第144話 封印の祠
スケルトンスライムを討伐してから少し奥に進むと、洞窟の周囲はどんどん様変わりしてきた。
無骨な岩は何かに浸食されたのか無数の球状の穴が目立つようになってくる。
はじめは、拳サイズの穴がポツポツとあっただけだったが、奥に進むにつれ穴のサイズが大きくなっていく。
穴のサイズが足のサイズを超えきたところで、油断をしていると足を取られるようになる。
「おっと。」
ライザーが穴に足を取られて一瞬からだがぐらつく。
「気をつけてよね。そこら辺穴だらけよ。」
「あぁ。流石にこれだけ穴ぼこだらけだと歩きにくいな。」
「そうね。これがスポンジケーキのような大地なのかしら。」
「あぁ。奥に行くにつれてひどくなっている。封印の祠が近づいてきている証なのだろう。」
徐々に大きくなってくる穴の中には、水がたまっていたり、スライムが潜んでいたりしている。
スライムと水の見分けは非常に困難だが、穴に収まる小さいサイズのスライムは低位のスライムで簡単に倒すことができる。
何度か先を歩くホムラが捕食されそうになっていたが、危なげなく倒すことが出来ている。
穴のサイズが大きくなり、体を丸めるとすっぽり入りそうなサイズまでなってくると、穴のすぐ近くの空間と繋がっており、更に奥の方まで見えるようになってくる。
このまま進んでいくと歩く場所もかなり限られてきそうだ。
そして、封印の祠はどうなっているのだろうか?
知識では知っていても、直接目で見るのとでは意味が違う。
更に奥へと進んでいくと洞窟の幅は3人横に並んで歩けるサイズの洞窟だが、無数の球状の穴のせいで、一列にならなければ進めなくなった。
シキが指定した隊列から自然と縦一列の隊列へと変わっていき、ホムラ、ライザー、シキ、ガイモンの順で、進んでいく。
足の踏み場が肩幅の半分くらいで、突然ホムラが立ち止まる。
ライザーはすぐに反応して立ち止まるが、間隔を詰めて歩いていたシキがライザーにぶつかる。
「あいた。ちょっと、急に立ち止まらないでよ。狭いんだから、落ちたらどうするの?」
「いや。シキが詰めて歩きすぎなんだよ。まだ怖いのか?」
「うっうるさいわね。近くにいると安心するのよ。」
「・・・。」
シキとガイモンが話してもいてもホムラとライザーは会話に入ってこない。
「ねぇ。ライザー、ホムラ、聞いているの?」
シキは、突然立ち止まるホムラに苦情を言うが、ホムラは全く気にしたようなそぶりはなく、前方を見つめている。
「おい、ホムラどうしたんだ?」
ガイモンも気になってふたりに声を掛けるが返事が返ってこない。
ホムラのすぐ後ろを歩いていたライザイーはホムラの体の横から覗き込むようにして前方を確認している。
「・・・こりゃ凄い場所だな。」
「なんだ。封印の祠が見えたのか?」
「あぁ。見てみろよ。スポンジケーキとはよく言ったものだな。」
「だな。そう言われて見ると確かにそうだが、こんなに中身の詰まっていないスカスカなスポンジケーキがあったら苦情もんだな。」
ライザーが見るように促してくるが、ライザーの体が大きすぎて見えない。
横から覗こうにも、すでにシキの肩幅よりも狭い足の踏み場からでは、大きいライザーの覗き込むことが出来ない。
前のシキは背伸びをして見てみようとしているが、無駄だろう。
体格差がありすぎる。
「ちょっと、ライザーあんたの体が大きすぎて見えないのよ。私より小さくなりなさいよ。」
「あぁ、すまんな。ちょっと待て、今しゃがむから。」
ホムラとライザイーが屈むと視界が広がる。
「何あれ、見たこと無いわ。」
「あぁ。想像以上に足の踏み場が無いな。」
洞窟の奥には背丈を優に超える大きさの多孔質構造の大地が広がっている。
その大地は、空間の90%以上を空気が閉めておりほとんど足の踏み場がない。
細いところだと、足の幅くらいしかない。
「シキ、落ちるなよ。」
「落ちないわよ。誰に注意しているのよ。あたしは元トレジャーハンターでチェイサーよ。あのくらいの大地なら簡単に踏破してあげるわ。むしろ気をつけるのは、魔術師のあんたでしょ。この中じゃ一番運動神経悪いんだから!」
「俺は大丈夫だ。魔法で何とでもなるからな。」
「ふーん。じゃぁ大丈夫ね。それにしても、早速いくつか武器が見えるわね。まぁ、錆びて使い物にならなさそうだけれど。」
4人の中でシキは一番目よく、魔力で強化した目は遠方までよく見渡すことが出来る。
実際に、シキ以外の自分を含めホムラとライザーも武器を無付けられていないようだ。
だが、シキの目があれば武器集めも案外すんなり終わるかも知れないな。
「シキ。見えるのか?」
「えぇ。何とかね。あなた達には見えないでしょうね。かなり奥よ。空洞が多い構造のお陰でだいぶ先まで見渡せるわ。」
「よし、じゃぁ、早速いくか。」
洞窟の終わりと封印の祠の入り口はひどく曖昧になっており、徐々に近づいていくといつの間にか封印の祠に足を踏み込んでいた。
「うっわ。底深。」
上を見ると、多孔質構造の隙間から空が見え、空の光が届く今の場所は意外にも明るい。
そして、下を向くとそこが見えない。
そして、周囲360度同じような景色が広がっている。
下手に動き回ると帰って来られなくなりそうだな。
「よし、周囲を確認して新調に進むぞ。」
「キャハハハハハ。来た来た来た!ベーゼル様の言うとおりだぜ。」
今から進もうというところで、頭上から声が聞こえてきた。
町の中以外で、それも東国と隣接している封印の祠で声を掛けられたら取る行動は決まっている。
皆、それぞれオーラを纏い戦闘に備え、声の主を探す。
声の主は、上空から見下ろしている緑の体にオレンジ色のラインが入ったバッタの魔人だ。
ずっと尾行していた爆裂バッタの声が聞こえる。
勇者パーティーを見つけたようだ。
ここから直接姿は見えないが、近くにいるのだろう。
流石は力将バール様。
痺れるぜ、結婚したい。
いやいや、なに考えているんだ俺、俺みたいな力自慢しか取りえのない男勝りなマグマガールがバール様に釣り合うわけがない。
それに、抜け駆けしたら、ファンクラブに殺されるぜ。
よし、これから、バール様の言いつけの通り、勇者パーティーの強さを探りに・・・。
ん?
強さってなんだ?
どう報告すればいいんだ?
いままで倒してこいという命令しか受けたことがない。
今回は、勇者の強さを探ってこいだ。
そのために、技将の側近が領から出て行けば後を付ければいいと話していたが・・・。
その後は、どの後はどうすればいいんだ。
くそ、分からないぞ。
敬愛なるバール様の命令を遂行できなかったら俺は、バール様ファンクラブから追い出されるかも知れない。
それだけは嫌だ。
それなら、死んだ方がましだ。
バール様は、後を付けろといっていた。
技将の側近である爆裂バッタが領から出たから後を付けたら、勇者に出会った。
バール様は後を勇者の強さを探るために爆裂バッタの後を追跡しろといった。
であれば、爆裂バッタの後ろを付いていけば強さが分かるはずだ。
爆裂バッタはこれからどうするか知らないが、この後も爆裂バッタの後にバレないように付いていこう。
そうすれば、そうすれば、きっと勇者の強さも分かるはずだ。
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