッ!」
【アクセルステップ】起動!
薄緑のエフェクトが私の足で弾け、大地を踏み締める力を齎す。
ドンッ! と地面を軽くへこませるほどの踏み込みを見せた私は、モップを振り上げて【伐断】を発動する。
【伐断】もまた、斬撃・打撃系の武器を持つジョブであればほとんどのジョブで入手できる攻撃アビリティである。
大上段から武器を振り降ろして攻撃する【伐断】は、相手の武器や防具の耐久値を大きく削ることができる『装備破壊効果』を持つ。
とは言え隙が大きいアビリティだから、出来ればクリティカルに当てたいところだ。
【伐断】を前に、後ろ足を除く四本の腕で身体を覆い隠す女王蜂。
このまま腕に当てても意味は無いから———【伐断】をキャンセル、一歩下がりつつモップを引き寄せ、【ピアースレイドⅡ】を放つ!
今度は高威力の貫通攻撃だ。これで女王蜂の腕を撃ち抜———
「!?」
———瞬間、【ピアースレイドⅡ】の赤黒いエフェクトを纏うモップと女王蜂の爪が交差し、胸のど真ん中を狙ったはずのモップが女王蜂の脇腹を通り抜ける。
はっ、ちょっ、パリィまで決めるのかよぉっ!
いや、ツッコんでる場合じゃなかった。【ピアースレイドⅡ】を思いっきり外して隙だらけの私に対して、女王蜂は臨戦態勢……どころか、もう、爪が迫って———
「ぃっ!!」
顔の横にヒットした女王蜂の
でもしょうがないじゃない。
紫色の明らかにヤバいオーラを纏った爪が当たったら確実にHP全損だから。
そうならないように、わざと踏み込んで腕の部分に
それでも一撃死の可能性もあったから、正直賭けだ。と言うか……たまたま『食いしばり』が発動してHPが1残っただけで、9割がた今ので死んでいたはずだ。
「まさに九死に一生ってね……!」
女王蜂が振るう腕の勢いに身を任せ、身体を回転させながらハイキックを一発、と同時に女王蜂の手首を掴み飛付き腕十字固め———は流石に回避されたか。
捕まれた腕を無理矢理引き抜いて私の十字固めを外した女王蜂は、間髪入れずにインベントリを操作する私の姿を見て次手を警戒し、後ろに下がる。
目聡い。
私のインベントリ操作を見て、ナイフ装備からの【神斬舞】を警戒して間合いを取ったのだろう。
やはり、女王蜂の恐ろしさは、一度のやり取りでそこまで対応できる学習能力だろう。
ただまぁ、今はその学習能力に感謝しておこう。私が取り出したのは、ナイフではなく『HPポーション』だ。
もし女王蜂が下がらずに向かって来ていたら、ナイフを出してパリィを狙っていたけど……ラッキーなことに向こうから下がってくれたから、私がHPポーションを使える隙ができた。
あまり時間も無いため、雑にポーションの頭を叩き割って口に流し込む。一応これでデッドラインは遠のいたけど、まだまだ女王蜂のHPは潤沢だ。これはキツい戦いになりそうだ……。
♢♢♢♢
約二時間後、空になった回復薬の瓶を投げ捨て、女王蜂と対峙する。女王蜂の身体は見て分かるほどに傷つき、甲殻の所々がひび割れて満身創痍と言っていいだろう。
しかしそれでも尚、女王蜂の覇気は収まらないどころかさらに圧力が増している。
こちらは買い込んだポーションが残り1つになるまで使い続けて疑似ゾンビアタックを繰り返してようやくと言ったところなのに……流石はユニークモンスターということか。
あーあ、明日は学校で居眠り確定だな、これは。
まぁ明日のことはいいや。とにかく、今、この時間を———
「吹き飛べおらぁっ!!」
「「っ!!」」
———楽しん……はっ?
突如として響いた不快な声と共に迫った何らかの攻撃に、私と女王蜂は対応しきれずに吹き飛ばされた。
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