これ、さっさと進んだ方がいいのでは?
「ハァ、ハァ……流石にしんどいわ……」
・お、おぅ……
・なんであれで生きてんの……
・やっぱ
・カローナ様……アネファンでも強さは健在ですのね……
あれから数時間後、数十個にも上る魔石を抱えて始まりの街【ティエラ】へと帰ってきた。
めっちゃ効率のいいレベリングを思いついてやってみたのだが……死ぬかと思った。その方法というのが、『ゴブリン・コマンドをわざと生かしてゴブリンを呼ばせ、やって来たゴブリンを片っ端から倒す』というものだ。
わざわざこちらから探しに行かなくても向こうから来てくれるのを待てばいいし、ゴブリンは強くは無いから何とかなる……と、その時は思っていました。
「なぁんで二体目の『ゴブリン・コマンド』が来るかなぁ。二体に増えると普通のゴブリンの増え方が二倍どころじゃないんだけど……」
まぁでも、速攻狩ってやりましたよ。
長年ゲームやってれば、初見に近い敵の行動も何となく分かる。
その結果が、ゲーム開始後数時間でレベル10突破という躍進だ。
で、一度街に戻って来た私は何をするかというと、ゴブリンのドロップアイテムを換金するのだ。魔石はもちろんのこと、『ゴブリン・ナイフ』もそれなりに落ちたし、『コマンド・タクト』なるレアドロップもあった。初期資金としては申し分ないものになるだろう。
というか、私まだ初期装備のままなんだよねぇ。アイテムも買ってないし装備も整えてない。お金を全く使ってないどころか、お店にすら寄ってない。ちょっと楽しみだ。
「これ、買い取ってもらえるかしら?」
話しかけたのは、適当に入った武器屋の店主だ。白髪と髭がダンディでなかなかカッコいい。そして、筋骨隆々な体躯に浅黒い肌……おそらくドワーフかな?
もちろんNPCだよ。
「あぁ、ゴブリンのナイフか。こりゃ使えねぇな、バラしてもいいってんなら、一応素材として買い取ってやるがどうだ?」
「えぇ、構わないわよ。それより、ポーションか何かないかしら? HPはともかく、MPポーションとか……」
「さすがに武器屋にゃポーションは置いてねぇなぁ」
「まぁそうよね。えっと……」
「ん? あぁ、あんたプレイヤーとしては初心者か。薬屋なら一本表の通りだ。看板見りゃすぐわかるだろう」
「あら、ありがとう」
すごいなぁ、最近のAIはこっちの考えを察することもできるなんて。
薬屋の場所はまさに私が聞こうと思ってたことで、なんだか心を読まれた気分だ。
別に嫌な気持ちってわけじゃなくて、単純に驚いてる。
AIもここまで進歩したんだなって。
教えてもらった店でMPポーションやSPポーションを大量購入。と言っても、初心者の資金なんて大したことないけどね。
「ふぅ、それじゃ、今日の配信はここまでにしようかな。一応まだこの後も少しだけやるつもりでは居るけどね。それじゃあ皆さん、ご視聴ありがとうございました!」
・お疲れさま!
・いいもん見せてもらいましたわ
・次回も楽しみにしてます!
・お疲れさまでした!
・次の配信もお待ちしていますわ!
という訳で、街の宿屋でリスポーン地点を更新して一度ログアウト、歯磨きや入浴を済ませて再びベッドイン……じゃなくて布団に入って『アネックス・ファンタジア』にログインだ。
一瞬の暗転の後、目を覚ましたのは知らない天井。ゲーム内の宿屋の天井だ。
さてさて、夜はまた生態の違う魔物が出ると聞くが果たして……
私は期待と不安を胸に【始まりの草原】へと繰り出した。
♢♢♢♢
「グギャァァ……」
「確かに凶暴性は増してるかもだけど、強くなってる訳じゃないのね」
既に何度目か分からない、光となって消えていくゴブリンを眺めながら一人呟く。
場所は変わらず『始まりの草原』だが、淡い月明かりしかない中での戦闘はなかなか辛いものがあった。が、例の武器屋の店主から買った松明を燃やして視界を確保し、あとはただただ
こう言うゲームは大抵、夜には強い魔物が出るみたいな設定が多いのだが、『アネックス・ファンタジア』においてはその限りではないようだ。まぁでもそうか、強い魔物が跋扈するようでは、生態系もぐちゃぐちゃになるか。
ドロップアイテムである魔石はそこそこ溜まったが、やはりどれも黒い濁りが酷い。一番良いもので、なぜか剣を持っていた『ゴブリン・ソルジャー』からドロップした魔石が、月明かりに翳せば何とか光を通すことが分かる程度だ。
ついでに言うなら、だんだんレベルも上がりにくくなってきており、今ようやくレベル15ってところだ。
あれ……? SPポーションの消費量の割に……。
ドロップ、大した物は無し。
獲得経験値、低め。
エンカウント数、結構多め。
ここ、旨味無いな?
レベルが10ぐらいになったらさっさと次の街に行った方がいいわね。
……今日は切り上げて、明日にでも次の街に行こうかしら。
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