第108話 浄化

 正体をバラすことにしたネイレーンは静かにハンスを見つめる。


「ネイレーン…!!やっぱりお前なのか」


「はい、そうです。黙っていてすみません」


「お前、生きていたんだな」


「いいえ、私は死んでいます。今は精霊女王として生きているだけです」


「そうなのか…だが、また会えてよかったよ」


 ハンスはネイレーンを抱きしめるとネイレーンもハンスの背中に腕を回す。幸せそうにしている二人を莉里亜は嬉しそうに見つめる。だが、この光景を和んでいる場合ではない。莉里亜は魔法陣の元へ向かい、破壊することを考える。


「莉里亜…!やるのか???」


「もちろんだよ、今やらないといけない!!!アルプトたちが頑張ってくれているのだから!!!」


 莉里亜は魔法陣に魔力を流し込む。すると魔法陣のバランスが崩れ、逆流を始める。


「こ、こんな風に、なるんだ…!!」


「莉里亜…これやばくないか???」


 魔法陣のバランスが保てなくなっていき、魔法陣が膨れ上がっていく。このままでは危険だと全員は直感で感じて、この地下室から出ることにする。全員が地下室から出ると銀狼が居ないことを莉里亜は心配になる。


「急げ!!!」


「でも、あの狼が…!!!」


「もう逃げているはずだ!!!!お前が死んだらどうするんだよ!!!」


 タツキは莉里亜の腕を掴み階段を駆け上がる。全員が登っていると下の方で爆発のような音が聞こえる。全員は下を見ると黒い煙のようなモノが吹き出してくる。


「これ!!!!」


「やばいぞ!!!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 黒魔女と戦闘をする彼らはアルプト本人の強さに驚愕する。自分たちでは対処ができなかったあの黒魔女を圧倒している。


「あの男、何者なんだよ…」


「私たち援護しかできていないのに、どういう強さなの」


「その方が助かるよ〜〜逆にオレの前に出てこられたらお前らごと殺しちゃうし」


 アルプトは黒魔女から距離を取ると、黒魔女が酷く疲れている様子を見せる。


「こ、こんなはずじゃ…!!」


「お前じゃオレに勝てないよ黒魔女。諦めな」


「まだだ、まだ…ッッッッ!!!!!!!!」


 黒魔女は何かを言おうとしていたが、黒魔女に異変が見れる。彼女の身体から放電しているように見える。


「これは???」


「キャァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!何が…!!お゛ぎでぇ゛ぇぇ゛!!」


「うまくいったみたいだな…。さてと」


 アルプトは指を鳴らすと自分たちと黒魔女、莉里亜たちの一つの場所に移動させられる。息の切れている莉里亜たちを見てアルプトは『どうした??』という顔をして見ている。


「あれ??場所が移動して…」


 莉里亜は顔を上げると皇宮が背後で爆発を見せる。あともう少し遅ければあの爆発に巻き込まれていたのではと莉里亜たちは考える。


「危なすぎるだろ…」


「大丈夫かい、主様ぬしさま??」


「大丈夫じゃないよ。危うくあの爆発に巻き込まれるところだったよ」


「ガチで怖かったよ…」


「ランウェルさんでも怖いと思っていたんですね」


「いや、いくらなんでも恐怖はちゃんとあるよ?!悪魔だからといって恐怖はちゃんとあるよ?!」


「へぇ〜〜〜」


「その反応、信じてないね」


 冷めた目つきで言う莉里亜にランウェルは嫌そうな顔つきで見つめ返す。すると上空から何かが落ちてきて真っ白な綺麗な女性も降りてくる。


「全く…!!!あたいがいないと何もできないのか!!!」


「えっと、もしかしてシロちゃん??」


「はい!!!そうですよ〜〜〜!」


 人の姿になっている白龍は嬉しそうに答えると瓦礫をどかして真っ黒な人が大泣きで座り込んでいる。


「シロちゃ〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!生゛ぎでだ!!!!!」


「泣きすぎだクロ!!!!いい加減にしろ!!!!!!」


「だっで!!!!!おで、一人゛で生ぎでない゛の、じってるでじょ゛!!!!!」


「知っているけどな…」


「黒龍…!!私を助けろ!!!!」


 黒魔女は黒龍に指令を出すが、黒龍は聞く耳を持たない。まずなぜ命令をすると言わんばかりの視線を黒魔女に送る。


「聞いているのか!!!!!」


「聞いているけど、なんできみを助けないといけないの???のに」


「なんですって???」


「俺は好きで暴れてただけ。俺命令がないと動けないからさ、自分で考えて動けないの。シロちゃんというご主人様がいないと」


「結構あたいたちつがいだと言われているけど、ただのご主人様と飼い犬みたいな関係なんだよね。だからお前はこいつとの契約を上書きすることはできないということになる」


「なんですって!!!」


 高らかと嘲笑う白龍に身体が震える黒魔女は今の状況に理解が追いつかない。黒魔女は今まで考えた計画がすべて水の泡になったことに頭をかきむしる。なぜこのような状況になったのかと思うと、目線は莉里亜に向かう。彼女が戻ってきたことが一番の原因だ。ルシファーにやらせたあの身体を入れ替える魔法。元々黒魔女が居たあのなにもない暗い空間。あの場所は外部の人間には何もできない。いくら高度な魔法を使ったとしてもあの場所にいるものを引きずり出すのは至難の業に等しい。

 黒魔女の怒りの籠もった瞳で莉里亜を見つめる。彼女が白龍と闇の神であるアルプトを連れて帰ってこなければきっとここまで状況がひっくり返されることはなかったはず。


「ふざけるな…!!!私は諦めない…!!ここで諦めたら、が報われない!!!!!お前ら全員、皆殺しだ!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る