大樹海で荒ぶるミニスカメイド 4(終)

 ふふ、ふふふ……


 その後、数時間にわたってレベリングを続け、切りが良いところで配信を終了した。

 レアエネミーである『ディアボロヴェスパ』もなかなかの数討伐した私は、ニヤニヤが止まらない。


 別に、特に理由も無くニヤニヤしているヤバい奴ではない。ちゃんと理由があっての所業だ。その理由というのが……


――――――――――――――――――――

Name:カローナ

Lv:44

Job:棒術士

Side job:ダンサー

HP(体力):70

MP(魔力):50

STM (スタミナ):40

STR(筋力):80

DEX(器用):10

AGI(敏捷):60

VIT(耐久力):5

INT(知力):10

MDF(魔法防御力):15

LUC(幸運):10

BP(バトルポイント):328

PP(ペナルティポイント):0


アビリティ

【棒術・(打、突、払)】

【魔纒】

【ワイドスラッシュⅡ】

【ピアースレイドⅡ】

【流葉】

神斬舞かみきりまい

【伐断】

【アクションステップ】

【アクセルステップ】

【クイックスカッフル】

【シークエンスエッジ】

【サイレントステップ】

【パ・ドゥ・シュヴァル】

【パ・ドゥ・ポワソン】


装備

武器:ヴィクトリアン・スイーパー

頭:ヴィクトリアン・ホワイトプリム

腕:ヴィクトリアン・オペラグローブ

胴:ヴィクトリアン・サーヴァンツ

腰:ヴィクトリアン・ガーターベルト

足:ヴィクトリアン・ハイソックス

アクセサリー(1/5)

 ・次元超える天文鏡


所持金:8600G

――――――――――――――――――――



 ちょっと前までレベル20台だったのに、ディアボロヴェスパをはじめ【極彩色の大樹海】の魔物達を討伐しまくってレベルが爆上がりしたのだ。


 棒術士、ダンサー両方の系統のアビリティも追加された他、既存のアビリティもパワーアップし、戦闘の幅がかなり広がった。



 ついでに多くの素材も手に入れ懐もホクホク。ようやく軌道に乗って来たって感じだ。


 そんな訳で、新しい装備一式を作りたいと思うのだが、生憎私は生産職でもないし、NPCの鍛冶師に依頼するお金も無い。


 仕方がないからヘルメスさんに頼むとするか。










「で、来たわけだけど……Mr.Qは居ないの?」


「あぁ、あいつは別のゲームの大会に出ている。明日には来るんじゃないか?」


「ゲームの大会?」


「あれでもプロゲーマーだからな。メインが『アネックス・ファンタジアこっち』とは言え、スポンサーからの依頼は断れないんだろう」


「あー……」



 確かにそれで収入を得ているわけだしね。しかも結果を出さないとスポンサーも減るから手は抜けないだろうし。


 ゲームを仕事にできるなんて羨ましいってクラス内でも聞くけど、実態はなかなかシビアだという訳だ。



「あいつに用があったのか?」


「こっちのプライマル関係で、ちょっと協力してもらおうかなって思ったけど、居ないなら諦めるわ。ヘルメスさんにもお願いがあるし」


「俺に?」


「えぇ、まずは装備のメンテナンスかしら。ちょっと無茶しちゃって」



 インベントリにしまっておいた『ヴィクトリアン』シリーズ一式を取り出してヘルメスに引き渡す。



「この短期間でよくここまで使い込んだな……。スイーパーなんて破損寸前じゃないか。どんな使い方したらこうなるんだよ」


「実はそっちが本題でね。素材をたくさん持ってきたから、装備の作成をお願いしたいと思って……」



 そう前振りしつつ、インベントリから『極彩色の大樹海』で採って来た素材を採り出す。ホウオウカマキリ、メガロヘラクレス、オーガヴェスパ……そしてとっておきのディアボロヴェスパ。


 メガロヘラクレスの圧殺されたホウオウカマキリの素材はあまり状態は良くないが、ディアボロヴェスパが一撃で討伐したメガロヘラクレスの素材と、私が部位破壊したディアボロヴェスパの毒針はそこそこ状態が良い。


