ボス戦(前半)
「皆さんこんにちはー! 今日も『カローナチャンネル』にようこそ! 早速なんですけど、今からドレッド・タイタンに挑みます」
・いきなりすぎぃ!
・え、もうそんな所まで行ってんの? 昨日ゲーム始めたんだよね?
・早いなこの人
「いやぁ、まだ初めて二日目だけどハマっちゃって。教えてくれた視聴者さん、ありがとね! それで、昨日はちょっと夜更かししてレベリングしてたんだけど、ここあんまりレベリングに向いてなさそうだから次の街に行きたいなって」
取りあえず次の街を解放したいので、さっさとボスを倒すことにする。
【ティエラ】の街から次の街【アーレス】へ行くには、【始まりの草原】を抜ける必要がある。
しかし、その道中にはボスエネミー、『ドレッド・タイタン』が行く手を阻む。
【アーレス】へは、この『ドレッド・タイタン』を倒さなければならないのだ。
こういうのは、攻略サイト無しで自力突破するのが醍醐味だよね。適性レベルには少し満たないけど……
「神ゲーと名高い『アネックス・ファンタジア』に限って、レベルが低いから勝てないとかいうつまらないこと言わないわよね?」
「オォォォォォォォッ!」
凄まじい雄叫びと共に姿を現したのは、大剣を握り、鎧と見紛うばかりの筋肉で全身を覆った巨人、『ドレッド・タイタン』であった。
身長は5m優に超えるほど、筋骨隆々の肉体と浅黒い肌に古代の儀式か何かで見るような紋様が描かれているのが特徴的だ。
問題は、ドレッド・タイタンが持つ、身の丈ほどの大剣。威力もさることながら、リーチも相当長いのだろう。
ついに戦闘範囲内に入ったのか、ドレッド・タイタンは地面に刺していた大剣を引き抜き、立ち上がって私を見下ろす。身の丈ほどの大剣を片手で持ち上げる様子が、そのSTRの高さを物語っている。
「さて、剣を使う相手の基本的な動きは……振り下ろし、切り払い、突き……あとは接近された時の掴み技、かな? 何にせよ、小回りの効かない大剣相手には、接近戦が定石……!」
「オォォォォォォォォォッ!」
大地を震わせるような咆哮とともに振り下ろされる大剣。その軌道を目視で確認しつつ、ダンサーのアビリティ、【アクションステップ】を起動。余波を考えて余分に回避しながら、その効果によってAGIにバフをかける。
次!
振り下ろされた大剣がそのまま横にスライドし、放たれる切り払い。
これをジャンプ回避!
ジャンプ回避は空中にいる間が身動きできないからお勧めしないが、今回のように後隙が大きい相手には有効だろう。
ドレッド・タイタンの攻撃は当たれば致命傷だろうが、動きは緩慢で後隙も大きい。相手からすれば、回避に特化した私のジョブ編成とは相性最悪だろう。
VITを捨てて得た高AGIに【アクションステップ】によるAGIバフが乗り、オリンピック選手ばりのスピードで間合いを詰めた勢いのまま、ドレッド・タイタンの膝へ
もちろんただの攻撃ではない。
新たに獲得した棒術士系アビリティ、【魔纏】によって風属性を付与した【
【魔纏】を獲得して初めて知ったのだが、このゲームには『属性の相性』というシステムがあるらしい。武器や防具、アクセサリーの他、モンスターなどには隠しステータスとして属性が存在し、その相克によってダメージ量が変化したりするのだ。
私の予想通りドレッド・タイタンは土属性らしく、弱点属性攻撃とクリティカルが重なり、なかなか派手なダメージエフェクトが放たれている。
お次は……勢いを殺さず、そのまま股下を潜って掴みを回避、振り向きざま【空風・打】によって同じ場所へと攻撃を叩き込む。
「っ……本当にダメージ入ってる? タイヤでも叩いてる感触なんだけど」
「フンンンン————」
私の攻撃を意にも介さず、虫を振り払うかのように腕を振り回すドレッド・タイタン。その腕を足場にジャンプしつつこれを回避、さらにAGIにバフをかける。
おっと、避けるだけだと思わないでよ?
腕を回避した私は、ドレッド・タイタンの膝へ、膝も足場に肩へ。二段ジャンプもかくやというほどスムーズにドレッド・タイタンを登り切った私は、正面にドレッド・タイタンの顔面を捉える。
「これならどうかしらっ!」
もう一つ、レベルアップによって入手した棒術士のアビリティ、【ピアースレイド】。
相手の防御を貫いてダメージを与えるという、
私が【ピアースレイド】を放つと同時、アビリティによる赤黒い色のエフェクトに、【魔纏・風】による緑色が混ざった何とも言えない色のエフェクトがドレッド・タイタンの眉間を貫いた。
「オォォォォォッ!」
「よっし効いてるっ! けどぉっ!?」
激しい慟哭と共に大きく揺らぐドレッド・タイタンから投げ出され、落下を開始する。
うーん、このゲーム、わりとちゃんとした物理エンジン積んでるから、このまま落ちたら大ダメージ必至なんだよなぁ。いやまぁ、もちろん対策してるけどね?
【空風・払】!
地面に激突する直前、【魔纏・風】付与の【空風・払】を
これによって落下スピードを軽減し、後はいつものように五点接地法を使えば———
「っとぉ!」
無傷で着地が可能!
———着地した直後、私の身体を覆う影を見て瞬時に上を見上げる。
「ちょっ、マジ? 素殴りとかアリなのぉっ!?」
「オォォォッ!」
文字通り、上から突き落とすかのような
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