▼004『世界が変わるたった一日のこと』編【07】
◇これまでの話
◇第九章
●
わあ、とミツキと梅子がDE子の方に駆け寄っていくのを、牛子は見送った。
身体がやや堅い。
ボスユニコーンと対峙したとき、ブレードの束頭を足で押さえ込むためにパワードハーネスの設定を大地基準にしていたせいだ。
ゆえにフリー設定として腰を曲げ、斜面に転がったオサフネブレードを回収。
鍔元のシャープナーを一度刃先まで走らせて、土を落とす。
そして、
……危なかったですわね。
ボスユニコーンのコーフンチャージはタスク30台を出してくる技だ。
そしてDE子が食らったチャージを見る限り、今回出て来たボスユニコーンの能力値は高い。
迎撃としてオサフネブレードのパイク運用を用いたが、押し負ける可能性もあった。
ゆえに、誘導したのだ。
●
「――牛子の誘導戦術、上手かったな。
ボスユニコーンのチャージはただでさえ強力だが、下手に左右に振られるとこちらも対応するためにスキルを追加させられる可能性がある。
だから、まっすぐ走らせた方が良いんだが、その誘導をDE子がやった訳だ。
そして一直線に走る相手の勢いに逆らわず、牛子がパイクで跳ね上げて飛ばす。
そういう流れだな」
「DE子さんが目を付けられてるのは解ってたものね。だから梅子さんが、とりあえず安全に走りきれるだけの術式を掛けて、DE子さんは囮専念、って感じね。
――ハナコさん的に、言うことはある?」
「牛子だな。アイツ、いつの間に全体の流れを把握出来るようになってやがったのか」
「流れ?」
「行動順番の把握だ。アイツがボスユニコーンにやったのは、インターセプトとしての介入だぜ? ボスユニコーンの行動順番を推測しておかねえと、出来ねえ話だな」
●
DE子は、改めての治療を斜面に座り込んで受けつつ、やってきた牛子に言葉を投げていた。
「――見事なもんだねえ。インターセプト」
「始めに貴方がチャージを食らうのと、あちらのユニット、トレントの彼の動きを見ていましたものね。行動順番の推測は出来ましたわ」
■行動順番
《素人説明で失礼します
行動順番は 約十秒間と計上されている1ターンにおいて 何度 そしていつ行動出来るかを示した数値です
種族などから生じる補正に 戦闘系スキルと 防御系スキル(防御・回避)の最も高い数値をプラスしたもので 10を越えるごとに行動機会が1回プラスされます》
「ああ、この01~20まで並んでるコレ?」
「ええ。10秒間を20で割ったもの、と考えると解りやすいですわ」
《この20単位を フェイズと呼んでいます
1ターンは10秒ですが 20フェイズでもある ということです》
「ちょっと解りにくいのは、1ターンは20フェイズ目からスタートして、01フェイズに向かって行きますの」
「加算式じゃなくて減算式なのが解りにくいよね……」
「クソルールだろ!?」
聞こえているらしい。
ともあれ一応頷いて、自分は己のキャラシを確認する。
「自分の場合、16フェイズと06フェイズに行動出来る、ってこと?」
「ええ、そうですわ。私の場合はINV18と09ですから、18フェイズと09フェイズに行動が出来ますの。
フェイズ表を出すと、こんな感じですわね」
「――で、ボスユニコーンとはいえ、第一階層に出てくる怪異物は大体が10以上のフェイズで行動出来ませんの」
その言葉に、牛子が何を言いたいか解った。
「――牛子は、こっちのキャラシの行動順番とかから、ボスユニコーンの行動フェイズを推測して、インターセプトを掛けた訳だ」
●
そうですわね、と牛子は頷いた。
「貴方の10フェイズ以下での行動順番は、06フェイズ。そこで貴方は跳び込んでいって、チャージに引っかけられましたの。つまりボスユニコーンの行動順番は05以下ですわね。
そして――」
と言った時だ。
横に居て、DE子の腕などを看ていたミツキが声をあげた。
「私のアレですね? トレオが憑ペナで行動順番03固定だ、って言ったアレ」
「ええ。あれは助かりましたわ。
しかしトレオ? 彼はボスユニコーンに追い付けもしなかったので、つまりボスユニコーンの行動順番は04以上。――つまり05か04フェイズですわね」
あとは簡単で、しかし難しい。
