第34話 vs騎士団
「ポメラニス。消耗戦だ。連携してアスタロートを追い詰める。奴に攻撃する隙を与えるな。手数で攻め続け隙を突くぞ。先ほどの技でしばらく俺の技の精度は落ちる。ポメラニスお前主体で攻めるぞ。背中は任せろ。」
アスタロートがまだ攻撃を仕掛けてきていないのは、二人の連携で攻撃する隙を与えていないからだと思っている。が、実際は相手を傷つけずに無力化する方法が分からず逃げ惑っているだけなのだ。
「はい。分かりました。全く、私が作ったチャンスを無駄にして、次の隙はもっと火力の高い技をお願いしますね。」
「ハハハ。無茶を言う。よろしくお願いしますよ。」
ポメラニスは、眼鏡の位置を整えて返事をする。
先ほどの攻撃がバクマンの最高の技であったが、最大火力ではない。
戦闘中にいくらかのオーラを消耗していたため、その分火力が下がっていたのだ。
ポメラニスが要求した火力の高い技は、言い換えると前衛をポメラニス自身が出るからオーラの消耗を抑えて隙が生まれた際に先ほどよりも高火力の技を打てるようにしておけということだ。
バクマンの火力を上げる行為は、ポメラニスの負担が増える。
ポメラニスの顔が引き締まる。
決意に満ちた顔をしている。
分が悪い戦いなのは気づいているのだろう。
ポメラニスは先ほどの攻撃したときに理解した。
今の火力ではこのアスタロートにダメージを与えられない。
だが、アスタロートはポメラニスの攻撃を無視することは出来ない。
無防備なところに攻撃してもダメージを与えられないのではなく、オーラ武装の上からダメージを与えることが出来ないのだ。
アスタロートの斧を掻い潜ってもオーラ武装がアスタロートを守る。
翼を攻撃したときに、その硬度に突破は難しいと感じた。
オーラ武装で相手は身体強化効果もある。
ポメラニスだけで押さえられるような相手ではないが、押さえられなければ勝てないのも事実だ。
アスタロートは、余裕だと感じているのか攻撃を仕掛けてくる気配はない。
攻撃を仕掛けに行かないのは、攻撃の仕掛け方を知らないだけだ。
ポメラニスは、攻撃してこないことを良いことに自身がまとえるだけのオーラを十分まとい、全身の身体強化に使用する。
体からは、青い水のオーラをまとっているのがよく分かり、剣には水をまとっている。
火事場の馬鹿力なのだろうか、ポメラニスは自身の身体強化の出来の良さを感じている。
最後に、右手に剣を持ち、左手に水の剣を生み出す。
連撃を重視した戦闘スタイルだ。
来る。
アスタロートがそう感じたときには、ポメラニスは走り出していた。
走り出したポメレニスは、水しぶきを上げながらバクマンの爆破でえぐれた地面を平然と駆け寄ってくる。
バクマンは、離れたところから様子を見ている。
練られたオーラは、アスタロートほどではないが戦闘開始直後よりも少し多いように感じる。
正真正銘バクマンの全力のオーラだ。
手をかざしている仕草から牽制はしてくるだろうが、先ほどのように爆発を靄をまき散らしたりしてくる様子はない。
「流水舞々剣!」
軽やかなステップを踏み周囲に水しぶきををまき散らしながら攻撃してくる。
攻撃速度は、速いが十分対応できる。
一撃、二撃、三撃、ポメラニスの攻撃を防いでいくが、先ほどより動きにくい。
体は軽いのに先ほどより動きにくい。
動きにもたつくアスタロートに対して、ポメラニスは軽やかに動き回る。
なぜだ。
一瞬混乱するが原因はすぐに分かった。
脚がとらわれているのだ。
爆破によって掘り返された地面は柔らかい、それに対してアスタロートは蹄の脚に高身長で体重もそれなりにある。
移動の際に、蹄が地面に食い込み思うように動けていないのだ。
ポメラニスの攻撃は、留まることをしらない。
アスタロートの周りを回るように走り回りながら仕掛けてくる攻撃を防ぐことは簡単だが、時折水を掛けてきたりと小賢しいことばかりしてくる。
その水で足下が更に悪くなる。
「くそ。」
体はものすごく軽くもっと動き回れるはずなのに、思うように動けない。
その苛立ちを斧に乗せて、ポメラニスの攻撃を力強くはじく。
力任せに斧を振るったにもかかわらず、ポメラニスは吹き飛びもせずに空中を二回転ほどしてきれいに着地する。
インパクトの際に威力を殺すために後ろに飛んだにしては、上手く飛びすぎだ。
あらかじめ、そのようにするつもりだったのだろう。
ではなぜ後ろに引いた。
その答えを導くよりも先に体が動く。
背後にはバクマンが腕を突き出しており、手のひらの中心に爆発寸前のオーラの靄が凝縮され強い光を放っている。
アスタロートに気づかれたことでバクマンは舌打ちを打ながら、アスタロートに触れようとしてくる。
バクマンの魔法は爆発に特化しており、爆発する靄を出して爆破させる遠距離と霞を手に持って触れた場所を爆破させる近距離攻撃がある。
同じオーラ量でより高火力を出せるのは、近距離攻撃の方だ。
バクマンの狙いは、アスタロートに触れてのゼロ距離爆破だ。
背後からの奇襲は、避けることが出来たが当然のこと追撃に来る。
バクマンの手には、ビー玉サイズまで圧縮した靄が強い光を未だに放っている。
アスタロートは本能で理解する。
あれに、触れられるとまずいですね。
バクマンがアスタロートを捕らえようと手を伸ばしてくるがそれを躱す。
不意打ちの初撃を躱したアスタロートに触れるのは至難の業だ。
身体能力の差からそれは不可能に近い。
何回かの攻防を重ねるごとにバクマンとアスタロートの距離が開いてきている。
が、バクマンは一人で戦っていない。
アスタロートがバクマンから離れきる直前に、アスタロートの肩に針で刺されたようなかすかな痛みを感じた。
「水流針矢。」
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