第110話 ルシファーの記憶

 莉里亜は涙を見せるとルシファーの記憶を全員に伝える。それはルシファーは人間の争いを白龍に止めてほしいとお願いしたという話だった。


『龍王である白龍様、お願いです!!人間の争いを止めてください!!』


『お前は、悪魔の子か??もしくは黒魔女の使いの者か??』


『ルシファーと申します!悪魔の器の名前をもらったものです!!!』


『そうか…残念だが、私にはそんな力を持っていない。人間の争いは人間で解決してもらわないと行けない』


『そんな…!!お願いします!!お助けください。もう、黒魔女様の辛そうな顔を見るのは嫌なのです…!』


 悲しそうな顔を見せるルシファーだが、白龍は何も出来ないことに困ったような顔を見せると、別の生き物気配を感じ、顔を上げる。


『誰だ!!』


 そこにいたのは武器を持っている大量の人間の姿。ルシファーは人間を見て奥歯を噛みしめる。こんな人間たちがいるから、争いが終わらないというのに、彼らが今何を考えているのかは、今のルシファーにはわからない。


『どうしてここにいるんですか?!ここは龍王である白龍様の聖地だとわかっているのですか?!』


 ルシファーは声を荒げて訊くと人間たちは何かをブツブツ呟いて近づいてくる。すると一人の男が震える声で訴えるように声を出す。


『聖女様が、白龍を殺せば…!この争いも、終わるというのです!!だから、死んでください!!白龍様!!』


 全員の手には生き物を殺せそうな武器などを持ち合わせている。完全に白龍を殺しに来ていることを完全に理解したルシファーは、自分の持っている剣を取り出す。

 人間どもは白龍に向かって駆け出すとルシファーは人間を倒すことを考える。だが、黒魔女が人を愛しているため、人間を殺さないように対処をする。


『止めてくれ!!!白龍を殺せば、黒龍が暴れてしまう!!!!』


『黙れ!!!!邪魔するなら、お前も殺してやる!!!』


『やめろ!!!!小僧お前はここから離れなs!!!!』


 白龍は声を上げようとすると大斧が白龍の首を切断をする。その姿にルシファーは目を見開く。強く、龍王である白龍を躊躇することもなく切断するその者の姿にルシファーは目を見開く。


『白龍様!!!!』


『今だ!!!その小僧も殺してしまえ!!!』


 大斧を持った男は声を荒げると人々はルシファーに向かって刃物や槍を突き刺していく。串刺し状態のルシファーは全身から血が溢れていく。


『どう…して…!!!』


 血溜まりの中で倒れ込むルシファーは微かに呼吸をし続ける。そんなルシファーに大斧を持った男はじっと眺めている。


『こいつ、魔族か…?珍しいな、こいつは…いいになるな…!』


 嬉しそうにしている彼を虚ろな目で見つめるルシファーはそっと意識を手放す。目を冷ました時にはルシファーはあの血溜まりのところにいた。だが、身体に実体感が無く、自分が死んだことを理解する。先程まであった自分の体が無いことに、かなりの時間が経ったのだと理解する。そして今どのような状況なのか理解したいために、ルシファーは走り出す。

 向かったのは人間たちが集まっている場所。その場所には黒魔女が取り抑えられている。黒魔女は人間たちの拘束を振り解こうと藻掻いているが人間たちは離すことはしない。


『貴様ら!!!良くも白龍を殺したね!!!!』


『君は黒魔女様でしたか。これは驚きましたね、魔界から姿を見せない黒魔女がこのようなところにいるなんて』


『お前ら…!!』


『あ、ついでにいいもの見せてあげましょう』


 男は指を鳴らすと彼の背後に巨大な真っ黒な狼が姿を見せる。ドス黒い狼に黒魔女は息を呑む。この魔物は何なのか、人工魔獣なのかわからない。


『こいつは、何だ…??!!』


『これは我々人間が作り出した人工生物ですよ。最近というか今さっき成功した生き物ですよ。我々の命令でこいつは動きます。面白いでしょ??』


『面白いと思っているのは貴様らだけだ!!!一体誰を犠牲にしたんだ!!!』


 黒魔女は声を荒げると狼は少しだけ声を出す。


『クロ…マジョ…ザマ゛……!ダズ…ゲ…!』


 その声は紛れもないルシファーの声。黒魔女は自分の家族でもあるルシファーを犠牲にされたことに怒りを見せる。その様子に彼は大いに笑う。


『君のお陰でいい材料が手に入ったよ!!!ありがとう!!!感謝するよ!!!!』


『貴様!!!!!!!!!!!許さん!!!!!ぶっ殺してやる!!!!!』


 暴れ出す黒魔女だがほとんど魔力の残っていない状態ではただの人と変わりがない。男は黒魔女を柱に括り付けて黒魔女の足元に火を付ける。焼かれていく身体の苦しみを味わいながら自分が無力だと感じる。きっと力があれば、ルシファーを殺されずに済んだはず。自分だって、人間に殺されることなんて無かったはずだ。

 黒魔女は最後の力を振り絞りルシファーの分身体を作り出し、まだルシファーが生きていることにする。そして自分の身体を糧にして厄災となる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「これが、ルシファーの記憶だと思います…」


 莉里亜は話し終わると全員の表情が暗くなる。聞こえてくるのは木片が焼ける音と誰かの足音。


「なに、この状況…」


「厄災、滅ぼしたんやろ??なんでそんなに暗いんや」


「あ、いないのに全部話しちゃった…。もう一回話そうか???」


「いや、リリアンちゃん。俺達の心が先に折れちゃうよ」


 ハンスが止めるとタツキが声を先に出す。


「俺らが殺したあの狼、ルシファーだったんだな。だから、黒魔女の魔法陣にいたんだな」


「そうだね。ふたりとも、幸せになるといいな」

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