「問題だったのはインターセプトタイミングですの。05、04フェイズのどちらかだと解りましたけど、速ければパイクは見破られますし、遅ければチャージを食らってしまいますわ。でも、見破られるのとチャージの二択ならば、前者の方が安全ですわよね」
「じゃあ、先に来る05フェイズでインターセプトだ」
正解だ。
「推測はアタリで、同時行動になったのは幸いでしたわ。
ただ安全を考えてスタックは行わず、度胸で1スキル分稼いでますわね。
パワードハーネスも大地基準に設定して、防御姿勢で固定してますわ」
「固定って、あのチャージ食らって耐えきれるの?」
「パワードハーネスは防御状態になるとショック吸収の動作も行うので、つまり攻防一体という訳ですの」
結果として上手く行った。
しかし反省する処がある。
「でも実の処、ベストは、04フェイズ選択ですの」
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言われた意味を、DE子は考えた。
05フェイズよりも04フェイズで行動した方が良かったと、そういうことは、
……行動順番を遅らせた方が良かったの?
「そうなの?」
「ええ。よく考えて御覧なさいな。
パイクは迎撃用の武器なので、それを構えた私のフェイズでは攻撃が発生しませんの」
「御免、ちょっと解らない。
どういうこと?」
ええ、と牛子が嫌気も見せずに受け入れた。
彼女は表示枠を開き、フェイズ表を見せる。
05,04の位置に自分とユニコーンのアイコンをそれぞれ置いて、
「ボスユニコーンの行動順番が04フェイズだった場合、先行する05フェイズの私のパイクは見破られて、避けられますわ。
05フェイズでパイクを構えても、そこで私はユニコーンに攻撃出来ませんものね」
●
「アー、何となく解ってきた」
言う。
「パイクは迎撃用のカウンター武器だから、バレてかわされたら、04フェイズでボスユニコーンの攻撃を食らうかもしれないし、下に行ったこちらにボスユニコーンが向かう可能性も生じる訳だ」
その言葉に、牛子が頷いた。
「私が04フェイズを選択した場合、ボスユニコーンは、自分の行動順番が05フェイズでも04フェイズでも、パイクに気付かずチャージを掛けて来ますわよね。
でもパイクはカウンター用の武装ですから、構いませんの。
つまり私は、行動順番として04フェイズを選択してもノープロブレム。寧ろその方が貴女を危険に遭わせる可能性はありませんでしたわ」
一息。牛子が目を頭をこちらに伏せる。
「――行動は早い方がいい、というバイアスがとっさの状況で出てしまったのだと思いますわ。危険を生むかもしれない選択をしてしまって、申し訳ありませんわね」
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「……ヨネミ? 牛子さんが頭下げるとか珍しい……、って今撮った画像、私の見てる前で削除してくれる?」
「アッ、ヤベえ、つい習慣で……。アー消す消す! 手を伸ばしてこない!」
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何かいつもの空気感が戻ってきたな、とDE子は思う。
そして正面、頭を上げた牛子に、口を開いた。
「今、自分らは無事だし、起きなかった不幸に対して謝罪は要らないよ」
「うん。今回は上手く行った、でいいんじゃない?」
「……いえ、私の実力が高ければ、もっと良い方法があった、という事ですわ」
そう言った牛子が、言葉を続ける。
「反省ですわ。今回、”度胸”を使用しましたけど、今度こういうことがあった場合、スキルとしてではなく、己として勇気を持って対処しようと、そう思いますの」
●
成程、と己は思った。
牛子という人のキャラクターに、ようやく触れた気がする。
いろいろ背負い込もうとして、それだけの実力もある人。
……そこまで一人でやろうとしなくて、いいんじゃないかなあ。
と己は思ってしまうが、これを言った処で牛子にとっては否定でしかないだろう。
ゆえに自分は、別の言葉を贈った。
「――自分の方も、何かこっちで出来ることがあったらやるし、出来るようになっていくから、任せられる処があったら宜しく」
