第150話 vsバンバン

「極楽鳥炎華(ゴクラクチョウエンカ)!」


「ファイブ エレメンツ ショット!」


「チェイサーアロー!」


ホムラ、ガイモン、シキが攻撃を放つ。


バンバンのオーラ武装の追加効果の有無が分からない今は、万全を期すために後衛の2人が前衛をサポートするほかない。


オーラ武装の追加効果によっては命取りになりかねないからだ。


ライザーも次のバンバンの攻撃に備えて魔法を練っている。


シキとガイモンの援護によりバンバンは動きにくいはずだが、右腕1本ですべてはたき落とし、ホムラの攻撃には右足で対応する。


カン、キン。


ホムラの剣を受けたバンバンの脚から金属音がする。


流石、オーラ武装に魔獣化だ。


想定よりも堅くなっている。


身体能力が格段に上がっていることは想定内だったが、片腕で叩き落とされては、足止めや前線の援護にならない。


連射出来る最大のオーラを込めて放ったがこれではダメだ。


一方でホムラの連撃攻撃には十分なオーラを乗せておりバンバンと対等に渡り合っている。


「ないぞ。音だけだ。」


ホムラからの報告が上がる。


バンバンのオーラ武装や魔獣化が想像以上であったことは厳しいが、幸いにもオーラ武装に追加効果がないことが明らかとなる。


オーラ武装の追加効果は、炸裂音が鳴るだけだの見かけ倒しだ。


危惧していたことが1つ解決したと同時に、チームの行動目標が明確に定まる。


バンバンをここで倒す。


逃げるのか逃げないのかを気にしながらは戦いにくい。


倒すと決まれば腹も据わる。


誰よりも早くバンバン討伐へ気持ちが入ったのはシキだった。


あたしの全力の連続射撃を片手で打ち払うのはいらだたしい。


最初の一撃で決めていれば、いやそれは無理だった。


だが、足を狙っていれば勝ちは揺るぎないものになっていた。


あたしの失態だ。


あたしがもっと強ければ・・・。


あたしのありったけを込めてやる。


もっと早く、もっと多くのオーラを詰め込んだ魔法を放てなければ・・・。


「もっと強く。舐めんなよ!」


負けん気の強いシキが、続け様に攻撃を放つ。


凄い集中力だ。


すぐ後ろにいるシキの集中力が背中越しに伝わってくる。


ホムラの攻撃は、十分なオーラを込めた強力な魔法だ。


火の粉を舞い散らしながらバンバンと打ち合っている。


強力な魔法を放つためには多少のインターバルが必要で、オーラを練り直すとなると一度戦線から離れなければいけない。


その間ライザーがバンバンの相手をするのだが、想像以上にバンバンの攻撃が強い。


ホムラとライザーのオーラがみるみるうちに削られていく。


このまま火力で押すだけでは、ホムラとライザーの2人ともオーラを纏い直さなければいけなくなる。


つまり、前線が保たない。


ならば、弱点を突きトリッキーに攻めるしかない。


それは、全属性に適性があるガイモンにしか出来ない芸当だ。


属性には相性がある。


火属性と相性が悪いのは水属性だ。


火と水は互いに打ち消し合う属性の代表例で、相性の悪い魔法同士がぶつかり合えば互いに打ち消し合い込められたオーラ量が小さい方が負ける。


山火事にバケツ一杯の水では太刀打ちできないことや、たき火で湖の水を蒸発できないことと同じだ。


相反する属性の魔法を放つことでバンバンの魔法を無力化することは出来ないが、弱体化させることは出来る。


爆発魔法に湿気が有効だ。


ただ、ここで問題なのはバンバンの火力も下がるがホムラの魔法も弱体化する・・・。


だから、ホムラがオーラ回復のために前線を引きライザーが前線に出た瞬間が勝負だ。


背後から鋭い弓の連続攻撃が放たれる。


先ほどは片手で簡単に弾かれていたが、今はオーラを纏った手で払っている。


それだけシキの放った魔法が強力なのだ。


すごい。


シキの奴は今この瞬間にも成長している。


「チッツ。遠くからチマチマと煩わしいなぁ。」


バンバンがシキの方を一瞬見るが、ホムラがバンバンを自由にさせない。


ホムラが必死にバンバンに食い下がるが、徐々に生傷が増えそして纏っているオーラをほとんど消費し尽くしていく。


来るぞ。


前線がライザーと入れ替わる瞬間だ。


ホムラがオーラを纏い直すために離脱した瞬間に魔法を放つ。


「ヒューミディティー エアー」


洞窟内に湿度の高い空気が充満する。


よくこれで町のキノコ農園に水やりをしたものだ。


「ガイモン。これは?」


ホムラが戸惑った声を出す。


当然だ。


湿度の高い環境で、火属性のホムラがコンディションを高く保つことは困難だ。


だが、それ以上にバンバンに効いている。


オーラ武装の隙間から破裂音が響いていたが、プスプスと湿気た音に変わっている。


その音を聞いたホムラとライザイーはすぐに、ガイモンの狙いが分かる。


「ライザー今だ。」


「分かってる。スラストハリケーーーン。」


ライザーの槍を足で受け止めるが、シキの矢は防ぎきれず背中に刺さる。


「しゃぁぁ。まだまだ行くよ。」


「馬鹿馬鹿しい。湿気ごときで俺の行動を阻害できると思うなよ。思ってねぇよなぁ。」


バンバンが纏っていたオーラが急激に減る。


オーラが減ったということは大技が来る。


「大技が来るぞ。」


その判断は、正しい。


が、技が来ない。


近接戦闘のホムラとライザーは防御態勢を取っている。


しまった。


これはフェイントだ。


フェイントに引っかかったことにいち早く気付いたのはライザーだった。


バンバンがシキとライザーの元から離れる決定的な隙が出来た。


知能で劣る魔族がフェイントを掛けてくるとは思わなかった。


確実に前線を抜かれる。


「シキ、ガイモン避けろ!」


ワンテンポ遅れてホムラが気付き後衛に注意を促す。


無理だ。


この狭い洞窟内で、後衛が逃げる場所など無い。


気付いたときにはもう遅くバンバンは、後衛に向かって走り出す。


この感触は、2度目だ。


1度目はアスタロートとの戦闘で一番はじめにタンクの俺がやられた時だ。


タンクは常に最前線にいなければいけない。


タンクはどんな攻撃も防がなければいけない。


タンクはどんなに怪我を負っても倒れてはいけない。


頭では分かってるんだ。


それが簡単にできればタンクがいるパーティーで死者はでない。


そんなこと出来っこない。


ホムラがバンバンの後ろを追いかけるが、差が埋まらない。


足にオーラをためて、将軍バッタのように跳躍したのだろう。


滑空するように飛んでいく。


だけど、これだけは譲れない。


タンクより先に仲間が死ぬことは許されない。


シキすまない。俺が弱いばっかりに・・・。


「ニードルショット!!」






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