助けて! 勇者さまっ!(新キャラ登場)
それから数日後。
流石にいつまでも初期装備ってのもアレなので、【アーレス】の街でいろいろ物色して、ある程度よさそうな装備にあたりを付けたんだけど、いざ買おうと思ったらお金が足りないんだよね……。
倒してたのはお金にならないゴブリンばっかりだったし、動画映えを狙ってパワーレベリングしてたし……素材もお金もストックが無い。
めぼしい装備を買うお金を貯めるのに数日かかった次第だ。
そんな感じで始まった今回の動画は、【アーレス】でのショッピングと衣替え、そして簡単な性能確認をする予定で始まったのだけど……
なーんか、後を付けてくる人がいるなぁ。
家の関係上、諜報員……ゲフンッ、ストーカーにあったこともあるから、後を付いてきてる人がいれば何となく分かる。それに、ゲームやってる人に、ガチの人はいないと思うし。
取りあえず、気付いていないふりをしてショッピングを続行。
目的は分からないけど、良からぬことを企んでいることは間違いないだろう。
人数は二人か……私が配信者ってのは相手は分かってるだろうし、ただの目立ちたがりか……それともハクヤガミ関連の情報を奪おうという魂胆か……。
さて、どうしたものかな。
と思っていたら
・フレンド救援使おう
そんなコメントが目に留まった。
「フレンド救援?」
・野戦で襲われたとか、正当な理由があればメッセージを受け取ったフレンドが救援に来ることができる機能
・どれだけ遠くにいても時間制限付きで救援を送って来たプレイヤーの所にワープしてくる
・アネファンのPK対策よ
・メッセージは先に送っておいてもおkだから送っておくべきでございます
・何なら私が今すぐにでも……
「へぇ~、そんな機能があったんだ。なら……『ストーカーに狙われてる、助けて』、っと……送信!」
フレンド欄を開いて、数人しかいないフレンドの内一人にメッセージを送る。後は……【アクセルステップ】!
「っ! 逃げたぞ!」
「気づかれた! 追え!」
私が街の外に向けてダッシュを開始すると、ストーカーと思われる二人も、もう隠す気も無く後を追ってきた。
街中を歩く人々を躱し、【アクセルステップ】の追加効果でAGIを上げながら一気に街の外へ。
逃走劇開始から30秒後、【アクセルステップ】の効果が切れる頃、私は二人のストーカーと対峙した。
「さて、なんの用かしら?」
「はっ、わざわざ街から離れてくれるとはな」
「言いたいことは分かんだろぉ? お前、動画配信者だろ」
「それがどうしたのかしら?」
「お前どんなチート使ったんだ?」
「何言ってんの? 意味わかんないんだけど」
「とぼけても無駄だぞ! ハクヤガミ相手のノーダメなんてできる訳ないだろ!」
「あの動画でも怪しい動きしてたしな」
「……説明するのもめんどくさい……」
・辟易したカローナ様prpr
・完全に言いがかりで草
・配信中だからがっつりプレイヤー名映ってるんだよなぁ
・自分から顔バレしていくタイプのPKプレイヤー
・こいつ掲示板でイキってたやつじゃない?
・あれだけ自分は強いと豪語しておいて二人がかりで襲うの最高にダサい
「で? あんた達何がしたいの? ここで私を襲うというなら、その所業を配信してやるけど」
「配信中なら都合がいい!」
「お前の不正を明らかにしてやるぜ!」
「っ!」
PKerの二人が構えを取るのと同時、頭の中でゴングが鳴り響く。
一人は剣を抜いたことからおそらく剣士、もう一人はボクシングのような構えを取っていることから、こちらはグラップラー系ジョブだ。
私は棒術士だから、どちらにせよ間合いを詰めるしかない。
【魔纏・風】で風属性を付与したことによって【棒術】から変化したアビリティ、【
棒術の
相手が二手に分かれた直後、
これによって剣士の男は足を止め、これ幸いにと迫ってくるグラップラーの男との足並みがズレることとなった。
そうなればこっちのものだ。
横目でグラップラーの男との間合いを確認しつつ【空風・突】をキャンセル、即【流葉】を発動して対応を行う。てこの原理を利用し、逸らし、突き上げ、投げ飛ばす。
「うおおっ!」
「クソがっ!」
棒術式巴投げで私の後方へと投げ飛ばされたグラップラーの男が声を上げ、地面とぶつかった際のダメージエフェクトを散らす。
その光景に、悪態をつきながら斬りかかる剣士の男は、私の足元への注意がおろそかになっていた。
ダンサー系アビリティ、【スカッフル】 ———AGIとハンドリングにバフをかけ、あとは目視で振り下ろされる剣を躱す。と同時に【空風・払】で足をすくい上げ、続いて【空風・打】で弾き飛ばす。
「こいつ、なかなかやるぞ!」
「そう思うんならこのまま見逃してくれたら嬉しいんだけど……」
「そういう訳にもいかないんでね!」
また正面から突撃? またさっきの二の舞に……ッ!?
感あり。殺気、背後、遠距離、鋭い、無音、弓……!
「ぅあっ!」
・!?
・まさかの三人目!?
・流石のカローナ様もこれは無理
・ちょ、ガチ目にヤバいんじゃない?
形容しがたい直感に身体を捻った直後、どこからか飛来した矢が私の膝を撃ち抜く。即死とはいかずとも、少なくないダメージを受けその場にダウンする。
まさか、まだ伏兵がいたとは……。
「よくやった!」
「お前らが不甲斐ないから俺がやってやったんだろうが」
私が睨みつける視線の先に現れたのは、ロングボウを手にしたアーチャー系ジョブのプレイヤー。装備を見る限りそこそこやり込んでいそうなのだけど、寄って集って初心者狩りとはね。
ここぞとばかりに襲い掛かる、剣士とグラップラー。機動力特化の私が脚を奪われてはもう為す術はないが、せめて一人ぐらいは道連れにしてやろう。
……と思っていた時期が私にもありました。
「「「「っ!?」」」」
どこからか放たれた衝撃波が、私と二人のプレイヤーを隔てるように間を横切り、地面に裂傷を刻む。
ただしその威力は、そこそこやり込んでいるであろうプレイヤーに
それほど強力なアビリティを放てるのは、上位プレイヤーの中でもほんの一握り。
「
金と白の煌びやかな鎧を纏い、三人の敵に囲まれてなお悠然と笑みを浮かべるその風格は、ただの上位プレイヤーではない。
彼こそ、『勇者』の
プロゲーマーの『Mr.Q』であった。
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