 純生産職のヘルメスも、積み上げられた素材を前に、少しだけ目を輝かせたように見えた。



「お前これディアボロヴェスパ……倒したのか?」


「もちろん、初見クリアしてやったわよ」


「流石、プライマルクエストを進められるだけのことはあるな……いいだろう。ただ、デザインはこっちで決めていいか?」


「ま、まぁいいけど……節度は考えてね?」


「そこは安心してくれ。偶像アイドルになれど人前に出れないような物にはしない。試運転コスプレしてもらう代わりに、あんたから金は取らないことにするしな」


「じゃあ、お金足りなければMr.Qから……」


「そうするとしよう」



 さて、『ヴィクトリアン』シリーズがメンテ中となると、私は初期装備しかなくなるからソロでは活動出来なくなるな……。


 なんだかんだカグラ様の依頼も後回しになっちゃってるし、そろそろ準備しようかな。


 素材集め兼レベリングで【極彩色の大樹海】に通って、装備ができ次第【霊峰クラマ】に突撃ね。



        ♢♢♢♢



「おや、これはこれは……我が『アーカイブ』にようこそ、Mr.Q君。君は今別のゲームの大会に参加していると思ったが……」


「あぁ、『ウルスマ』の大会に出てるけど、今は休憩入れててね。どうしても『アーカイブ』に用事があって来たんだ」


「ふむ……『ラウンドナイツ』の情報でもくれるのかな?」


「ん、まぁそんなところ」



 冗談で言ったつもりだったのだが、Mr.Qの意外な返答に、考察クラン『アーカイブ』のクランマスター、ジョセフの目が見開かれる。


 『ラウンドナイツ』と言えば、初期に確認された一番最初のプライマルクエストだ。


 数千万のプレイヤーが血眼になって探しても見つからないプライマルクエストの一つを、自発者側から明かしてくれるとなれば誰だって驚くだろう。


 それがジョセフのような、考察・・を主とするプレイヤーなら尚更だ。



「思いもよらない返答に、さすがに驚いてしまったよ」


「だろうね。こっちとしても苦肉の策だからね」


「して、その心変わりの原因は?」


「早い話が、プライマルクエストの謎解き要素が多くなってきて詰まってる」


「ふむ、確かにそれは我々の土俵だな。では早速話を……」


「いや、その前に……こちらから『アーカイブ』に頼みたいことがある」


「と言うと?」


プライマルクエスト・・・・・・・・・のクリアに向けて、『アーカイブ』の全面的協力が欲しい。報酬は、クエストで得られた情報……でどうだ?」


「ふむ……」



 ジョセフは顎に手を当てて逡巡する。

 『アーカイブ』の目的はこの世界の謎を解明し、ゲームをクリアすること。


 そのためにはプライマルクエスト———ひいては『スペリオルクエスト』のクリアも必要になるだろう。


 クランマスターとしては、喉から手が出るほど欲しい情報だ。


 しかし、『アーカイブ』は仮にも大規模クラン。Mr.Q1位程では無いにせよ実力者も揃っており、彼らも上を目指すプレイヤーだ。そんなクランメンバーを集めて一人・・をサポートとは……少し躊躇われる。


 いや、



「待て……君は今、プライマルクエスト・・・・・・・・・の攻略と言ったか? 『ラウンドナイツ』ではなく?」


「さすがは頭脳派のジョセフさん。鋭いね」


「つまり……」


「今確保しているのは3つ・・だ」


「!!……本気かね?」



 疑うのも無理はない。今知られているプライマルクエストは、Mr.Qの『ラウンドナイツ』と、カローナが配信中に発生した『百鬼夜行』のみ。その他のものは噂話すら出てこないのが現状だ。


 しかし、さらにもう一つ。

 しかも、知っている・・・・・ではなく、確保している ・・・・・・だ。


 それは、少なくとも3人のプライマルクエスト発生者が、『アーカイブ』へと情報提供をしてくれるということに他ならない。



 そこまで明かしていいのかとも思うが、なるほど。『アーカイブ』への協力要請をどれ程本気で考えているのかが伺える。


 全く未知のプライマルクエストを3つも、それも順次情報をくれると言うのであれば……『アーカイブ』とて協力は吝かではない。



「ま、今すぐ決めろって訳じゃない。俺もそろそろ『ウルスマ』の試合あるしね。僕ら・・が贔屓にしてる店の地図を送っておくよ。もし前向きに検討してくれるのなら、次の土曜日の昼頃にそこに来て欲しい」


「……分かった。こちらもメンバーの意向を纏めておこう」


「いい返事を期待してるよ」

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