●
ミツキは、言葉を作るDE子の腕を取っていた。
脱臼の治療だ。斜面の上にいる白魔からの指示を表示枠で聞きつつ、彼女の言葉を聞いた。
「――リスクは分散していいと思うんだ。
実際、自分、あそこでユニコーンに追いかけられても、梅子の術式でハイになってたから、そこらへん一周出来たろうし」
でもまあ、
「二回、三回ってやられると、流石に走れなくなるから、テキトーな処でパイクやってくれれば有り難アアアアア――ッ!!」
「あ、御免なさい。
白魔先輩の言う通りにしたんですけど……」
『あ、オッケオッケ。
脱臼ハメるときって激痛だからね。その後は楽だと思う』
「――え? あ、ホントだ……。
動くし、スっとして楽……」
と左腕を軽く回すDE子さんは気付いていない。今の自分の言葉で、
「…………」
もうちょっとキツ目にハメといた方が良かったですかね……、と思った時だ。
トレオが、今更という感で、戻ってきた。
「――誠にすみません。全く、役立たずで……」
●
「男子は巫女じゃないから調査隊やってないんだと思ってた……」
「MLMに謁見出来ないのと、幾つかの加護が適用されないだけだよ」
「あとまあ、深度5まで行った上で自我が残ってる場合、憑現力も結構失なってペナルティだけ残る……、みたいな感じになるから、浅い階層で活動するのが普通ですね」
「僕達は、バイト代わりにやってるユニットなのです。
潜っても地下二階か三階?
そのくらい、というファッションユニットなのであります」
「ファッションユニット?」
「格好だけのユニットって事です。
正確には、MLMを目指さず、ドロップや資源採取を行ったり、各階層の待避所や拠点を運営するサポートユニットですね」
■ファッションユニット
《素人説明で失礼します
ファッションユニットとは ユニットの非公式区分の一つです
大空洞及び他各空洞の浅い階層で 採取 探索 などの比較的安全なミッションをこなし 収入を得ています
観光や余暇活動を行う場合もありますが それを主とした区分は レジャーユニット となり 別のものですので御注意下さい》
●
へえ、とDE子は頷いた。
トレオをよく見れば、彼もパワードハーネスを装備しており、かなり用意がいい。
「結構、気合入ってんね」
「うちは、親が過保護でありまして……」
「コイツん処、上砂川の顔役なんだよ」
「あら? じゃあうちやピグッサンの処と同様、立川ファーマーズエリアの管理家ですのね? いつもうちの父が御世話になっておりますわ」
「あ、いや、うちも常々、そちらの経営の巧さを聞いているであります」
「……今、何か社交辞令が始まってる?」
「建前とかそういうのじゃありませんのよー?」
いろいろ気遣い大変だ……、と思うが、ふと、疑問に感じることがあった。
「あれ? トレオ氏もヨネミさんも、自分と同じクラス?」
「そうだよ。土日明けたらヨロシク」
トレオも頷く。だとすれば、更にもう一つ、疑問が生じる。
「――トレオは、桜組じゃないの?」
深くは問わない。
だが、ああ、とミツキが頷くくらいには、意味が通じている。ゆえにトレオも木枝の右手で頭を掻いて、
「――うちなどが管理する立川ファーマーズエリアは、基本的に大空洞範囲内の自給自足を助けるための農地となっているのでありますね。しかし――」
しかし、
「……僕は、各空洞を絡めて、農地は農地としても、何か新しいことが出来ないかと、そう考えているのであります」
●
「――良いアイデアですわね、それは」
うん、と己も頷いた。
まだ大空洞範囲の生活など、何も解っていない自分だが、
「大空洞が発生してから結構経つんだから、何か新しい事を考えていいよね」
「そう言ってくれたのは、二人目でありますよ」
「? 一人目は、誰ですの?」
いや、と一瞬迷ったトレオが、ちょっと頭を抱えるようにして、こう言った。
「ピグッサンであります……」
●
「そうなの!?」
ちょっと驚いてしまった疑問詞に、トレオが頷く。
「実は僕というか、上砂のうちは、隣接するピグッサンの家の砂川とはライバル関係だったのでありますよ」
「そういう土地の関係って、ホントにあるんだ……」
「大空洞範囲という縄張りが決まったあと、自給自足のための農地管区が作られたのでありますな。
