5作目_本当に恐ろしいのは人間


◆本当に恐ろしいのは人間


最新作(5作目)

文字数:3,388文字

第六回こむら川小説大賞参加作品

ランキング:ホラージャンル日間1位(2023.8.15)、週間8位(2023.8.21時点)


 何かホラーを書きたいなと思っていたところに、ちょうどツイッターでホラーの「本当に恐ろしいのは人間オチ」についての話題が流れてきまして、この類型でどんな話が考えられるかな?と考えてみたのが出発点でした。真面目に練り始めたのは、こむら川小説大賞の期間が始まってからです。人間、きっかけがないとなかなか動けないものなので、目の前に来たきっかけは逃さず大事にしないといけないなと改めて思った次第です。


 「本当に恐ろしいのは人間」という題材をそのままタイトルにしたわけですが、これに説得力を出すにはどうしたらいいか?→オバケがこれ言ってたら説得力ありそうだな、といった具合に、頭の方から生えてきた作品です。

 とにかく素人の書く小説ですので、冒頭からしっかり読者の心を掴まないとそっ閉じされてしまう!という恐怖がありまして、冒頭にはできるだけ拘りたいという思いがあります。で、このタイトルで開いてすぐにオバケが「俺が言うんだから間違いねぇよ」って言ってたらキャッチーかなと。

 そしてステレオタイプなオバケを考えてみまして、オバケといえば足がない、じゃあ……というような形で、始まりとオチは割と早々に決めました。


 頭とお尻が大体決まったので、その間を繫ぐべく書きやすい一人称形式で書き始めたんですが、これがなかなか難しかったです。

 オバケが一人称で語るという前提から、終盤まではギャグ調にしてラストをホラーにしようという、物語のテンションの位置エネルギーをオチに活用するという方向で当初は考えたのですが、これまでのような粗野なおっさん文体は違和感があるし、かといって普通の口調でも淡白でつまらないし……とかなり悩みました。

 そこで、どうせ人間にボコボコにされているなら思いっきり卑屈な文体の方があってるんじゃないか?と考え試してみたところ、割とするすると文章が出てきまして、ギャグ調ではないもののなんとか形になりました。

 また、一人称独白形式である以上、聞き手が必要だよなということで、聞き手にオバケを置いて「これなら聞き手が喋らなくても(発言がなくても)不自然じゃないな、よし!」ということにしました。


 しかし文章は一応書けてもなお、オチに辿り着くまで如何に読者の方を退屈させないかというのは本当に難しい問題でした。足がないから〜の与太ネタは早々に尽きてしまい、後はオチへの伏線でしかないんですよね。卑屈な文体だとこの口調で笑える形にするのがなかなか私には難しく……せめて読みやすい文章になるよう頑張りました。あとはとにかく短くまとめようと。結果、レギュレーションの3000文字をギリギリ満たす掌編となったわけです。


 あとは、オチの形式をどうしたものかなぁ〜と悩みまして、


①人間が語り手をボコボコにする場面を書くことでネタバラシ

②聞き手視点に切り替え、聞き手が語り手に回ることで説明してネタバラシ

③新聞記事でネタバラシ


の3つを考えましたが、


①は描写が胸糞悪い上にどうしても説明口調になるのがキツくて却下 

②も説明口調っぽくなるし、どんなキャラにすればいいかよく分からず断念

③新聞記事なら説明口調にしても不自然じゃないかな


というわけで③を採用しました。


 「救いがなくて良かった」という感想をいただいたのですが、ラスト手前のやり取りから「仲間が増えるよ!やったね!」という救いは一応用意してあるんですよね。最悪か?

 なんにせよ、アイデア一発ネタではあるものの割とコンパクトにうまくまとまったと満足しております。「怖かった」「ゾッとした」などの感想を本当にたくさんいただき、幸甚の至りです。また、ありがたいことにホラージャンルの日間ランキングで一日だけですが一位を取ることもできました。読者の皆様に感謝です。

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