第141話 封印の祠へ

「セイ。」


「ハッ。」


道中に現れたスライムをホムラとライザーが難なく討伐する。


「お疲れ様。そろそろ私達も戦うわ。もう、勘は戻ったでしょ。」


「いや、後一戦だけいいか?以前より体が軽くて感覚が違うんだ。」


「そうだな。お前らどれだけ修行したんだよ。ありがたいが、体の変化について行けない。」


ホムラとガイモンは自身の急激な成長に違和感があり、しばらく戦闘を引き受けているが、まだ自身の体の感覚に成れないようだ。


「そう、なら、後一戦任せるわ。修行も頑張ったけど、ねぇ。ガイモン。」


シキの含みのある物言いにガイモンはすぐに心当たりにたどり着く。


ガイモンとシキと同じことを感じていたようだ。


「あぁ、そうだな。新種のトレントと将軍バッタを多数討伐してから、飛躍的に強くなった気がする。これもシープートさんのおかげだな。」


「将軍バッタはおいといて、新種のトレントはそんなに強かったのか。そして、そのシープートさんは、更にその上をいくと・・・。俺もシープートさんの戦いぶりを見たかったな。」


「今更後悔しても遅いぜ、ホムラが振らなければ今この場にいただろうからな。」


戦闘を受け持っているホムラとライザーが自然と前になり、シキの後ろにガイモンがいる。


シキの前で、ライザーがホムラに肘でつつく。


「おい。もうその話は勘弁してくれよ。俺も後悔しているんだよ。」


「ほう。ガキのホムラが色気づいたか。」


「ちょ、うるせぇ。俺もお前も年はそう変わらないじゃないか。」


「ホムラとライザーは、王都の騎士団交流戦でセンリ様の戦いを見たことあるんだろ。いいじゃないか。俺はそっちの方が気になる。」


「ハハハ。あれは、全く参考にならないよ。あれでは実践を意識した戦いじゃ無くて、指導だったな。観客達は喜んでいたが、俺の目はごまかせない。名だたる各町の騎士団長がそろっていたが、やっぱり王都の騎士団長は格が違ったね。底が知れなかったよ。」


「何知ったような口を叩いているんだよ。俺たちもその喜んでいる観客の1人だったじゃ無いか。」


「おい。バラすなよ。」


「フン。知ったような口を叩くからだ。」


「ねぇ。センリ様とシープートさんってどっちが強いと思う?」


「そりゃ。センリ様だろ。」


「あぁ。センリ様だな。」


「愚問だな。」


「まぁ、そうよね。比べる相手が悪すぎたわね。じゃぁ、センリ様と魔王だと?」


「それもセンリ様だ。」


「考えるまでも無いな。」


「だな、センリ様だな。シキはセンリ様の強さが分かっていないな。何たって、ドラゴンセンリだぜ。人族で唯一ドラゴンと呼ばれる人が、魔王に負けるはず無いだろう。魔王が攻めてこないのはセンリ様と戦わないためだって噂さだぜ。」


ドラゴンの称号とは、人が決して勝てないとされる魔物に付けられる称号のことで、もし名前にドラゴンの名が付く魔物と出会えば全力で逃げることが推奨されている。


前勇者パーティーの現特記戦力No.1のセンリには数々の偉業が存在するが、一番大きな偉業は、単独でドラゴンを討伐したことだ。


ドラゴンの定義は人が決して勝てない相手だが、センリはそんな定義を根底から覆した存在であるのだ。


偉業を達成した超越的な強さを持つセンリを畏敬の念を込めてドラゴンセンリ呼ぶ人がいるのだ。


そんなセンリ様の強さは人が到達しうる最高到達点だとされている。


「やっぱり、そういう認識なのね。流石にセンリ様より強いとは考えにくいか。センリ様が魔王と戦ってくれればいいのに・・・。」


「だよなぁ。呪いさえ無ければ、俺たちがこんな苦労せずに、サクッとセンリ様が魔王を倒せるんだろうな。」


「まぁ。誰もがそう思うよな。もしセンリ様が西国から出られたらってな。」


「そうだな。センリ様が強いだろうな。だが、どうもな・・・」


「どうもなんだよ。」


「いや。そのセンリ様がいても前回パーティーの勇者は命を落としたんだろ。」


「あぁ。前魔王は歴代最強だからな。それに、センリ様も当時はそこまで強くなかったからな。」


「今の魔王になってから誰も魔王と戦ったことがない。魔王の強さもどんな固有魔法を使うかも分からない。もし、前魔王と同等かそれ以上の強さならって思うとな。」


「ライザー心配しすぎだ。本当にどうしたんだよ。お前らしくない。」


「俺は、ただ誰にも死んで欲しくないんだ・・・。」


「あらあら、ライザー、復帰してから本当に変よ。照れるじゃない。普段ならもっと前を向いて強くなることに貪欲だったのに・・・。もしかして、アスタロートが強かったのが堪えたの?確かにあいつは強かったけどあたし達の成長速度には付いて来られないわ。そのうち勝てるわよ。」


「ふん。お前達は、あいつの本気の一撃を受けていないから、そんなこと言えるんだ。」


「何よ。あたしだって殴られたわ。お尻が少しへこんだんだから。」


「あぁ。こっぴどく全員殴られたな。」


「いや、殴られていない。俺たちは見逃されたんだと思う。俺たちが生きているのがその証拠だ。盾の上から間接的に殴られた俺が瀕死で、直接殴られたシキが最初に目覚めただなんておかしい。明らかに相手の実力に合わせて力を調整したと考えた方が、辻褄が合う。それに、俺に向けた一撃だって本気かどうか分からない。アスタロートとの戦いは、センリ様と騎士団長の戦いに似た感覚がある。それに、ビビンチョ町でもアスタロートと戦闘になったそうだが、誰も死ななかったらしい。明らかにおかしい。あの実力者なら死人がでてもおかしくない。」


「まぁ、確かにそうかもしれないな。だが、かもしれないだ。そして、それはもう過去の話で、俺たちは生きている。なら、今できる最善を尽くせばいい。ライザーは何が言いたいんだ?」


「俺たちは、もっと強くならなければいけない。それこそセンリ様のように・・・。」


「なんだ。いつも通りじゃん。」


「ライザーは考えすぎたのね。ベットの上じゃやることがなさ過ぎて、普段使わない頭を使いすぎたのね。アスタロートが実はもっと強いだって、そんなわけ無いじゃ無い。きっと知将が瀕死だったから急いで帰ったのよ。ビビンチョ町は、南の方では有名なバクマン騎士団長とポメラニスがいたんでしょ。あの2人なら強いし、打ち倒せなかったとはいえ、追い返したんでしょ。あの2人で追い返せたんなら、今のあたし達だったら勝てるわ。次会ったら絶対にあたしがギッタンギッタンにしてあげるんだから。ほら、奥に魔物がいるわよ。しっかりしてよね。」









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