極彩色の女王 2

まえがき


戦闘描写に関しては作者の想像をそのまま書き殴っています。分かりにくかったらごめんなさい、暫く続きます。


─────────────────────


「【神……斬、舞】っ!」


「!?」



 二本のナイフの切っ先を合わせ、ねじ込むように腕を捻りながら叩きつける。


 【神斬舞】は使用したステップ系アビリティの数によって性能が上がる。ディアボロヴェスパからの連戦で既に使用していたのも合わせ、【アクセルステップ】、【アクションステップ】、【サイレントステップ】、【クイックスカッフル】、【パ・ドゥ・ポアソン】、【パ・ドゥ・シュヴァル】の6種類のステップ系アビリティによって性能が強化された【神斬舞】の威力はなかなかのものだ。



 ズドンッ!

 一瞬の拮抗の後、鈍い音と共に女王蜂の身体が弾かれ、数m先の大木の幹に叩きつけられる。


 ダメージエフェクトは決して少なくない。ダメージは期待していいと思うけど……気になるのは、6種類の【ステップ】系アビリティによって強化された【神斬舞】のノックバックに、僅かだが抵抗してみせたこと。


 巨大な相手だったり、凄まじいSTRを持つモンスターであれば、ノックバックを耐えることも可能だ。


 しかし、女王蜂は私と変わらない体長で、その細身にそれほどのSTRを秘めていると考えると……若干怖くなる。



 そして……

 砂埃を払い、悠然と歩いてくる女王蜂をみて、さすがに私の顔も引きつる。


 ダメージは負っている様子。

 が、ダメージに堪えた様子はない。


 行動パターンが変化しないということは、まだまだHPに余裕があるのだろう。



 それ以上に問題は……


 『ヴィクトリアン・ナイフ』に意識を集中させ、視界に映るウィンドゥに目をやる。そこに表示されていたのは。



『武器耐久値が著しく低下。破損の危険あり』



 つまりだ。

 女王蜂の外甲を斬りつけ、爪をパリィし、切っ先を突き込む。これだけの動作で武器の耐久値をほぼ全消費してしまうほど、女王蜂のVITが高いのだ。



「破損だと作り直しになるからもったいないし、とりあえず武器変えておくかな……」



 ナイフをインベントリに放り込み、代わりにモップを取り出す。幸い、戦いは有利に運べている。相手が人型に近くて、私がPvPを主とする格ゲーになれていたのが大きい。


 ほんの僅かだけど女王蜂にダメージを与えられているのだから、これを続けられればいずれ……



 いや、よそう。

 戦いの最中に無駄な思考はいらない。今はただ、このユニークモンスターの討伐に向けて、最善の行動をするのみ……!



 【パ・ドゥ・シュヴァル】発動!

 ドンッ! と音を立てて地面を蹴り、女王蜂へと間合いを詰める。


 対する女王蜂は、身長と同じほどの大きさの魔法陣を展開し……


 は? 魔法?


 うおぉっ!!


 【パ・ドゥ・シュヴァル】の勢いをそのままに、モップを棒高跳びの要領で使って魔法を飛び越える!



 空中で体勢を整えつつ女王蜂を確認する私の目に映ったのは、魔法をキャンセル・・・・・し、毒々しい黒紫色の瘴気を纏う爪を私に向けて振るう女王蜂の姿が───


 ちょっとまて、こいつ、魔法を囮にっ——!



「舐めるなぁっ!」



 宙返りしながらモップの柄を女王蜂の手首・・にぶつける。さらに捻って軌道を逸らし、爪は私の頭上を通過。


 私は着地直後、さらに踏み込んで間合いを詰める!


 次手、【ワイドスラッシュⅡ】のチャージ。至近距離での範囲攻撃の準備など、明らかな隙。女王蜂もそれを逃しはしないだろう。黒紫の軌跡を宙に残して女王蜂の爪が———



「分かってる!」



 【ワイドスラッシュⅡ】をキャンセル、【流葉】に切り替えてパリィを狙う!


 範囲攻撃のチャージで攻撃を誘い、その攻撃をパリィして追撃を叩き込む。対人戦でよくやる戦法だ。


 女王蜂はどちらかと言うと人間に近いフォルムだ。だからこそ、対人戦チャートが有効で……



「っ!?」



 弾き飛ばされたモップが宙を舞う。

 パリィに失敗した?

 いや、違う。


 一瞬だけ腕を止めてタイミングをズラされたんだ……!


 派手に吹っ飛んだように見えて直前で手を離したから、多分破損していないはず。けど、向こうは昆虫ゆえ物理的に手数が多い。


 つまり、次の攻撃が来る!


 破損覚悟で『ヴィクトリアン・ナイフ』でパリィを……いや、もう間に合わっ、ワンチャンッ【パ・ドゥ・ポワソン】!



 脚を踏み切り、身体を横に倒しながらの回転ジャンプ。


 天と地が高速で切り替わる視界の中、女王蜂の爪が私の服を引き裂く様子と、私の蹴りが女王蜂の肩口に突き刺さる感覚の両方を同時に感じた。


 互いに僅かな・・・ダメージエフェクトを散らしつつ、ノックバックによって再び間合いが空く。



 あ———っ!

 死ぬかと思った!

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