初めての対人戦(見てるだけ)
「おいおいおい……何でこんなところに
「なに、助けを呼ぶ女性が居たからさ」
・救援来た!
・まさかの勇者で草
・えっ、Mr.Q?
・カローナ様の交友関係どうなってんの?
・くさい台詞なのに絵面がなぁ
・これPKer勝ち目無いだろ
・考えたくないけどそういう関係とか?
「やっと来た……随分遅かったじゃない」
彼とは旧知の仲だ。
たしか数年前、格ゲーで無双してた私がたまたまプライベートの彼とマッチし、結構善戦したことで終了後に声をかけられ、彼との交友関係が始まった。
そのマッチは負けたけどね。
彼がプロだと知ったときはかなり驚いたものだ。
ちなみに、『アネックス・ファンタジア』の入手に協力してくれたのも彼だし、ゲーム内での初めてのフレンドも彼である。
感謝はしてる。
してるけど……
「わざわざ『エウロパ』から来たんだ、仕方ないよ? むしろほら、お礼とか無いの? お姫様?」
「くたばれ出会い厨」
「ねぇ酷くない?」
・バッサリww
・そういう関係じゃなかったわ
・カローナ様の本当に嫌そうな表情珍しい
・辛辣ww
「くそっ、姫プレイの上勇者かよ……外れ引いたぜ……」
「別に姫プレイでも何でもないからね?」
「ふふ……俺が居て、うちの姫様に手を出させるとでも?」
「だから姫じゃないって言ってるでしょ」
「だがこっちは三人もいる! てめぇらジャイアントキリングだっ、勇者を殺るぞ!」
「「おうっ!」」
「なんで誰も話を聞かないの……」
・話の中心の本人がそっちのけなの草
・かわいそう可愛い
・カローナ姫爆誕
「まったく……俺はね、そもそもゲームの中でさえ他人に迷惑をかける
そう呟きつつ、インベントリから一本のロングソードを取り出す。刀身の幅が広い片刃の剣で、刀身と束に合わせて10個ほどの穴が開いている、見たこともないロングソードだ。
おそらくはオリジナル武器。
大量の素材と資金、そして高レベルの錬成師が必要となるオリジナル武器の作成は、誰もが羨む上級者の勲章だ。
「今回は救援で、相手はPK、君らをキルしてもペナルティは無いんだ。言いたいことは分かるかな? ———我が姫を襲い、
———アビリティ、【剣神解放】【カタストロフィ】【
「うーわっ」
明らかにヤバそうなバフの重ね掛けに、私は思わず声を漏らす。
全プレイヤーの中でも最高峰のステータスに、明らかにレアクエスト、もしくはそれ以上のクエストでしか入手できないアビリティによってバフがかかり、数値がえげつないことになっているだろう。
「くそっ、【ブリッツ———」
「遅い」
グラップラーの男がアビリティを発動しようとした瞬間、ステータスの暴力で強引に間合いを詰めたMr.Qが剣を振るう。
化け物のようなステータスに裏打ちされた剣は、ただ振るうだけでも十分すぎるほどの威力があり、アビリティでも何でもないただの斬撃一発でグラップラーの男のHPが一瞬で0となった。
「死ね! 【パワーレイド】!」
剣を振るったMr.Qの隙を突き、剣士の男が高倍率の刺突アビリティ、【パワーレイド】を放つ。
が、それでも。
「詰めが甘いんだよ!」
「なっ」
赤色のエフェクトを纏った剣士の男の刺突が、Mr.Qが放った刺突とぶつかって掻き消された。同系統の攻撃を同程度の威力でぶつけ合った時に発生する『相殺』だ。
それだけ聞けば簡単そうに思えるが……そもそもアビリティによって放たれた剣先に剣先を合わせてぶつけること自体が不可能に近いし、ただの突きがアビリティによる攻撃と同じ威力と言うのもヤバい。
「二人目」
「ガッ……!」
剣士の男は【パワーレイド】発動後の硬直で行動不可。それに対し、アビリティを使っていないMr.Qに硬直は無い。どうあがいても、剣士の男には次のMr.Qの攻撃を防ぐ術はないのだ。
直後、Mr.Qによって切り裂かれた剣士の男のアバターが崩れてポリゴンと化し、消えていった。
「クソがっ!」
悪態をつくアーチャーの男は、すぐさま範囲攻撃アビリティ、【ヴィントホーゼ】を放つ。地を這うような暴風を撒き散らす風属性攻撃が、ほぼ同時に放たれたMr.Qの【ウェーブスラッシュ】によって相殺され、ダメージは届かない。
「だが、距離的にはこちらが有利!」
「いやいや、この程度対応できなきゃトッププレイヤーはやっていけないんでね!」
「!?」
アビリティ使用後のわずかな硬直の後、再び弓を引くアーチャーの男は、目の前に迫った剣に緊急回避を余儀なくされた。間合いを詰めたわけではない。Mr.Qが剣を投げつけたのだ。
あまりに意表を突く攻撃、だが避けてしまえばどうということはない。
自ら武器を捨てるような真似をしたMr.Qに勝機を見出だし、ここぞとばかりに攻勢に出るアーチャーの男は、彼が操る
「がっ……!?」
突如として視界を覆うダメージエフェクトに視線を下げると、先ほど避けたはずの剣の切っ先が身体を貫いて生えているのが見えた。
と同時に目に入る、光を反射する極細の何か。
「
Mr.Qのサブ
糸で剣を離れたところから操るという、言葉にすればそれだけのこと。剣に空いた穴も、糸を通すために開けられた穴である。
始めから糸で剣を操る戦闘スタイルを想定したオリジナル武器なのであり、アーチャーの男はそれに気が付かなかった———それだけである。
知識があれば、開幕に使っていた【テンペスト・ストリングス】が操糸術系のアビリティだと分かったはずであるが……勇者のサブジョブが操糸術師なんて、読めるわけ無いだろう。
そんな文句も溢す余裕すらなく、アーチャーの男はリスポーン地点へと送還された。
─────────────────────
あとがき
ちなみに、Mr.Qが使っていたロングソードの名前は『
そのうち武器・防具などの一覧表を作りますね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます