第145話 爆裂バッタ魔人バンバン
緑の体に赤いラインの入った特徴的なバッタの魔人。
見てすぐに分かった。
技将ベーゼルの側近の1人である爆裂バッタのバンバンだ。
似たような見た目の魔人はいくらでもいるだろうが、奴の纏うオーラ量とその質が異次元だ。
4人分のオーラを集めてやっと奴のオーラと等しいと思えるほどのオーラは、灰色をしており禍々しい。
なぜ、魔人がここにいるのかは分からないが、そんなことは後で考えるべきだ。
なにせ、奴は懸賞魔人、危険度9の超大物だ。
「ホムラ、奴は懸賞魔人、危険度9のバンバンだ。バクマン様と同じで、爆破魔法の適性があるが、奴はモンクだ。インファイトには気をつけろ。」
「あぁ。流石の俺でも知ってるぜ。また、モンクか。」
ライザーが、斧と小盾を構えて一歩前に出る。
直前の対人戦はモンクと思っているアスタロートとの戦闘で、かなり苦い思い出だ。
奴もアスタロートと同様の戦闘力であることは容易に想像が付き、力が入る。
すでにオーラを纏いきっているライザーが持つ小盾は風魔法で強化されており、空気を圧縮して作った空気の盾を構えている。
「よし。引き返せ。洞窟内で迎え撃つ。合図は、シキの強化魔法だ。準備ができ次第初めてくれ。」
ホムラの指示にライザーとガイモンが頷く。
逃げではなく、戦闘を選択したようだ。
緊急時の決定事項はホムラが決める。
それに誰も異を唱えない。
ここで、言い争っても危険になることを知っているし、こういうときのホムラの判断はなぜか大体いつも上手くいく。
洞窟は狭くて戦いにくいが、今来たばかりの複雑な地形の封印の祠で戦うよりは、洞窟で戦って方がいいとも考えられる。
「オーケー。分かったわ。特上の強化魔法を使ってあげるわ。しっかり守ってよね。」
「あぁ。任せろ。」
シキが、オーラを込め魔法の準備に掛かる強力な魔法は放つまでに時間が掛かる。
爆裂バッタのバンバンは今にも襲ってきそうなほど、戦闘準備が整っている。
少し、時間を稼ぐしか無いな。
「アヒャハハハハハ。なんだ、なんだ。作戦会議か?作戦会議だな。俺に殺される順番でも決めているのか?そうだな。」
「ふん。お前を倒す算段を付けていたんだよ。」
「おい、ガイモン刺激するな。」
「任せろ。時間を稼ぐ。」
ホムラがガイモンの腕を掴んで小声で注意するが、考えなしな分けではない。
バカな奴ほどこういう挑発に乗ってくる。
ライザーは、いつ襲いかかってきても対処出来るように、盾を体の前で構えている。
「俺をたおすだって?ヒャハハハハ!ベーゼル様は俺に言った。勇者パーティーをぶっ殺せってな。だから、お前達はここで死ぬんだよ。残念だったな。残念だったか?俺と殺し合って今まで生き残った奴はいない。なぜなら俺が殺されてないからな。」
バンバンは、ガイモンの挑発にいとも簡単に乗ってきた。
「フフフ。お前バカだな。俺たちも殺し合いで負けたこと無いぜ。なぜなら俺たちも死んで無いからな。」
本当は、訓練でいろんな人に負けているし、直近だとアスタロートに負けている。
だが、俺たちは生きているならあれは殺し合いじゃない。
バンバンの理論だと、今生きている奴全員殺し合いで負けたことがない猛者になる。
「ヒャハハハハ。なら、今日でその連勝も終わりだな。なぜなら、ベーゼル様が俺にお前達を殺すように言ったからな。ベーゼル様が言ったことは絶対だ。残念だったな。」
ホムラはバンバンの理論の隙を突いて皮肉を言ったつもりだったが、バンバンには理解されなかったようだ。
「俺たちも予言者に魔王を倒す者と言われているんだがな。」
「ヨゲンシャ?誰だそれ?魔王様を倒せるはずがないだろ。魔王様を倒せるのは魔王のみだ。子供でも知っている。バカだな。お前達、お前達は魔王じゃない、勇者だ。勇者に魔王は倒せない。」
魔王を倒すのは魔王のみ。
