第149話 vsバンバン

あーあ。爆裂バッタ死んじゃったかもね。


洞窟内に土煙が立ち中の様子が分からない。


爆裂バッタは油断しすぎだ。本気を出せばもう少しは強いはずだ。


今の側近達は、魔王様との模擬戦闘で生き残った者達だ。


あの程度の実力で生き残れるはずがない。


マグマガールのマートルは、洞窟の入り口から勇者パーティーと爆裂バッタ魔人バンバンとの戦闘を見ていた。


最初から全力で戦っていればもっと優位に立ち回れたのに。


ただ予想以上に勇者達が戦えるのも事実だ。


実力が思っていたよりも強いのもあるが、連携がやっかいだ。


あのオーラ量なら負けるはずないのだが、爆裂魔人が押し負けていたのは連携がいいからだ。


まぁ、俺は油断なんかしないけどな。


爆裂魔人には、いい経験になっただろ。


もっとも、次に活かせる機会があるか分からないがな。


魔人の悪い癖だ。


無意識のうちに人間を自分たちよりも弱いと思い込んでいる。


俺みたいに戦うなら最初から全力で挑むベきだ。


例え相手が兎であっても、俺は全力で叩き潰す。


どんな相手にでも全力で戦うことが強くなることの秘訣。


実践でさえも訓練なのだ。


むしろ全力で戦った後の方が自分がより強くなる感じがするのをマートルは知っている。


さて、行きますか。


ん?あれ、行くってどこに行くんだ?


俺は、勇者パーティーの強さを知るために爆裂バッタの後を付けていたんだが、まだ、勇者パーティーの強さは分からない。


力将バール様は、爆裂バッタに付いていけば分かると行っていたが、その答えはまだ分かっていない。


しまった、爆裂バッタという、唯一の手がかりを失ってしまったかも知れない。


まだ、爆裂バッタが死んだと決まったわけではないが・・・。


洞窟の中から、一段階上がったオーラを感じる。





「見た。直撃よ。」


自身の攻撃が直撃したことを確信して、シキが叫ぶ。


トレントを討伐して更に成長したシキの全力の一撃。


回復魔法を瞬時に放てるように多少の余力を残しているものの、トレントに放った一撃よりも更に強力になっていることを実感する。


バンバンに攻撃が当たる瞬間に爆破魔法で相殺しに来たがあんな咄嗟に出た技であたしの一撃を無傷で切り抜けられるはずがない。


一撃で仕留め切れていなくても相当な手傷を負っているはずだ。


あたしたちの勝利が決まったようなものだ。


バンバンの爆破魔法で砂埃が立っており、ガイモンは巻き込まれていないが、ライザーとホムラが土煙の中にいる。


「シキ。オーラを纏いなおせ。」


「もうやってるわよ。」


全く、これだから嫌になるわ。


土煙の間から、ホムラとライザーの顔が一瞬垣間見えた。


あの顔は、警戒体勢の表情ではない。


戦闘態勢だ。


強く弓を握りしめる。


本当は一撃で仕留められたかと思っていたんだけど、悔しいな。


でも、次で仕留める。


シキが次の攻撃に向けてオーラを纏い始めるとバンバンのオーラの質が変わったのを感じる。


「!!!」


それと同時にシキとライザーが距離を取り、土埃の中から出てくる。


「ホムラ、ガイモン気をつけろよ。あいつ本気じゃなかったみたいだ。」


「でっでも、手傷は負っているよね。流石に、無傷だったら傷つくんですけど。」


「あぁ。しっかり入っているよ。だからこそ、眠れる獅子をたたき起こしてしまったのかもな。」


ホムラが左腕を叩き、バンバンが手傷を負った場所を伝える。


良かった。


これで無傷だったら、かなり状況はまずかったわ。


バンバンのオーラが周囲へ影響を与え始めている。


膨大なオーラを濃縮して体に纏った証だ。


膨大なオーラを濃縮して纏えば、オーラは武具を装備したかのように頑丈になる。


オーラ武装だ。


オーラ武装した分、攻撃が通じにくくなり更に個人の魔法適正によって非常に強力な攻撃の一助となることがある。


特に特記戦力No.2雷光のピィカさんは、雷の性質を持つオーラを濃縮し武装するため、触れるだけでなく近づくだけで体が痺れ、戦闘に影響を与える強力なオーラ武装を持つ。


逆に、特記戦力No.1後光のセンリ様のオーラ武装は、光り輝くだけで補助的な効果がないとされている。


ピィカのように特殊な効果があると非常にやっかいだ。


バッバッバッバッ。


土煙の奥から断続的な破裂音が聞こえてくる。


間違いなくバンバンのオーラ武装による追加効果だ。


音を発するだけなら良いのだが、ピィカさんのように特殊な効果があればダメだ。


即時撤退だ。


「おい、ホムラどうする?お前も見たんだろ?こいつは、骨が折れる。逃げるなら今だぞ。」


「いや、オーラ武装の追加効果を確認してから決めよう。手傷は負っているし、押しているのはこちらだ。それに、すぐに逃げていては逃げ癖が付いてしまう。たまには死闘をくぐり抜けるのもいいだろ。ピィカ様のように特急の追加効果でない限り戦うぞ。」


「分かった。判断は任せる。2人とも気をつけろよ。近接戦闘は追加効果によっては命取りになる。援護は任せろ。」


「ライザーは、慎重すぎなのよ。あたしの援護があるのよ。」


「おいおい。あいつの姿を見てないからそんなことが言えるんだ。洞窟が怖いシキなら泣いて逃げ出すレベルだぞ。」


「何それ。しばくわよ。でっ何を見たって言うのよ。」


土煙が晴れ、バンバンの姿が見えてくる。


あれ、あんなに大きかったっけ?


それに少し体つきも違うよな・・・。


「ねぇ。一回り大きくなっているきがするんだけれども、それに、少し見た目も変わったような気がするんですけれど・・・。」


「あぁ。そうだな。オーラ武装に魔獣化だ。魔獣化は俺も初めて見る。噂には聞いていたが、本当に使い手がいるなんてな・・・。技将の側近相手にいいように戦えていたと思っていたが、やはりそう簡単に勝たせてはくれないか。」


ガイモンはバンバンの姿を一目見てその変化を適切に言い当てる。


「へぇ。オーラ武装で一段階ギアが上がったと思っていたけど、二段階ぐらいギアを上げてきたのね。」


より元となった魔獣の姿に近い変化は、一部の昆虫系魔人の特有の変化だ。


身体能力が向上し知能が低下すると言われている。


土埃が晴れて、バンバンの姿があらわになる。


元々爆裂バッタ特有の脚は一回り大きくなり、間接の隙間からは、断続的に破裂しているのか火花が散っている。


体中には、灰色の煙のようなオーラ武装を纏っており、顔つきはより爆裂バッタに似ている。


左腕の二の腕から先がシキの一撃で吹き飛んで無くなっている。


「アヒャハハハハハ。イテェイテェなぁ。また、ウサコのところに行かねぇとな。負けねぇ。負けねぇよなぁ。俺はつぇぇからなぁ!」





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