第104話 黒龍の黒魔女と白龍の黒魔女

 黒龍の鳴き声が響く教会の中ではガクドの治療を終えたアスモは危険を感じる。


「まさか、もうバレたの?!」


「周りの建物を破壊したんだろうね。恐ろしい人だこと」


 爽呪そうじゅは呆れるようにため息をつくと上に居た全員が降りてくる。ステロンは顔を引き攣らせた表情をしている。


「ステロンはどうしたのよ…」


「黒龍と…目があった」


「それって…!!!!」


「非常にまずい…!!!!」


 するとあまり感じたことのないエネルギーを感じて全員は体を強張らせる。出入り口を背にしていたステロン、カルウェン、ランウェルは振り返ると黒い光線が目に入る。全員はそれを直撃する。

 教会を見つけた黒魔女とルシファーは黒龍によって破壊された教会を見つめる。そのエネルギーに反応して生きる屍アンデットたちは教会に集まる。


「まさか、死んでないでしょ???」


 砂埃が晴れると古代魔法陣と悪魔の魔法陣で構築された壁によって全員は守られている。慌てて開いたために体に反動がある。


「結構、強力なやつだぞ…!!!!」


「黒龍の本気は、こんなものじゃない。こんなの序の口だ!!!」


「本物を見ている人の言うことは、違うね」


 ヒリリトンは腕に力が入らず持っていた杖を落としてしまう。その瞬間古代魔法の魔法陣はガラスのように粉砕してしまう。


「魔塔主がよく頑張っているじゃない」


 黒魔女は黒龍から降りるとイフリート、アルディン、ウィンディーネを呼び出す。あの三人を見てハンスは泣きそうな表情を見せる。リリアンの精霊だったあの三人はもう黒魔女の物だと理解してしまう。


「やめろ、お前たち…!!」


「イ…フ…!!!」


 目が覚めたガクドはイフを見つめる。自分の心臓部分を貫いた相手だろうがあれはリリアンの精霊。敵になってほしくない相手が、簡単に敵の手に渡ってしまったことに自分が情けなく感じる。


「もうお止めになってください!!!!黒魔女様!!!!」


「ランウェル、私はね…人間が好きだよ」


「ではどうして!!!!!」


「人間は私が見ていなくてもどんどん増えていく。優しい人もいれば悪い人もいる。それはわかっているの。でもね、そろそろやらないと。愚かな生き物には、粛清しないとね?!?!?!?!?!」


 嘲笑うかのように黒魔女は精霊たちにランウェルたちを殺すように命ずる。黒魔女は手を挙げるとイフたちは魔法を放つ準備をする。


「やめてくれ!!!!黒魔女様!!!!!!」


「殺せ!!!!!!!」


 黒魔女は手を振り下ろすとイフたちは魔法を放つ。酷い光線がランウェルたちを光らせる。


「はい、消せDelete!!!」


 誰かの声が聞こえて目を開けるとイフたちの魔法は綺麗さっぱり消えている。その現象に黒魔女は理解できずにいる。


「どういうことよ!!!魔法が消えるなんて…!!!!」


「ただ魔法を消しただけで驚かないでよ〜」


 姿を見せたアルプトは馬鹿馬鹿しいと思いながらあくびを見せる。見かけない姿にランウェルたちは目をパチクリさせる。


「君は…???」


「オレ?オレはアルプト。闇の神さ」


「闇の神??神様が何しているの??」


「なにって…主様ぬしさまの命令で来ているだけだよ」


「お前、誰かと契約したというのか!!!」


「もちろんだよ」


「お前は、誰と契約したんだ!!!神と契約できるやつはこの世界には居ないはずだ!!!!」


「そいつが、いなければ??」


 アルプトは不敵に笑うと黒魔女の後ろに居た黒龍が白龍に襲われる。黒龍は悲鳴に似た声を上げると白龍から女の悲鳴が聞こえて白龍が放り投げられる。


「きゃーーーー!!!助けて!!!!!!」


 投げられた少女をアルプトはキャッチする。ランウェルたちの元へ運ばれると莉里亜はほっと胸を撫で下ろす。


「怖かった…!!!!」


「大丈夫かい、主様ぬしさま???」


「死ぬかと思った…!!!もう1回死んでるけど」


 莉里亜の姿を見たタツキは驚きと嬉しさに口元が緩んでしまう。しかしそれが夢なのか本当なのかわからないが、彼女の名前を呼ぶ。


「莉里亜…!!!!」


「あ、龍鬼!!ただいま」


 いつもの莉里亜の反応にタツキは莉里亜の元へ向かう。アルプトは莉里亜から離れるとタツキは莉里亜を抱きしめる。もう見ること無いと思っていた莉里亜の姿に思わず喜びを見せる。


「リリアン…なのか??」


「お父様…!はい、私がリリアンだった者です」


「そうか」


 莉里亜はそっと伝えると、ハンスは莉里亜の頭を撫でる。いくらなんでも受け入れてくれないと思っていたため、莉里亜は驚いた表情でハンスを見つめる。


「おかえりなさい」


 優しく伝えてくれるハンスに莉里亜は笑顔で答える。もう言えないと思っていた言葉を。


「ただいま戻りました、お父様」


「どいつもこいつも、私の邪魔をしやがって!!!!!!全員殺してやる!!!」


 黒魔女は闇魔法を使うとアルプトがその魔法を消し去る。そして反撃と言わんばかりの魔法を黒魔女に放つ。黒魔女はそれを避けると上空に飛び立つ。背中からはコウモリのように大きな翼を生やしてその姿は悪魔そのもの。


「私を殺せると思っているのかしら?!」


「殺すつもりだよ、だからオレが来た。この闇の神がな!」


 アルプトはカラスのような黒い翼を生やすと黒魔女のことを追いかける。残ったランウェルたちは莉里亜を見つめて指示を貰おうとしている。


「ランウェルさん、ランベルさん、ステロン、お父様、お兄様、龍鬼はここに残って私のサポートをして!!!!ダンゲルさん、カリウル、ヒリリトンさんは生きる屍アンデットをできるだけ抑えて!!!!アスモさん、爽呪さん、カルウェンさんはアルプトのサポートをお願い!!!!みんな、死なないように!!!」


『了解!!!!!!!!』

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