日は沈む

第七話

 その者と再び世界で邂逅した日、〝日〟の王はどうしようもなくいたたまれない感情に溺れた。


 目の前で背を震わせて、なおも気丈に振る舞う兄の姿が胸を締めつけ、記憶に焼き付いて消えない。


 彼らの傍らで、ただ彼を見つめている「彼女」に、在りし日の面影は失せていた。


 彼女の心が死んだことを、ほれほれと目の前に突きつけられた感覚が頬を冷たく撫でた。


 朝夜の王と過ごした日々を喪った〝月〟の姫の心は、まるで抉り取られた民の心の臓のようにぽっかりと真ん中が空いていた。

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