▼006『自分達の至る地平』編
◇これまでの話
◇『▼第六幕』
◇序章
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《――白魔様のホストで言定状態に移行しました》
《ヤッホウ! そっちどう? 全員巻き込めてる?》
《その導入はどうかと思いますけど、全員言定状態に入れてますわ》
《ユニットしまむら、全員移行しております》
《え!? あ! アー! 入れてる!? 司書さんに、白魔先輩……? あ、どうも有り難う御座います!》
《わあいミツキさん御久し振り? ともあれ現状確認ね。
A子さん宜しく》
《Tes.、ミッション内容が介入上書きによる変更をされました。
ミッションハッキングです。
私共の構築した美しい――統計的主観です――そのようなミッションが、第一階層の踏破管理システム側から介入、結果としてミッション内容が追加されています》
《……つまり大空洞側からのハッキング? そんなこと普通にあるの?》
《こっちのミッションが、向こうの設定していた条件をほぼ満たしていたときに発生するときあるかな。
テツコさんが推測してると思うけど》
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《――テツコ様のホストで言定状態に移行しました》
《クッソ! 全員入ったな!? 久しぶりだなこんなミッションハッキング!》
《どのようなことだと推測しますか? テツコ君》
《こっちの想定していた踏破条件が外していたけど、結果として半ば当たった》
《おい、どういうことだ?》
《おや、ピグッサン君も観戦に?》
《違う! 朝、花壇の世話に来たらそっちの範囲デカイ言定状態に巻き込まれたんだよ!》
《おおピグ子、じゃあハコもいるのか》
《あ、ハナコさん、チワス……!》
《――御世話になっております。今回のは……、ミッションハッキングの事故ですか?》
《アーもう勝手に判断するなと言いたいが正にその通りだ。後で宙子に始末書出すが、その内容は典型的なミッション錯誤だね》
《踏破条件として、初心者パーティを組ませて行く、ってのは合ってた訳だ》
《そうとも。
ハナコ君達がアタックして開いたゴール地点。
それはかなりの上級者でなければ踏破出来ない条件だったから、今度はそこに初心者がアタックする。
上級者と初心者、両方が到達すれば、二重踏破が叶って踏破率は完全となる。
そういう推測だった》
《だが、――想定以上に大空洞は厳しかったということですね?》
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《クッソ厳しいんだけどね?
今回テツコさん、ミッションを作るとき、テツコさん基本的にいい人だから、前に私達がやったようなボスアタックが初心者に対しては無いだろうって判断したのよね。
だから、
・時間内に初心者パーティが未踏破地帯にランする。
こういうミッションを図書委員で用意して、条件が外れていても、また別のユニットがアタックすればいいか、って思ってたわけ。
普通、そうやってトライアンドエラーで正解導いていくし》
《でも……、違ったんだ》
《ううん? テツコさんの出した条件はアタリだったの。
でも今回のミッション、MLM側が用意していた正式な踏破条件には、こういうものもあったようなの。
・未踏破地帯に出現したボスを倒す。
つまり、無いだろうと判断していた二段条件だった訳》
《そしてMLMはクソだから、上級者に出したのと同難度のボスワイバーンを出して来た、と?》
《そうそう。だからテツコさん達が今回の踏破ミッションとして作ったミッションに対し、MLM側が介入して、そのミッションの”続き”を上書きした……、それが今回のミッションハッキングって訳ね》
●
《さあどうする?》
《どうするも何も、レベル6がトップの初心者パーティ二つですよね。
しかも片方はファッションパーティじゃないですか。
――テツコ君?》
《強制結晶化を進言するね。
手配、処理はこちらで責任をもって行う。
結晶化回数がキャラシの裏情報にカウントされてしまうかどうか、浅間神社と中洞自治体に交渉が必要だがね。
後、今回のコストについても補償しよう》
《それが普通でしょうねえ。
レベル12のボスワイバーンは、用意の無い初心者パーティが敵う相手じゃないですよ》
《じゃあ、お前ならどう指示する?》
《私だったら、この場にいる”うちの若い衆”を即座投入です》
《距離無効で効果発する”呪い”か”事象”で解決か》
《先輩風吹かせまくりでいいでしょう?