だから地主という訳ではなく、経営代表という感なのでありますが、いろいろ面倒なこともあって世襲的でありまして」
「だから上砂と砂川の住人の関係自体はフツーなんですけどねー……。
立川ファーマーズエリアという”大空洞範囲のライフライン”の立場になると、トレオやピグッサンの家のように、厄介な立場にならざるを得ない家が出てくるんです」
「コレ、牛子もそういう土地の管理家なんだよね? そっちはどうなの?」
「私の家の管区は、二人の管区よりも東、柏町の一角ですわ。
英国オクスフォードと中央大空洞自治体が”姉妹空洞”で協働締結した際、諸処研究のため、土地の管理権を交換したものですの」
一息。
「うちは女王陛下からの任命で、事業として飛び地的領地を治めている訳ですけど、対外的な問題など防ぐために、立川ファーマーズエリアの一角、という扱いなんですのね。
だから土地柄の因習や問題とは無関係ですわ」
「アレはそうだったんだ……。
どういう扱いかと思ったら」
「一応、生産物の八割は中央大空洞自治体に卸してますのよ?」
「じゃあ牛子の土地は問題無いとして、……トレオの処は、何かフクザツなんだね」
「はい。
――そのような感じで、僕は”如何に砂川に勝つか”という気風の中で育ってきたのでありますが、去年の半ば、ピグッサンに呼びつけられたのでありますな」
ああ、とヨネミが軽く空を見上げる。
嘆息着きで、
「うち、上砂と砂川の間にあるんだけど、近所のガストの駐車場にトレオ達が集まって来たときは、ぶっちゃけ抗争するのかと思ったよ、アレ。
”三校”に止められるかなあ、進学の悪い査定になったら嫌だなあ、とか思ったけどさ」
「ガスト、実家の方は無かったなあ……。
――って、それでどうなったの?」
「いや、敗北したのであります。
――人としての器で」
●
「ピグッサンは、当時、荒れてるだけの子供……、というイメージがあったのでありますが、会ってみたら、いきなりに、こう言われたのであります。
”お前、将来、武蔵路ファーマーズエリアをどうしたいんだ”と。
そしてあの人は、こう言ったのであります。
”あたしは、立川ファーマーズエリアを、外と商売できるようにしてえんだ”と」
いやはや。
「恥ずかしながら、”砂川に勝つことしか考えていない”とは言えなかったでありますよ。
外、商売、大空洞範囲の中、それも隣接するライバル家くらいしか視界に無かった自分にとって、あれは器の差を見せつけられたのであります」
そして。
「あの人は、生産力や、外への流通、市場や新品種の開発など、今、地上側で出来ることを伸ばし、正攻法でいくのでありましょう。
だとしたら自分は、やはり違う道を選んで対等になるべきであります」
●
《――ミツキ様のホストで言定状態に移行しました》
《ハイ、エンゼルステアで私とアドレス交換した人限定です。
――何か質問ありますか?》
《あの、面倒だからいきなり核心に行くけど、――さっきトレオが突撃するときに言ってた”あの人に振り向いて貰えない”って……》
《……うん。ピグッサンのこと》
《……あの? そのこと、ピグッサンは?》
《ピグッサン以外、皆知ってますね……。
ピグッサン、自分のことをそういう対象だって思う人なんかいない、って思い込んでるので……》
《どう見ても文系のトレントと、体育会系姐御肌のオークロードの、ロミジュリ系カポゥか……》
《ロミオが容易く折られるよね?》
《シェイクスピアに対して物理の検証はしなくていいんですのよ?》
《あの、ちなみにもう一つ、いいですか?》
《何ですの?》
《――トレオは、自分のそういうのが、外にバレてないと思ってます》
《Oh……》
《鈍感ヒロインに、逆鈍感主人公のラノベや漫画ってあったかな……》
《いや、あっても二人に対しては意味が無い。無いよ?》
《――言定状態を解除しました》
●
トレオは、同級生のダークエルフが振り向くのを見た。
「頑張って! いや、余計なことだとは思うけど、ホント、努力は無駄にならないって、中学の時に言われたし!」
「え、ええ、私が言うのも何ですけど、頑張ることにまず意味はありますわ」
「う、うん。頑張ってね」
応援がこんなに来るとは……!
