第155話 1人目の仲間 ライザー

ホムラとバンバン、シキが攻撃するが攻めきれずにいる。


3対1とはいえ簡単に倒されてくれる相手ではないが、一番大きな影響はバンバンが守りに入ったことだ。


攻撃をしてくれれば隙は生じるのだが、身を守ることを優先したバンバンを追い詰められずにいる。


攻撃してこないと思い、大技を出すためにとオーラを練り込むと、ここぞとばかりに反撃してくる。


バンバンの戦闘運びが非常に上手いのだ。


早く、早くバンバンを倒さないと・・・。


焦る気持ちが正常な判断を3人から奪っていく。


「アヒャハハハハハ。早く倒さねぇと仲間が死んじまうぜ。逝っちまうぜ。」


「うるせぇぇぇ。炎飛燕。」


「おらぁぁぁ。」


「ホムラ。シキ。落ち着け!焦るな。確実にだ。」


勝ち急いでいるホムラとシキにガイモンが声を掛けるが、焦っているのはガイモンも同じだ。


まずい。


手詰まりだ。


バンバンが時間を稼ぎに来ている。


それに、マートルが想定よりも強い。


このままじゃ、ライザーが死んでしまう。


ライザーの死は俺たちの全滅を意味する。


チラリとライザーを見るもひどい有様だ。


すぐにでも助けに入りたいが、こらえる。


中途半端な援護は返って死を早めるだけだ。


早く、一刻も早くバンバンを倒すのだ。


それまで、ライザーを信じるしかない。


オーラを強く練り魔法を放つ。


「スカイチェイサー」


ガイモンの魔法がゆっくりと確実にバンバンへと迫り逃げ場を奪っていき、そこへホムラが合わせる。


「赤熱蛇剣(セキネツジャケン)」


カキン。


「アヒャハハハハハ。ぬるい。ぬるいぞ。」


上下左右前後に動くことができる多孔質な構造の封印の祠では、バンバンの行動を制限することは難しく、防御に徹したバンバンには通用しない。


ホムラの捨て身の攻撃もダメージは与えられるが決定打にならず、タイムアップとなる。


「グハァァァ。」


周囲にライザーのうめき声が響く。


振り向くとライザーが両膝をついて倒れている。


「ダメ。ライザー立って!!!ヒールアロー。」


致命傷だ。


そう判断したシキは、即座にライザーへ回復魔法を放つが、マートルに防がれる。


「ふん。結構根性あったな。随分と持ちこたえたが。これで最後だ。」


マートルがライザーの背中に足を乗せ拘束する。


もう限界を迎えているライザーは力なく横たわっている。


「ホムラ!ガイモン!ライザーが。ライザーが!!!」


自身では助けられないシキは、ホムラとガイモンに声を掛ける。


シキが泣き叫ぶように知らせるが、ホムラはバンバンの相手で精一杯だ。


そもそも、バンバン相手に前衛を1人で貼るだけでも十分すぎる働きだ。


それに対応したのは、ガイモンだ。


「分かってる。ファスト ウィンド ウェブ!」


ガイモンが、即座にマグマガールに攻撃をするが、オーラのこもっていない速攻の攻撃は簡単に防がれる。


「これで終わりだ。タンクのライザーよ。マグマの巨腕。」


マグマガールの巨大に膨れ上がったマグマの腕が振り下ろされる。


ドン。ジュババババン。


マートルの一撃に辺りが大量の水蒸気に包まれる。


「アヒャハハハハハ。1人目だ。1人目の脱落者だ。」


バンバンが嬉しそうに笑い出す。


「クソ。ライザーッ。」


ライザーの死を悟ったバンバンとホムラはそれぞれ別の思いのもと攻防をやめ距離を取る。


一人は、勝ち誇り。


一人は、膝から崩れ落ちる。


敗北が決定した瞬間だ。


ホムラはライザーを見ようともしない。


見なくても結果など分かっている。


ライザーへ向けたマートルの最後の攻撃は、音が違った。


魔法でガードする音ではなく、水が蒸発するような音だった。


ライザーの血肉が蒸発する音だ。


ライザーの死を見たら心が折れてしまう。


ホムラにとってライザーは、同郷のそれも親友だ。




えっ?


嘘。


ストン。


腰が抜けて座り込んでしまうシキ。


ホムラとバンバンは攻撃し合っていたから分からなかったが、ガイモンとシキは確かに見た。


どうしてここに。


バンバンもすぐに異変に気付く。


「なんだ?熱くない。涼しい。おい、マートル。オーラ武装を解くんじゃねぇよ。まだこれからだぞ。」


辺りが、涼しいのだ。


この冷気、あの時と同じ冷気だ。


間違いない。


あの時と同じ、トレントと戦った時と同じオーラだ。


見間違いじゃない。


蒸気の中からマートルの拳を受け止めるアスタロートの姿が見える。


「シープートざぁぁぁぁん。」







最悪の事態に備えて、すぐにシープートとして戦闘に参加できるように変装済みのアスタロートは全力で移動するために、おもおっも石をすべて捨てていた。


大きな多孔質の大地を見つけてすぐにここが封印の祠であることに気づいた。


一目見れば分ると言われた理由がよくわかる。


周囲との地形が違いすぎる。


祠っていうから洞窟なのかと思っていたが、これでは大きな天然のジャングルジムみたいだ。


空から見下ろす封印の祠は広い。


この中から勇者たちを見つけなければいけないが、いいか悪いかマグマケージを見つけてすぐに居場所は分かった。


近づくとマグマの壁の奥から戦闘音が聞こえる。


この中で間違いないようだ。


フルーレティーが勇者を助けろなんて言い出すとは、俺にとっては都合がいいのだがどういう風の吹き回しなのか・・・。


まだ戦闘中ということは、最悪の事態は避けられたようだ。


マグマの壁に手をかざすと込められたオーラの膨大さを感じる。


最初にこの世界に来て戦ったポメラニスという騎士が似たような魔法を使っていた。


ポメラニスは水属性の使い手で、たしかウォーターケージという技名だった。


球体の中に閉じ込める技だった。


それと似た業だろうが、込められたオーラ量が全然違う。


全力で攻撃してやっと突破できるかどうか。


トレントと戦ったときはオーラ武装を使わないなどの制限をしていたが、そんなことをして勝てる相手じゃなさそうだ。


初めから全力で行く。


パキィン。


力を籠めオーラ武装をする。


頭、銅、手、足とオーラの武具が付いているが、変装のため銅は翼で覆い隠しているため見えない。


まぁ、いいか。


「冷空衝撃波!」





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