初心者パーティでは、絶対勝てませんからね》
《流石、きさらぎ総長、――ではハナコ様、どうされますか》
《あたしの処はもう決まってるようなもんだろ。
白魔が担当だから、そっち聞いてみたらどうだ?》
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《ハイ、じゃあ御意見募集。
――今、外では強制結晶化による脱出が可能になってるのね。
つまり、経歴とか何もかも傷がつかず、コスト補償もついて無事脱出ってこと》
《それを是とするか、ボスワイバーンを倒すか、でありますか》
《強制結晶化した場合は、どうなるの?》
《今言った通りのことになるかな。
つまりミッションは無かったことになって、でも皆は無事で、経験値なんかも貰える。
そしてコストは補償だから、費用とか返ってくるの。
――損はしないし、得もあるよ、って感じ》
《じゃあ、そうしなかった場合は?》
《――うん。ボスワイバーンと戦闘》
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《――ボスワイバーンと戦闘を望んだ場合、こちらが提示したサービスを拒否したということだから、補填などは一切行わない》
《おいおいケッコー厳しいな!》
《当たり前だ。
私達のミッションよりも先、MLMが上書きした”続き”を望んだからだ。
私達にもメンツはある。
――さあ、どう判断するのかね? 現場は》
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《――私は、勝てない相手と戦わなくていいと思う》
《――だよな? あたしも、ここで撤退していいと思う》
《うんうん。
堅実。
それ良いと思うね》
《…………》
《そちら、ミツキはどう思いますの?》
《――ええと、DE子さんは?》
《――うん。戦闘していいんじゃないかな?》
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《――コレ、こっちから見えてるの。向こうのDE子君達に伝わってますかね?》
《伝わってても変わらねえよ。
しかし梅子も牛子も流石だな》
《梅子選手と牛子選手が、ですか?》
《牛子はパーティ全体にとっていい方に舵を取る。
だけど今は他のファッションユニットも加わった複合パーティ状態だ。
だから判断の最後をしまむらに任せたら駄目だ。
絶対に撤退しなければならなくなる。
――しまむらのリーダーから考えたら、しまむらではボスワイバーンに絶対勝てないという判断になるからな》
《だから牛子君は、DE子君を残すように、しかしDE子君より先に、ミツキ君に問うたのですね》
《そうだ。
DE子が最後に残る場合、しまむらのリーダーの判断は最終判断にならねえ。
だからファッションユニットとして、もう一つの判断が出来る。
つまり撤退じゃねえ、――”私達はファッションユニットだから解りません。信頼出来る相手に任せます”ってな》
《成程! ちょっとした駆け引きだった訳ですね!
でも、そうだとすると、最初に梅子選手がネガティブな意見を言ったのも、意味深いですね》
《ありゃ梅子の本心だろ。
でもガチユニットであるエンゼルステアに所属する自分がそれを第一に言うことで、ファッションユニット側からも同意見の声が出しやすくなる。
つまりあの場においては、忌憚なく意見が出た上で、――DE子に任された、って訳だ》
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《DE子さん? どうして戦闘していいって、そう思うの?》
《うん。
まず自分はさ? マザーレスマザー? 母無き母? その人のことよく知らないけど、その人、この大空洞の管理してるんだよね?
それで踏破条件も作ってる。
だとすると、――クリア出来ない踏破条件を作るような馬鹿はしないんじゃないかな、ってこと》
《私達でもクリア出来るものだと、MLM側は思っている、と?》
《うん。
そうでなければ本気でクソだけど、まだ真偽解ってないから判断保留。
でも普通なら、初心者用ミッションなんだから、自分達でもクリア出来る余地がある筈だ、って思う。
そしてもう一つの理由が――》
《――クリア出来なくても、データが取れるということですわ》
《あ、そうそう。
そんな感じ。
牛子ちょっと先、御願い》
《あら、すみませんわね。
――つまりこういう事ですの。
今回、もし私達が失敗したとしても、それは今後、このクソミッションにアタック掛ける人達に対し、重要な情報となりますの》
《それは、結晶化してもいいってこと?》
《結晶化せず、クリアを狙うのが第一義ですわよ?》
《それは理想論でありましょう。しかし……》
《――この大空洞範囲に住む者であれば、大空洞の攻略と更新こそが大事であるということも、解っているのであります》
《DE子さん? ちょっといい?》
《何?》
《今日、ここまで来たんですよね?
必死になって勝ち負け探って、結果、私達は負けて、でも、その勝負が今、MLMのミッションハッキングで無かったことにされたんです。
そしてクソボスが送られて来た訳ですけど、普通は勝てない構成です》
《――敢えて聞きますけど、負けたら、どうするんです?》
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《うん。その場合でも、帰りにファミレスでも寄って、何か愚痴ったりしつつ、美味いもの食って騒ごうよ。
そうやって、次のアタック考えたりして、まだまだこれからさ、って信じようよ。
――付き合ってくれるよね?》
《――はい》
《付き合ってあげます》
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《フハ!
今年の一年は解ってんじゃねえか!
決まりだ!
やるぞ!!
低レベルパーティによる中級ボス攻略だ!》
《馬鹿ですねえ……》
《でもそういう馬鹿、嫌いじゃありませんけどね》
《おおっと、ではこれからエンゼルステアとしまむらの吶喊合同パーティによる第一階層裏ボス攻略となりますね!》
《全員、知恵を貸せ!
お前らがとっくに忘れたような低レベル。
装備品だってろくに無い状態で、しかも疲弊してほとんど拝気が残ってねえ無補給でレベル12ボスワイバーンを攻略する!
無茶な話だが、あたし達だったらいい方法思いつくだろうよ。
――考えろ!》
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《――言定状態を解除しました》
◇これからの話
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