そうとも、大空洞範囲の新しい農業、生産の道を探すことに間違いは無い。しかし、
……僕のピグッサンへの想いがバレてないようで安心であります……!
上砂と砂川には親達の因縁もあるのだ。
下手な噂をたてられては、あの人にとって迷惑であろう。
想いは秘めるが必定であります。
うむ、と頷いて、己は言った。
「――そのためにも、もっとユニットの一員として、役に立てるようになりたいものでありますなあ」
●
そうですわね、と牛子は、トレオの言葉に内心で頷いた。
彼が先ほどの戦闘中、使おうとした技がある。
……”BBB”といえば、ホーリィ・フォーサー系の聖術ですわね。
聖女が作るような仮想聖剣を、1ターンという短時間だが、自分の武装に宿す。
いろいろ条件は有るが、宿す武装のレベルについては、既にクリアしているだろう。
しかし、別の条件が、難しい。
……自分の正義を応援する声に対し、その一撃が応えるものであるかどうか。
曖昧な言い方だが、必要なものは明確だ。
己の意思と、それを応援する声。
そして刃を振るう決断力。
信じることも応えることも、それなりのメンタルが必要になる。だが、
「……足でまといになっていて、すまないであります」
このトレントは、自信を失っている。
●
DE子は、何となく気になったことを、表示枠に文字を書いてミツキに聞いてみた。
《トレオがミツキ達とユニット組んでるのって、何か、理由ある?》
《どうしてそんなことを思うんです?》
そうだなあ、と自分は昔を思い出す。
《始め、いい環境にいたとしても、自分が足手まといだと思って、……そこを抜けたりして、安全な環境に移動することって、あるから》
己は、”そういう経験”があってこそ、ここに来たのだ。
すると、ミツキが牛子にも表示枠を共有して、こう告げた。
《トレオは、私達とユニットを組む前に、三つほど”ユニット落ち”してるんです。
トレオ頑張るから、皆、いいよいいよってフォローしてくれるんだけど、本人はいたたまれないみたいで。
だからうちみたいなファッションユニットで、まずレベルやスキルを上げようね、ってことになってるんですね》
ミツキは”レベル”派だ……、と”今川焼き理論”に新派が加わったことを理解したが、今は言わないことにしておく。
ただ、難しい。
自分などは、今。回りが凄すぎたり変だったりするから、自分の価値を貶めずに済んでいる気もするが、
……そっか。
トレオのことを、凄いと思った。
●
自分は、いろいろなことや、周囲の優しさに辛くなってここに来てしまったのだ。
だがトレオは、ここで、同じようなことがあったとして、三度も逃げたとして、
《でも、トレオは”辞めない”の、偉いね》
辞めてここに来た自分は、トレオを支持しようと、そう思った。
●
うん、とミツキが小さく笑うのを自分は見た。
《私もそう思います。だからまあ、ピグッサンとのいろいろも気になるし》
《後半が大事ですわね》
確かに、と三人で顔を見合わせて和んでいると、声が来た。
『――そろそろ雑談終わったか? そっちのユニット、どうする?』
『あ、ドロップの自動回収は出来てるので、そろそろ出ます!』
ああ、とミツキが立ち上がる。
「……コレ、今回はミッションの訳有りリタイアってことで、組合に始末書出した方が良いですねー」
『採取系で第一階層だろ? あたし達の方で在庫有るから、やるよ。
必要な量言え。
大体、今回のトラブルはうちの聖女の責任もチョイあるしな』
『いいんですか!? 助かります!』
「おうおう。遠慮ねえのか良いな。気に入った」
という声が、斜面の上に来た。
振り仰ぐと、確かにハナコが立っていて。
「ま、そんな感じで。お疲れだったな。
――DE子? お前のレベルアップ処理、まだ後残りがあるから片付けるぞ? こっち来い」
◇これからの話
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