第148話 vsバンバン

出会ってすぐに確信した。


バンバンは強い。


その判断は、剣を交えてからでも変わることはなかった。


だが、アスタロートと戦った時ほどの絶望はない。


あの時は、力の差がかけ離れすぎて分からなかったが、今はその力の差が分かる。


3将のうち最弱と言われている知将を追い詰めて浮かれていたのだろう。


今まで知将の側近は姿を現していなかったが、それが今までいなかったからなのか、それとも姿を現す必要がなかったからなのかは分からない。


ただ1つ事実なのは、知将をあと一歩まで追い込んだ時に、知将の側近アスタロートが初めて戦場に現れ、そして俺たちはあっけなく敗れたのだ。


俺たちにとっては、初めての力ある魔族との戦いで、初めての敗北。


そして、今の相手は同じく三将の側近だ。


あれから、俺たちは強くなった。


まぁ、強くなったのはシキとガイモンのお陰なのだが、以前とは見違えるほどの力を身に付けたのは違いない。


だからこそ分かる。


以前より明確に分かる、バンバンと自分の力の差、こいつには勝てない。


魔王や三将、その側近達の圧倒的な魔人の力が、人の身で到達するには到底無理であることが分かる。


対等に戦えるのは人の域を超えた極一部の人間、それも特記戦力と言われるような人だけだ。


1人では決してかなう相手ではなく、今も逃げ出したいほどだ。


だが、俺は1人じゃない。


今までも1人でかなわない敵をチームワークで倒してきたのだ。


今もバンバンの攻撃をホムラが防ぎ、ガイモンが隙を突いて攻撃を、ガイモンが相手の行動範囲を狭めるために魔法を放つ。


この連携が一瞬でも崩れれば誰かが死ぬ。


そこまでして、やっと対等に戦える相手。


こちらの攻撃は何度か喰らっているが、強くオーラを込めていない魔法ではほとんど有効な攻撃になっていない。


こちらの攻撃はほとんど通らないのに相手の攻撃は一撃必殺なのだ。


バンバンの攻撃が鼻先をかすめる。


嫌になる。


十分に距離を取って躱したはずなのに、爆風がかすめていく。


こちらの攻撃は何度当たってかすり傷程度なのに、こっちは一撃もらえばノックアウトだ。


死にはしないだろうが、シキの回復なしでは戦線に復帰できないだろう。


一撃に込められるオーラ量がバンバンより劣っているのだ。


3対1での攻撃での近接戦、攻撃魔法を放つためにオーラを魔力に変えて放つ時間は、バンバンの方が圧倒的に短い。


それなのに、バンバンの方が高威力の魔法を放つ。


単純な身体能力の差もあるが、バンバンが俺たちより短時間でより多くのオーラを魔力に変換することの出来る優れた戦士であることの証拠だ。


時間を掛けて強い魔法を放つことは出来るが、それはシキの役目だ。


俺たちはバンバンのこの場に引き留め続けることが出来ればいい。


「ヒャハハハハ。どうした。どうしたのだ?このままじゃ、俺には勝てないぜ?爆魔人連脚!」


バンバンバン。


バンバンの爆発によって加速した重たい蹴りの雨がホムラに襲いかかる。


「狗尾炎技(エノコロエンギ)」


襲い来る連撃を、炎を纏った剣で風に吹かれる狗尾草のようにいなしていく。


強い力に逆らわず、いなすことでバンバンの力強い攻撃をさばいていく。


その隙を逃すはずがなく、ガイモンとライザーが動く。


「スカイチェイサースロウ」


ガイモンの杖先から紫色の魔力弾が複数生成されるのが、バンバンの後ろに見える。


先ほども見たガイモンの新しい魔法だ。


火力はバンバンを傷付けるために十分なオーラが込められている。


だが先ほどは、人が歩くペースで近づいてくる魔力弾だったが、今度の魔法は更にスピードが落ちている。


亀が歩くような速度でじわじわとバンバンに飛んでいく複数の魔力弾子供でも簡単に避けることができる。


だが、一目で分かる。


魔力弾の速度を犠牲にした分、火力が上がっている。


ライザーもオーラを練って攻撃をする準備に入っている。


そして、ガイモンの更に奥にいるシキも魔法を放つ準備が完了している。


弦を最大限まで引き絞って狙いを定めている。


弓矢は、シキと同じピンク色をしており、込められた魔法の濃さが見て取れる。


強い魔力反応を感じ取ったバンバンはシキの魔法に気付くがもう遅い。


ホムラの視界には、皆の動きが手に取るように分かった。


バンバンの攻撃をすべて受けきったホムラはすぐに次の攻撃に備えていったん離脱する。


バンバンは逃亡を図ろうとするが、ライザーとガイモンがそれを許さない。


「ソニックスラスト」


「サンダーガン」


ライザーが素早い突きの連撃を放ち、ガイモンが魔法を放つ。


ホムラと入れ替わるようにバンバンに接近し攻撃を放ち、ガイモンがそれをアシストする。


そこに時間差でスカイチェイサーがバンバンに迫り来て、バンバンの逃げ道を更に狭めていく。


「くそ。油断した。油断してたのか。逃げなくては、そこをどけろ。通すんだ。」


バンバンは、シキの攻撃から逃れるために封印の祠の方へ逃げようとするが、ガイモンとライザーがそれをさせない。


バンバンに逃げ道はない。


勝った。


後はシキが魔法を放つだけだ。


ホムラは次の攻撃の準備をしているが、その必要はなかったかも知れない。


「今更逃げようだなんて、遅いのよ。あたしの本気の一撃をくらいなさい。穿てセンリの一矢。」


シキが放った一矢は、強い光を放ちながらバンバンへと直撃し、その後、ガイモンのスカイチェイサーがバンバンに直撃する。


洞窟内には、爆風とバンバンの悲鳴がこだました。





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