第106話 黒魔女の棺

 地下室を覗いた莉里亜たちは中に大量の魔物が徘徊している。それはヒリリトンの魔塔の中で生け捕りにした生き物や狩猟大会で姿を見せた魔物が大量に徘徊している。


「ちょ!!なんですかこの数!!!」


「あの、公女様。まさかだと思いますが…これがいるから俺らをここに呼んだのですか?」


「いや、こんなにいるとは思っていませんでした」


 莉里亜は魔法陣の周りを徘徊しているのかが見える。誰も魔法陣に近づくものは居ない。


「あれに触れられないのかな??」


『あれに触れたらあの魔物たちは消滅するぞ?』


 頭の中にアルプトの声が聞こえ莉里亜は驚きを見せる。急に驚いた表情を見せる莉里亜に全員も驚いてしまう。


「どうしたの莉里亜??」


『突然で済まないな。この女の相手をしていたからなかなか声をかけれなかった。でもこの魔族たち結構使えるよ。援護もうまいし』


『そんなこと聞いてません…』


『あの魔法陣のことだろ??あれはまだ展開した状態なんだ。あれに触れたらあいつらは浄化されて人に戻る。だけど人に戻っても消滅するだけなんだけどな』


『消滅するってどういうことですか?!』


『そいつらの電磁波をオレは感じ取ることが出来る。それで、そいつらは昔の人間だな。昔に行われた人体実験の被害者で人としての形を保つことはできない。だから浄化されても灰になってしまうだけだ』


『そうなんだ、てかアルプトよく普通に話せるね。黒魔女と戦っているのに』


『いや、別にそこまで強くないから、ずっと話すことできるんだよね』


『こっちのことは気にしないでください。なんとかします』


『了解した、何かあれば連絡してくれ。オレのことを念じてくれれば答えるからさ』


『わかった、ありがとう』


 念話が切れると莉里亜は大きく深呼吸をする。息を吸い込んだ時に莉里亜は気合を入れる。突然の莉里亜の反応にタツキは驚きを見せる。


「莉里亜、本当にどうしたんだ????」


「ごめん、アルプトと話をしてたの。あの魔物は昔の人体実験で姿を変えられた人みたいなの」


「だからか…おいらが見た時にアイツらが魔物とは思えなかったんだな」


「そういうことになる。だけどあの人達は解放されても灰になってしまうんだよね。だけど成仏できずにいるのは可哀想だから、一人でも多く解放してあげたいです」


「了解した!!!リリアンちゃんのためにパパ頑張るよ〜〜〜〜!」


「リリィ、俺も頑張るよ」


「お兄様は死なないようにお願いします」


 莉里亜は地下室の扉を開けると中に居た魔物たちは莉里亜たちに視線が向く。魔物たちは一気に襲い掛かるとランウェルたちは一気に魔物たちの相手をする。

 タツキは莉里亜を守る形で先に進み出す。魔法陣の傍によるとそこには黒魔女が入っていたと思われる箱、棺が中央に置かれている。


「これが、黒魔女の棺…」


「莉里亜、どうやってこの魔法陣を破壊するんだ??」


「私がこの魔法陣に触れて魔力を送り込むだけ。この魔法陣は一定の魔力を保っているから一度魔力を

送ると、そのバランスが崩れて破壊することができるってシロちゃんが言ってたから」


「そこはアルプトじゃないのかよ…」


 莉里亜は魔法陣に触れるとなにかの断末魔のようなモノが魔法陣から溢れ出してくる。人の不幸な感情が溢れ出しているような感覚がある。


「なにこれ?!」


 溢れ出してくるそれらからは、声のようなモノが聞こえてくる。それは絶望を叫んでいるように感じてくる。


「莉里亜!下がれ!!!」


 タツキは莉里亜の前に立ち、得体のしれないそれらと対峙しようとする。やつらは一つに纏まり漆黒の巨大な狼に姿を変える。


「何だこれ!!!」


「これって…!!」


「「魔獣?!?!?!?!?!?!?!」」


 二人は声が合わさり魔獣だということを理解する。魔獣はタツキに向かって前足を振り下ろしてくる。タツキは莉里亜を抱えてそれを避けるが微かに服に亀裂が入る。


「今確実に避けただろ!!!!」


「攻撃範囲が広いのよ!!!タツキ頑張って避けて!!!」


「無茶なこと言わないでよ!!!」


「ランウェルから剣術教わってたんじゃないの?!」


「教わったけど…」


「なら頑張って!!」


「ひどくない???」


 タツキは莉里亜を抱えながら狼の攻撃を避け続ける。タツキの動きを見て、莉里亜は自分が邪魔なのだと理解する。安全な場所で下ろされると莉里亜はタツキと少し離れる。


「私は戦力にならないから一旦隠れているね!!!」


「莉里亜?!まぁいいけど」


 タツキは身軽になったと理解すると刀を振る。狼の前足一本を切り取ると間合いに入り込む。しかし腹からは無数の触手がありタツキはすぐに移動する。触手の攻撃を避けながら行動していると一本の触手が莉里亜の方へ向かっているのが目に入る。


「莉里亜!!!」


 タツキはその触手を切ろうとすると別の触手がそれを阻止してくる。タツキは自分ではできないことを悟り、声を上げる。


「誰か!!!莉里亜を助けて!!!!!」


 その声に全員が反応を見せる。触手の先に莉里亜がいることを見て早急に莉里亜の元へ走る。莉里亜は瓦礫の影に隠れていたが、片足をなにかに掴まれる。


「えっ!!!なになに???!!!」


 勢いよく引かれる足には触手がくっついており、それが狼の方へ運ぼうとしている。それであの狼が、黒魔女が生み出したものだと莉里亜は理解する。

 莉里亜を食べさせて莉里亜と契約しているアルプトと白龍を奪おうとしているのだと感じる。あの狼に食べられたりでもしたら完全に莉里亜は戻れない。莉里亜は瓦礫に捕まり、持っていかれないようにする。


「あなたの、思い通りなんて…!!させない!!!!私だって、幸せになりたいのよ!!!」


 莉里亜は叫ぶとその声に反応するようにオオカミの鳴く声が聞こえる。その声は今いる巨大なやつではない。別の個体だと理解する。

 出入り口から灰色のオオカミが中に入ってくると莉里亜の足に絡みついている触手を食い千切る。


「君は…??」

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