準備運動3

入学式が終わりクラスに戻って...


「さっきの新入生代表挨拶してたのって、あの子だよね!!」


「だよな、どっかで見覚えあると思ったら

同じクラスだったんだな!」


ん....?


一応、周りを見渡してみると

教室の廊下側の席に彼女がいた


塚越楓が...


同じクラスだったのか...


当然のように彼女の周りには女子、男子関係なくたくさんの人が集まっている


そりゃそうだ、同じクラスのアイドルだもんな...


俺には遠い世界すぎて、話しかけるのも気が引ける


「ちょっと、ねぇ」


後ろから不意に肩を叩かれ、思わず振り向く


顔を上げると...


「え? 塚越さん...?」


なんで、アイドルが俺の後ろに...?

なんか、俺やらかしました?


「今朝はありがとね」


...ん?

今朝...俺がしたことと言えば、

女の子が1人転んでたのを助け...


いや、そもそも助けたことに入るのかも怪しい気がするけど


まぁ、確認するか


「あの、俺たぶん塚越さんに朝会ってないと思うんですけど...」


「あ、私じゃなくて椛があなたに助けてもらったって聞いたから」


...あ、あの時の女の子と仲がいいってことか


なるほど、ようやく頭の中で情報が繋がった


「あ、あの時は当然のことをしただけなので

わざわざお礼とかは​────」


「...ありがとうございました」


さっきまで塚越さんの後ろに立っていた女の子...

朝、俺が助けた子が前に出てきてお礼を言う


ここは、まぁ返答はしないとな


「どういたしまして」


俺のお礼に、塚越さんと椛さん(?)の顔が笑顔に変わる


よかった、返答は間違えてないみたいだな


「それだけ言いたかったの、ありがとね!!」


塚越さんはそれだけを言い残し、2人1緒になって席の方へ戻って行った


やべぇな、アイドルの友達を朝に助けて

お礼されるとか、もう目立ってね?


その証拠に、クラスの人たちの視線は席に戻る塚越さんたちと、俺のふたつに分かれている


注目されて....




「おい、お前すげぇな」


一部始終を見守っていた集団の中から

黒髪で背丈もそれなりにある男子が話しかけてくる


「え? すごいって何が...」


「お前、まさか知らないのか?」


いまいち話の流れがつかめないんだけど...


たぶん、思わず困惑した表情になっていたのか

それを見かねた男子が再び口を開き


「その様子だと本当に知らないみたいだな

さっき塚越さんの後ろにいた、川井椛さんもアイドルだぞ」


「え?」


ちょちょ...ちょっと待て

椛さんもアイドル....ってことは朝アイドルを助けてしまったってこと!?


いや、人助けが悪い事だとは思ってないけど..


そんなことってあるんだ...




「俺は浅田翔吾だ お前の名前は?」


「あ、俺は..藤永凪」


誰かに名前を聞かれるのが久しぶりで、思わず少し戸惑いつつ、なんとか答える


「そっか、お前といれば面白いことに首を突っ込める気がするから、よろしくな!」


「あ、...うん」


んーー...?

これ、俺は一体どういう扱いをされてるんだ?


少なくとも目立たずに終えるはずだった

高校生活からはどんどん遠ざかってる気が...

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