第151話 vsバンバン

ホムラの声ですぐにバンバンがこちらに攻撃を仕掛けてくることが分かった。


狙いは間違いなくアタシだろう。


こういう状況下で最も狙われるのは一番厄介だと思われている存在だ。


そして、その存在はヒーラーか最も攻撃を与えている人であることが多い。


今回はどちらもアタシだ。


来ると思った瞬間にもうバンバンが眼前に迫ってくる。


こんな化け物みたいな運動能力の奴からどうやって逃げろっていうのよ・・・。


ホムラとライザーは一体どんな体のつくりをしているのだろうか。


いくら魔法で体を強化しているといはいえ、まったくもって信じられない。


一か八かで壁際に飛び込もうと思っていたが、タイミングさえ計れなかった。


バンバンの蹴りが近づいてくるすぐ後ろをホムラが走っている。


この速さについてくるなんて、本当にどうなってるんだか。


ホムラが何かを言っているが、今はそれどころではない。


アタシは、逃げなければいけないが足が動かず、ただただバンバンを見ることしかできない。


あっ。


アタシ死んだ。


そう思った瞬間に、強い衝撃に体が吹き飛ばされる。


「キャッ。」


体が吹き飛び背中から地面にぶつかる。


背中が痛い。


そして、右肩が熱く濡れている。


これは、まずいが、助かった。


ライザーに右肩を撃ち抜かれた。


まったく、もっと他に方法はなかったのだろうか。


すぐに治療しなければ戦線に復帰できない。


でも、助かった。


シキは自身の状態よりも先にバンバンの追撃を警戒して、地面から頭だけを起こしバンバンの様子を確認する。


バンバンはもうホムラと戦闘しており、ガイモンもその援護をしている。


ひとまずは、大丈夫だ。


「アヒャヒャヒャヒャ。空振りだ。空振りした。狙ったのか?たまたまか?良く救ったな。だが、一人脱落だ。」


「うるせぇ。シキ早く回復を。」


揶揄ってくるバンバンにホムラが答え剣を振るう。


後ろから誰かに抱え起こされる。


「すまないシキ。すまない。」


アタシの肩に風穴を開けて吹き飛ばした張本人のライザーだ。


ああするしかなかったのだろう。


おかげでアタシは助かった。


もう少し技を選べなかったのだろうかとは思うが、攻めるつもりはない。


ライザーがアタシを吹き飛ばしてくれなかったら、今頃アタシは死んでいる。


本当は気にするな、ありがとうと言いたいところだが、みんなアタシが負傷して気が動転している。


バンバンは、大技を打つためにオーラを大量に消費した。


バンバンがした攻撃はアタシに飛び掛かり蹴りを出しただけ、まだ、大技が来ていない。


「みんな。大技が!!!」


「アヒャヒャヒャヒャ。もう遅い。遅いんだよ。吹き飛べ。爆裂空撃派!!!」


「エアシールド!」


「ロックウォール!」


ライザーとガイモンがとっさに防御魔法を繰り出すが、オーラをほとんど込められなかった魔法は脆く、簡単に突破され、衝撃波が勇者パーティーを襲う。







「吹き飛べ!」


力いっぱい洞窟の主である、ヒカリゴケズリーを吹き飛ばす。


いつ勇者パーティーと出会ってもいいようにシープートに変装している。


洞窟の進路を阻むように立っていた光る苔を体にはやした大きなクマを吹き飛ばす。


オーラを纏っていたことからこいつも魔獣なのだろうが、こちらから押しかけて一方的に殺すのは抵抗があるし、何より先を急ぐ。


窟の奥へと走るが、奥は行き止まりでグリズリーの寝床しかない。


ここも違うのか・・・。


これで、何度目だ。


完全に迷子になっている。


言われた方角に向かって飛んでいるが、なかなか封印の祠らしき場所を見つけられない。


本当は大きく進路がそれているわけでもなく、まだ先に封印の祠があるだけだ。


ただ、なかなかそれらしい場所を見つけられず、もしかしたらもう通り過ぎているかもしれないと思い始めると不安になってきたのだ。


焦り始めたアスタロートは、オーラを全力で纏いオーラ武装までして、しらみつぶしにそれらしき洞窟に入っているが、見知らぬ亜人の巣であったり、魔物のねぐらだったりと空振りばかりだ。


今だって、体が薄暗く光る苔をはやしたグリズリーを倒したが、結局ただの洞窟で封印の祠ではない。


封印の祠は一目見れば分る特徴的な場所だと聞いているが、アスタロートは祠と聞いて勝手に洞窟をイメージしているのだ。


また、違うのか・・・。


急いで、外に出てまた言われた方角へ進んでいく。







マグマガールのマートルが洞窟の入口で戦闘を見届けていると、強風と共に勇者パーティーが吹き飛ばされてくる。


運のいい奴らだ。


多孔質なスポンジ状の岩場に引っかかるように倒れている。


後衛の二人は気絶しているようだ。


特に女の方は怪我がひどい。


前衛もただじゃすまなかったのだろう。


立ち上が等としているが体がついてきていない。


洞窟の奥からバンバンが歩きながらやってくる。


勝利を確信しているのだろう。


また、油断している。


学習しない奴だ。


つい先ほど一歩間違えれば殺されかけたというのに・・・。


俺の方が強いが、本気を出したバンバンは強かったな。


ん?


強い?


じゃぁ。バンバンに負けた勇者パーティーは弱いのか?


いやいや。


バール様は勇者パーティーの強さを調べろと言われた。


弱かったですなど言えるはずがない。


やはり俺の考え方が間違っているのだろう。


では、バンバンに負ける勇者パーティーは何が強いんだ?


これは難問だ。


あぁぁぁ。


難しい。


頭を抱えて考え込んでしまう。


とりあえず、この場にとどまっているとバンバンと勇者の戦闘に巻き込まれる。


戦闘にちょっかいをかけることは良くない。


それに、俺が手を出さなくても、バンバンが負けることは万に一もないだろう。


勇者パーティーにとどめを刺したバンバンにゆっくりと聞こう。


バンバンが洞窟から封印の祠へ帰ってくる前にマグマガールは上空へと移動して頭上から戦闘の行き先を見守ることにした。


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