魔王の圧倒的な強さから過去にそう言われていた。
現に前勇者パーティーよりさらに前の勇者達で魔王に戦闘を挑んだ者は、誰も帰ってくることはなかった。
だが、それは過去の話だ。
前勇者パーティーの勇者を除く3名の帰還により覆された。
「随分古い言い伝えだな。前魔王を倒したのは、勇者パーティーだが。まさか知らないのか?」
「そっそれは違う。それは、違う。そう。前勇者は魔王だったのだ。だから魔王様を倒したのは魔王だ。」
先ほどの皮肉には気付かなかったが、今回の指摘には気付いたようだ。
流石過去最強の勇者パーティーと言われるだけはあるな。
脳みその小さいバッタ魔人でも知っているようで、それでもなお自分の正しさを主張したのか、支離滅裂な説明が始まる。
すぐ後ろのシキのオーラが落ち着き、弓に手を掛ける。
強化魔法を撃つ準備が整ったのだ。
時間稼ぎもここまでで良いだろう。
「ふん。お前、バカだろ。勇者が魔王な訳ないだろ。」
「カチン。カチンときたぞ。お前は許さない。お前はいたぶって殺してやる。」
「殺せるといいな。」
「殺せる。殺せるさ。その生意気な口も聞こえなくなる。」
「フフ、なら試してみな。」
「ぶっ殺してやる!!」
「宿れ三獣神 エンチャントアロー!!!」
バンバンが飛びかかってくると同時に、シキがバックステップで後方に飛びながら全員を射程に収め魔法の弓矢を放つ。
茶、青、赤のまだら模様の弓矢が全員の体に刺さり、洞窟の奥へと駆け出す。
バンバンはまだ宙にいる。
強化魔法を放ったシキが一目散に洞窟の奥へ走りその後をガイモンホムラが追いかける。
「足場が安定している場所まで走れ。そこで迎え撃つ。ライザー、頼む。」
長年一緒に戦ってきたメンバーなだけあって、名前を言われただけでその意味が分かる。
殿だ。
足の速さは、ホムラ、ライザー、ガイモン、シキの順で早い。
普通に走れば、ホムラとライザーはガイモンとシキを置いていってしまう。
前衛が、後衛を置いて立ち回るなど考えられない。
前衛は常に後衛より敵の近くにいるべきだ。
「あぁ。任せろ。」
仲間の盾になる。
それが俺のタンクとしての役目だ。
それを聞いたホムラは、一番遅いシキを肩に担ぎ走る。
「ちょっと、ホムラ。」
「何も言うな。急ぐぞ。」
突然のことに抗議をしようとするが、洞窟の入り口にバンバンが見え受け入れる。
「分かったわ。」
「逃げるのか?逃げるんだな。だが、逃がさない!逃げられない。その速さじゃなぁ。」
バッタ魔人は、足が異様に長く瞬発力と跳躍力に優れた種族だ。
将軍バッタの後ろ足のように足を折りたたみ、力をためる。
「来るぞ。」
ライザイーがら声が掛けられる。
ボォォォンム。
バンバンは自信の爆破魔法を推進力にかえて飛んで来る。
「ヒャハハハハァーーーー!!!」
「爆裂バッタのやつ。やっと戦闘を始めたか。さぁて、勇者達はどれだけ持つかな。楽しみだな。」
力将の側近である、マグマガールは、洞窟の入り口で爆裂バッタと勇者達の戦闘を見学している。
そして、アスタロートは、フルーレティーに言われて勇者パーティーを守るために再度シープートに変装して、封印の祠に向かって飛行しているのだが・・・
「封印の祠ってどれ?見れば分かるって言われて飛んできたけど・・・。」
特徴的な祠だから見たらすぐに分かるといわれて飛んでいるが、未だにそれらしき祠は見つかっていない。
もしかして、もう通り過ぎたのか?
どうなのだろうか?
飛んでいく方向がずれていたら特徴的な祠でも見逃している可能性もある。
いや、フルーレティーが指さした方向を信じて、もう少し真っ直ぐ飛んでみよう。
アスタロートは迷子になったのでは無いかと不安になりながら空を飛んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます