第142話 封印の祠へ

ヌチャ。ヌチャ。


「へぇ。スケルトンスライムか。」


スケルトンスライムが現れる。


スケルトンスライムは、ゾンビに寄生したスライムが肉をすべて食べ尽くし骨だけになったスケルトンとその肉を食べて成長したスライムの2体をまとめてそう呼ぶ。


正確には2体だ。


「こいつは強敵だぞ。」


自然と武器を持つ手が強くなる。


スケルトンは攻撃力が強いが動きが遅く隙が多く、スライムはコアさえ破壊することが出来ればなんなく倒す頃が出来る。


そんな2体が共生しており、スケルトンの体をスライムが筋肉のように覆っている。


スライムの弱点であるコアはスケルトンの肋骨に守られており、スケルトンの体はスライムの体に守られている。


攻撃はスケルトンの攻撃にスライムの攻撃と手数が増える。


スケルトンスライムは攻守に優れた強敵なのだ。


強敵だが、今の4人で倒せない相手ではない。


「ホムラ、手を貸そうか?」


ガイモンが、ホムラに声を掛ける。


ホムラとライザーが後一戦自分たちで戦うといっていたが、2人だけだと少々危ない相手だ。


先ほどは次も2人で戦うといっていたが、相手が悪い。


「いや、いい。試したい技もあるんだ。」


「だな。」


ホムラとライザーが纏うオーラが膨れ上がっていく。


本気で戦うのだろう。


「分かった。危ないと判断したらすぐに割って入るからな。シキも準備をしておいてくれ。」


「えぇ。分かったわ。簡単にやられないでよね。」


ガイモンの指示にシキも弓矢を構えオーラを纏う。


スケルトンスライムもこちらを敵と認識したのか斧を振り上げて突進してくる。


ピチャ。チャッチャッチャ。


スケルトンスライムが足を運ぶたびに地面にスライムの水音が響く。


スライムに纏わり付かれたスケルトンはなぜか動きが機敏になる。


書物では読んだことがあったが、迷信だと思っていた。


寄生したスライムがスケルトンの動きを補助するなど書かれていても信じられない、スライムが寄生している分動きが遅くなると思っていた。


それに、スライムはスケルトンの動きを補助するだけで無く通常のスライム同様に触手を伸ばし取り込もうとする。


スライムに強く拘束されるとやっかいだ。


そうならないためにも、2人のうちどちらかがスライムに触れられた瞬間割って入る。


2人の動きをよく観察しながらガイモンもオーラを纏いいつでも魔法を放てるよう準備する。


さて、ホムラとライザーはどう戦うのか。


いつもの戦い方だとライザーが身体強化して前に出て魔物を取り押さえて、その隙をホムラが叩くのだが、ホムラにその気はないようだ。


新しい技を試したいといっていたが、それに関係あるのだろうか?


「ライザー俺が前に出る。」


「えっ。おい。」


自身に強化魔法を掛けて、前に出ようとしていたライザーの出鼻をくじくホムラ。


突然のホムラの突進に一瞬遅れて後を追うライザー。


「斧の攻撃は受けるなよ。後、触手にも注意だ。」


前をいくホムラに最低限の注意喚起をする。


「分かってる。」


ホムラの両手剣が赤い炎に包まれる。


大きく斧を振りかぶってスケルトンが近づいてくる。


スケルトンの斧を交わすのは簡単だが、接近したスライムの触手を避けるのは難しい。


「極楽鳥炎華(ゴクラクチョウエンカ)」


ホムラが軽々と斧を避け、炎を纏った剣で連続攻撃を繰り出す。


同じところに留まっての攻撃だとスライムの触手攻撃をかわせないのか、スライムに攻撃する的を絞らせないためか、ホムラはスケルトンの周りをステップを踏み翻弄するように立ち回る。


新しい技だ。


剣が突き刺さるたびに、ジュウっと水が蒸発する音が聞こえ、蒸気が上がる。


スケルトンスライムはホムラを敵にターゲットに決めこちら側に背を向ける。


スライムが一瞬蠢いた。


「来るぞ。」


ガイモンの指摘とほぼ同時にスライムの触手が体から何本も伸びホムラへ襲いかかる。


「狗尾炎技(えのころえんぎ)」


また、見たこと無い技だ。


剣を器用に振り回し攻撃をいなしていく。


うまい。


振るわれる力に逆らうことなくいなす剣は柔らかく、風に揺らめいているようにも見える。


振るわれた剣の軌跡には炎が取り残されていて綺麗だ。


そのまま、足を運んでスライムの攻撃範囲から離れる。


スケルトンスライムが来た方向にホムラが距離を取ることで、挟撃する形が出来上がる。


ホムラが付けた傷は何事も無かったかのように修復されている。


ホムラに追撃を掛けようとするスケルトンスライムはライザーから見れば背中ががら空きだ。


「なんだよ。その技は、初めて見たぜ、ニードルショット!」


ライザーが遠距離から攻撃を放つ。


素早く突き出されたランスの先から金貨ほどの気弾が飛んでいきスケルトンスライムに突き刺さるが、スケルトンの骨まで達しない。


「チッ。」


ライザーにスライムの触手が飛んで来るが小さな盾で上手く弾き返す。


2人とも高火力の攻撃を繰り出すが、スケルトンスライムにダメージが入っているようには見えない。


スケルトンスライムを倒すには、一撃でスライムの体ごとスケルトンを切り倒すか、スケルトンの肋骨を貫通させてスライムのコアを壊すかだ。


一撃での突破が難しければ、連続攻撃でスライムのジェルを吹き飛ばして防御力が下がったところでスケルトンを倒し、スライムを倒すのがセオリーだ。


ライザーが風属性の使い手だから切り刻んだスライムの体を飛散させた破片がまた合流する前に倒しきる必要がある。


2人だと手数が足りないか・・・。


これ以上手間取るようでは、介入したほうがいいだろう。


「シキ。次の攻防で仕留めきれなかったら、入るぞ。」


「えっえぇ、そうね。時間を掛けるべきじゃ無いものね。」


その声が聞こえたのか、ライザーがホムラに声を掛ける。


「ホムラ。次で決めるぞ。ガイモン達の気は長くないようだ。俺がスライムを蹴散らす。ホムラは、スケルトンかスライムのどちらか狙える方を倒せてくれ。」


「分かった。ライザーに合わせる。」


ライザーとホムラがそれぞれの武器にありったけのオーラが込められていく。


ホムラとライザーに挟まれたスケルトンスライムはどちらを倒すべきか2人の出方をうかがっている。


十分にオーラを込められた槍は風を纏い輪郭がぼやけていく、そしてホムラの剣はより高温になっているのか剣の頭身が赤からオレンジへと変色して周囲の温度が少し上がってくる。


洞窟内は少しひんやりしていたが、暑くなってくる。


その温度に反応したのかスケルトンスライムはホムラの方へ走り出す。


「そうはさせるかよ。」


ホムラが準備している魔法はとどめの魔法だ。


それを先に打たせるわけには行かない。


「スラストハリケーン」






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