第30話 vs騎士団
パキパキパキ。
氷の壁がひび割れて、ところどころ欠けている。
バクマンの腕からは、モクモクと煙が出ている。
爆発魔法だ。
「ほう。今の攻撃をよく防いだな。氷の魔法か。アスタロートは腕利きのモンクだと聞いていたから私の爆破魔法と相性がよさそうだと思っていたのですが、どうやらそうでもないそうですね。」
「俺は、敵対する気はないんだけれどね。」
上を見ると、水の膜が周辺を覆っている。
水の膜は、水面のようにうねうねと波が立っており、地面に水面の影が映る。
どうやら、閉じ込められたようだ。
破壊しての突破は可能なのかわからないが、二人を相手にするより逃げに徹した方がいいだろう。
もう取り返しがつかないことになっていそうだが、これ以上敵を増やしたくない。
二人には悪いが、何とか気絶させて逃げさせてもらおう。
バクマンの後ろを走っていた女騎士が剣に水を纏いながら攻撃してくる。
刀身の切れ味は水で強化されており、氷の壁を切り裂きながら攻撃してくる。
女騎士の動きは私より遅くこの攻撃を避けるのはたやすい。
バックステップで攻撃範囲から離れようとすると、突如、背後から強い光が差してくる。
先ほどの爆破攻撃の際に放っていた光と同じだ。
瞬時に飛びのいた瞬間に爆破音が周囲に響き渡る。
爆風にあおられるが、一回転して地面に降りる。
最初の殴りかかってきたときインパクトと同時に爆発が起こったが、離れたところでも爆破させれるようだ。
最初に拳にまとったオーラを爆発させて、拳を直接ガードしたら爆発に巻き込まれることを意識させておいて、今度は背後からの不意打ちでの爆破。
少し汚い手だが、かなり有効な攻撃だ。
だが、爆破前に必ず発光する。
注意すれば避けれないものじゃない。
この二人普通に勇者より強いんじゃないだろうか。
「ハハハ。今のも避けるとはね。俺は、近距離も戦えるが中遠距離のほうが得意でね。ポメスキー前衛は任せる。フォローは任せろ。」
「ポメラニスです。」
相手の陣形は決まったようだ。
前衛は、眼鏡の女騎士だ。
女騎士は、バクマンを守るように位置に立つ。
バクマンが両手を広げると、いくつものバレーボールサイズの靄が空気中にばらまかれる。
「俺は、オーラを空気中に自在に飛ばすことができ、離れた場所を爆破できる。ポメプー。奴をオーラまで誘導し、自身が爆発に巻き込まれないよう注意しするんだ。」
「ポメラニスです。私を犬の名前で呼ばないでください。」
周囲に、オレンジ色のオーラが漂っている。
俺がこのオーラに触れると爆発するようだな。
これは、なかなか厄介攻撃だ。
周囲を気にしながら女騎士と戦わなければならない。
女騎士の攻撃は避けるのはたやすいが、周囲を気にしながらだとなかなか難しい。
だが、よけるなら難しいが、動かずに受けて止めるのはさほど難しくない。
手を前に突き出し、魔力を込め、氷の斧を生成する。
氷の斧を生成したのは3度目だが、3回とも同じ形のものが生成された。
突き出した手の近くから徐々に生成される斧は芸術的で見ていて飽きない。
手に持つとそれは体の一部だったかのように扱うことができる。
不思議な感覚だ。
前世では、特殊な技能を持った役を演じる際はその訓練で苦労したものだが、訓練を重ねてできるようになる達成感もよいが、急にできるようになって思う存分扱うのも楽しい。
生成した持ち手の長い斧を無駄にクルクル回してから、構える。
相手の女騎士は、魔力を込めて剣に水を纏っていた。
その攻撃は氷の壁をバターのように切り裂いていた。
氷の壁は爆発でかなり脆くなっていたとはいえ、かなり切れ味が上がっているのだろう。
彼女の攻撃を真似て斧に魔力を込める。
斧は青白いささくれた氷に覆われ、白い靄が出てくる。
氷の斧を持っていても不思議と寒くはない。
「バクマン様。あの人は本当にアスタロートなのでしょうか?容姿はそっくりですが、聞いていた戦闘方法があまりにも違います。」
「そんなことは、捕まえてから分かることだ。あいつは、門番を捕食しようとしていた亜人だ。何者であろうと我々がやることに変わりはない。」
「いえ、私には、ビビッて倒れた門兵を介抱していたようにも見えたのですが・・・。」
「ハハハ。いくらビビンチョ町でも、そこまでのビビりではないだろう。」
「はぁ。そうだとよいのですが。」
俺が氷の魔法や氷の斧を使って戦うことに、違和感を感じたようだ。
アスタロートの情報が勇者と戦った時の情報だけならそう思われても仕方がない、勇者との戦闘では拳しか使っていないからだ。
だとすると、アスタロートは腕利きのモンクで伝わっているはずだ。
こちらとしては都合の良い話だ。
人違いではないが、人違いであると思ってもらえると助かる。
逃げ道を塞がれて、相手を気絶させて逃げるしかないかと思っていたが、まだ、説得の余地が残っていそうだ。
「だから、先ほどから言ってるじゃないですか。俺は、アスタロートではないです。それに、あの門番も、俺のことをアスタロートだと勘違いして気絶してしまったんですよ。そのままじゃぁ。苦しそうだったので鎧は外しましたが、それはあくまでも介抱のためで、捕食目的ではありません。」
バクマンが、腕を組んで考え始める。
「うーん。そうそう、そなたほど強い亜人がいるとは思えないのだが、貴公はどこから来たのだ?」
「3日前に窪地の外から来ました。」
とりあえず、フルーレティーに伝えたことと同じことを言う。
フルーレティーと話したことで分かったことだが、窪地の内側の人は外の世界をあまり知らない。
事実と違うことを言ってもばれる心配はないだろう。
「なっ。あなた、本当に窪地の外から来たの?あの山脈越えはかなり過酷だと聞くけれど、なるほど氷属性を扱うあなたには寒さに強いから、山超えも理解できるのだけれど、にわかには信じがたいわ。」
よし、喰いついた。
このまま、アスタロートと違うことを列挙して本人じゃないように話そう。
「俺は、氷属性の魔法に斧を使って戦う。アスタロートは、モンクなんだろう。容姿は似ているのかもしれないが、同じ種族なら似ていても不思議じゃないだろう。」
「それも、そうかもしれないな。だが、モンク使いであることは、伝聞でしかない。もしかしたら違うかもしれない。」
バクマンは、頭を抱えて悩みだす。
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