極彩色の女王 1
「ふっ……!」
「ギィィ……」
『レアモンスター: ディアボロヴェスパ を討伐しました!』
数日後、ヘルメスによって装備のメンテナンスや新調が完了していた。
私は部活後すぐ家に直行、【極彩色の大樹海】に潜って実に4時間。
レアモンスターを探して通常モンスターを乱獲してはディアボロヴェスパを討伐、これを繰り返してようやく9体目のディアボロヴェスパを討伐したところだ。
先日討伐した1体と合わせて10体分、ようやく装備を作れるだけの素材が集まった感じだ。
その頃にはレベルも50に到達していた。
と言うか、ホウオウカマキリの素材を使ってヘルメスに作成してもらった新作の装備、『フルールド・ジョーゼット』と、新しい短剣『ヴァリュアシオン』がかなり強い。
ディアボロヴェスパの討伐が捗ったのもそのおかげだ。
さらに、ハニーヴェスパの蜜袋をアイテムとして使うことで昆虫系のモンスターを誘き寄せられることに気付き、そこから4時間延々とこれを繰り返したのだ。
もちろんメガロヘラクレスやホウオウカマキリの素材もたんまり回収でき、遠征としては大成功だろう。
さて、ハニーヴェスパの蜜袋もあと一個だし、最後にもう一回誘き寄せて……
あれ?
周りにモンスターの気配がない?
それはあり得ないだろう。【極彩色の大樹海】、他のステージと比べてもモンスターの数が多い場所だ。
ついさっきもオーガヴェスパの群れが……いつの間にかいなくなってる?
これ、絶対良くないことの前触れだよね……?
『女王が目覚め、深緑が息を潜める』
『プレイヤー名: カローナ が深緑の主に敵と認識された』
『ユニークモンスター:
『ユニーククエスト: 極彩色の女王 を開始します』
「っ!」
アナウンスが早いか私の動き出しが早いか。
『ダンサー』のアビリティ、【パ・ドゥ・ポアソン】によって助走無し後方伸身宙返り2回ひねりを決め、勢いよく降って来た
【パ・ドゥ・ポワソン】はジャンプを行うアビリティだ。さすがに空中では発動できないが、自力で跳ぶ以上の跳躍力を発揮できる。
その
私は着地と同時に【アクセルステップ】を起動。
バックステップで十分な間合いを取り、その魔物との衝突に備える。
警戒レベルを引き上げる私とは対照的に、砂煙を振り払い悠々と姿を現すモンスターが一匹。
体長は私と同じぐらいの大きさで、シルエットはどこか人間に似ている。しかし、黒と黄色の蛇腹や触角、複眼などはモンスターそのものだ。
あれか、ハチ系のモンスター娘を想像するとそれっぽいかも。
対峙するだけで分かる強さはもちろんのこと、どうやら頭の良さも他のモンスターとは一線を画すようだ。
この間合いを
ユニーククエストって……マジか。
確か、今のところ発見されてるユニーククエストって、30種類行くか行かないかってところじゃなかった?
私が発生してる
どこかでフラグ回収した?
思い当たるのはディアボロヴェスパを乱獲したぐらいだけど……まぁ、相手は女王蜂っぽいし、乱獲が原因だったのかも。
女王蜂の威圧のお陰か、この周辺には別のモンスターがいなくなっている。心置きなく
……ふーっ、やるか。
敵と認識されている以上、見逃してくれなさそうだし。せっかくならユニーククエストがどれほどのものか、体験したいしね。
というわけで、ウィンドゥを弄って装備を変更。全身を『ヴィクトリアン』装備に替える。ガチで戦うなら今のところこれが一番ね。
限界まで息を吐き出し、胸いっぱいに空気を吸い込む。私が格ゲーを本気でやる時のルーティーンだ。
スゥッと頭から血が降りていき、視界がクリアになる。他の何もかもが目に入らなくなるほどの集中力。
いざ———
「「!」」
動き出したのはほぼ同時。
私は【アクセルステップ】に【クイックスカッフル】を重ね掛けし、二重のAGIバフを乗せたダッシュで加速、その勢いを利用して【パ・ドゥ・シュヴァル】に繋げる。
【パ・ドゥ・シュヴァル】は、高速で前方移動を行うアビリティで、一定距離までなら自身のAGI以上のスピードで移動できる。
2種類の【ステップ】によってバフをかけた上での、【パ・ドゥ・シュヴァル】による前方移動。これが現状、私が出せるトップスピードである。
問題は、それでようやく女王蜂と互角のスピードだということ。
この女王蜂、素のステータスが化け物だ……!
女王蜂が振り上げる腕を目視で確認、【クイックスカッフル】のハンドリング性能を利用して歩幅を刻み、【パ・ドゥ・シュヴァル】の軌道をグニャリと曲げる。
相手の間合いの外に出つつ、私のモップの攻撃範囲の内側に相手が入るよう位置を調整するのだ。
身体を半回転させながら、腰に
【ワイドスラッシュⅡ】は名前の通り、【ワイドスラッシュ】が強化されたアビリティだ。より強く、広範囲に攻撃が届く。
瞬時に攻撃に移る私に対し、女王蜂は冷静に腕を畳んでガードの構えを見せる。しかし、それも想定内!
【ワイドスラッシュⅡ】を、無理矢理
私の狙いと寸分違わず、女王蜂の腕の隙間を縫ってモップの柄がヒットした先から、ダメージエフェクトが漏れるのが確認できた。
今がチャンス……!
モップが掴まれる寸前に素早く引き戻し、貫通攻撃アビリティ、【ピアースレイドⅡ】のモーションに入る。
女王蜂も例に漏れず硬い外甲を持っているものの、【ピアースレイドⅡ】であればそれなりにダメージが通るはず!
残念、それも読み筋よ!
【ピアースレイドⅡ】をキャンセルして【魔纒】を土に変更、即【棒術】の派生である【荒土・打】で迎撃する。
ガキンッ!
と明らかに生物を叩いた音ではない音が響き、私は大きく力負けする。
さすがに、これだけSTRに差があって受け止められるはずがない。と言うより、最初から受け止めるつもりはない。
モップを弾かれながらも軌道を反らし、そうして稼いだ隙間に身体を捩じ込む。いつの間にやら、私の手にはヴィクトリアン・ナイフが。
「【シークエンスエッジ】!」
二本のナイフが空を裂き、無数の裂刃となって襲いかかる。その刃がぶつかる度に、ギャリリリリッと音を立てて女王蜂の外甲を削った。
何これ硬っ!?
メガロヘラクレスより全然硬いんだけど!? 本当にこれ難易度調整合ってる!?
全く効いた様子の無い女王蜂は、【シークエンスエッジ】を受けながらもナイフのように鋭い爪を私に向け———
「おぉぉっ! 【流葉】!」
【シークエンスエッジ】の合間に【流葉】を差し込み、二本のナイフで爪を弾き返す。
おっも……!
押し潰されそうな威力の爪に、身体ごと回転させて対抗ししつつ、その回転力を威力へ——
【ステップ】を踏めば踏むほど威力とノックバック性能が増す攻撃アビリティ———
「【神……斬、舞】っ!」
「っ!?」
ズドンッ! と鈍い音を立てて、強力な衝撃が女王蜂を弾き飛ばす。
っしゃあ! ストライクッ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます