第33話 vs騎士団

アスタロートは爆発に包まれたアスタロートは強化した翼で自信を守る。


爆発の衝撃は強いが翼で受け止められるものだったが、翼で防ぐには四方八方からの攻撃はあまりにも範囲が広すぎた。


爆風や爆破が翼の間をすり抜けてアスタロートへあたる。


アスタロートは衝撃を受けた個所に力を込めて耐えると次第に痛みを感じることはなかったが、次々と迫り来る爆発の閃光で目を閉じているのにかかわらず視界が真っ白になり、爆発の轟音もあいなって、平衡感覚を失い爆発の衝撃で地面に倒れてしまう。


爆発が途絶えても視界はすぐに戻らず耳鳴りも酷くその場でうずくまり回復するのを待つことしかできなかった。


爆破の衝撃波もそれ程つらいものではなく、魔王の攻撃に比べると天と地の差がある。

差があるのは、魔王が攻撃に込めた魔力量とバクマンが込めた量に大きな違いがあるからだ。

放てる魔法の火力は、身に纏えるオーラの総量で決まる。

纏えるオーラの量が少なければ一撃に込めれる火力は低く、纏える量が多ければその火力も高くなる。

戦闘における勝敗の要素は3つあり、身体能力、纏えるオーラ量、魔力をオーラに変換する速度が大きく関係する。

変換速度は早ければ早い程、戦闘中の隙が無くなり戦闘継続時間も長くなる。


視力が戻り、耳鳴りが鳴りやんだときは、爆発の煙がなくなったころだった。

ウォーターシールドで囲まれたこの場所は風通りがなく爆発の煙もなかなか消えない。

自分の体の具合を確かめれるほどには視界が晴れている。


ん?


なんだこれ。


手には氷のガンレットが装備してある。

これはいつも通りだが、爆発を耐えるために力を込めた場所に氷の鎧がついている。

フルーレティーは手に持っている斧もそうだったが、この体に最初から備わっていた能力なのだろうか?

魔法を放つ際は、イメージしたものが魔法として放たれるが、斧やこの防具はその限りではない。


まだ氷の防具がついていない二の腕に力を入れてみると、じわじわと氷の鎧が生成されていく。

力を籠めると、そこからオーラがにじみ出て鎧になっているように見える。

全身に力を籠めると徐々に氷の鎧が生成される。

なるほど、これは使える。

上半身は軽装な鎧だが、下半身や腕はしっかりと覆われている。


「バクマン様、戦闘準備を・・・。」


斜め上のほうから聞こえる。

自信の体ばかり気にしていたが、爆発で地面がえぐれている。

なるほど、穴掘りの貴公子と言われていたがその理由はこれだな。


周囲は隕石が落ちた後のように窪んでおり、爆発の熱で台地が焦げている。


「まさか。直撃したんだぞ。」


バクマンの声も追って聞こえてくる。


霧は、晴れてきており、ポメラニスと目が合う。


「オーラ武装持ちです。」


「くそ、厄介だな。」


バクマンが悪態をついているが、なるほどこれはオーラ武装というのか。

オーラ武装は身体強化魔法の上位互換と考えられており、上位の実力者の中でもごく一部の人にしか使いこなせないものだ。


バクマンも立ち上がりポメラニスの隣に立つ。

戦闘開始前に比べて少しだけ霧がかかっているように感じる。


「おいおい。ぴんぴんしてるじゃねぇか。傷つくねぇ。結構本気の技なんだけどね。」


バクマンは強がっているが、本当は強がっており自身の奥の手をほとんど無傷で受け止められたことに衝撃を受けている。


「結構痛かったですよ。私は、争いに来たわけではないので、もうやめにしてもいいのですが。」


アスタロートはバクマン達に言葉でそう告げるが、内心は新しいものを買ったときの子供のように今の氷の武具を身に着けて戦ってみたい気持ちがあり、試したくてうずうずしている。


「おいおい、冗談はよせよ。言動と行動が一致していないぞ。」


そんな、戦いたいアスタロートの表情を見てアスタロートと再度戦うことを決心するバクマン。

勝算などないが、騎士団としての職務を優先する。

バクマンもオーラを纏いだす。


「おかしいですね。私は戦うつもりはないのですが・・・。ほら、私からは攻撃していませんし。」


「そんな表情で言われても認められない。それに、お前は懸賞魔人で俺は騎士だ。」


アスタロートは、自身の武具の性能を試せるいい機会が訪れたと表情を緩ませている。

異世界転生のほとんどの主人公は強い能力を神様から授かっている。

強い能力をもらえなくても、自身の能力を駆使してなりあがっていくものが多い。

明日太郎は売れっ子の俳優ではあったが、特別な能力があったわけではない。

前世で見た異世界転生ほど異世界は優しくないと感じていたが、どうやらかなり強くしてもらえたようだ。


勇者の仲間にならなければいけないのに、魔王側の東国と関係を持ってしまったし、勇者側の西国からは懸賞魔人として指名手配されているが、今のアスタロートにとってはそんなことは些細なことで、新しい武具を試すことが最優先事項となっている。


「あなた達がその気なら仕方ありませんね。」


アスタロートは、少しうれしそうに答え、オーラを練り始める。


バクマンがオーラを練り終わるまでにアスタロートも自身が纏えるだけのオーラを纏う。

バクマンよりも多い量のオーラを纏っているのにもかかわらずアスタロートはバクマンよりも先にオーラを練り終わる。

アスタロートは、何度目かのオーラを練る行為で確実にオーラを練る速度が速くなってきている。


オーラ量、オーラを練る速度、身体能力でもバクマンはアスタロートに負けている。


この3つで劣っているバクマンでは、アスタロートに勝てないが、それは1対1での評価だ。


この場には、ポメラニスもいる。


ポメラニスは、ビビンチョ町の騎士団長でバクマンは、騎士団の支部からビビンチョ町の視察に来た騎士で、共闘するのは今日が初めてである。


お互いのことをよく知らないが、バクマンはポメラニスのアスタロートの隙を突いた一撃を見てからポメラニスのことを高く評価している。

知り合って間もないが死線になるであろうアスタロートとの戦いで背中を任せるくらい信頼している。


ポメラニスは周辺地域最強の騎士として噂されているバクマンのことを信頼しており、バクマンのことを信頼した立ち回りをしている。

残りのオーラをすべてつぎ込んだ攻撃も防がれたらバクマンが必ず自分に合わせてくれると信じていたから出来た行動だ。


「ポメラニスこのまま連携して討伐するぞ。持久戦だ。」


「はい。」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る