第102話 孤独な寂しさ
両親が亡くなったことにすぐには理解できなかった莉里亜は、突然着替えさせられた黒い服に違和感を感じていた。そして両親の家族が揃うと誰が莉里亜の保護者になるのかの言い合いが始まった。
当時の莉里亜にはわからなかったが、両親はもしものことを考えて保険金をすべて莉里亜に入るようにしていたらしい。その金額が1億超え、そのことを聞いた両者の家族は金に目が眩み、莉里亜の奪い合いが始まってしまった。
『あの子はうちの息子の子供です!!あの子を引き取るのはわたしたちです!!!』
『何言ってるの!!!あの子はうちの娘の子供でもあるのです!!!あなた方に渡してたまるものですか!!』
『お父さんたちは黙ってて!!!お姉ちゃんの妹である私が引き取るよ!!!それに私子供いるからさ』
『そんなことを言っておきながら、お前らは金がほしいだけだろ!!!見え見えだぞ!!』
そんな言い合いに聞く身を持たない莉里亜は両親の側に静かにいる。莉里亜はこんなことになるのなら、一緒に行くのであったと心の底で思い続ける。
両方の話し合いが一時休戦すると母親の妹は莉里亜に近づき、自分たちを選ぶように言ってくる。母親と約束しており、もしも自分に何かあった時は自分に頼るように言われていたと嘘を付く。母親からは彼女を選んではいけないと言われていたため、莉里亜は首を横に振る。その瞬間彼女は莉里亜の顔を強く叩く。言うことを聞かなければ叩いてくるとわかる。
その瞬間彼女の旦那は彼女を突き飛ばす。莉里亜を叩いていたことを見ていた人々は彼女に向かってゴミを見るような目で見つめている。
『お前がそんな女だとは思わなかったよ!!!!全員そうだ!!!お前らはこの子の幸せなんかを考えていない!!!俺はこの子を連れて行く、金は全部お前らで半分にして分ければいい!!!』
彼は莉里亜を連れて出ていくと莉里亜は彼の娘になった。彼はIT企業の部長で名前を
彼との生活は両親と共に暮らしている時と同じぐらい幸せな生活だった。小学生に上がると、光輝の手伝いをしようと家事のことをやるようになる。小3にもなると洗濯物を干したり畳んだりするのをマスターしてトイレ掃除と掃除機をかけるのをうまくできるようになっていった。
『莉里亜はなんでもできて偉いね』
『そうかな??』
『おじさん助かっているよ。本当にありがとう』
光輝に頭を撫でられると不思議と嬉しさがこみ上げてくる。だが、この生活も長くは持たなかった、いや、まだ持ったほうだろう。莉里亜が高校一年になった時に、光輝はこの世を去ってしまった。莉里亜が中1の時に病気が見つかり、余命一年だと言われていたが、長く持ちこたえてくれた。
一人になってしまった莉里亜はいじめっ子女子の標的にされて、殺されてしまった。今まで忘れていた幼少期の思い出、なぜ今になって思い出したのかはわからないが、一人になるのがここまで恐怖で寂しさがあるとは思っていなかった。
「もう、一人は嫌だよ…」
泣きそうになりながら莉里亜は体を縮こませる。すると先程まで感じていた冷たさが一気に失くなっている。あるのは陽の暖かい温度、鳥の囀る声。
「ーなんか、場所が変わった???ー」
莉里亜は目を開けると平和そのものの景色。たくさんの蝶々が飛び回っており、鳥が空を飛び回っている。先ほどまでは水の底に居たはずの莉里亜は夢を見ているのだろうともう一度目を閉じる。
「こら、寝ようとするな」
目を開けると美しい銀色の髪を持ったきれいな女性が立っている。その姿に違和感を感じる莉里亜はあの世だと思ってしまう。
「天使??」
「違う。私は精霊女王よ」
「私は、死んだのでは???」
「確かにお前はあの火災で死んでいる。だけど、まだだ!まだやることが残っている」
「やること??」
「それより立て、お前の顔を覗き込みながら話すのは疲れる」
精霊女王は莉里亜に立つように言うと莉里亜は静かに立ち上がる。精霊女王は頷くと白い光を放つ白い玉と黒い光を放つ黒い玉が莉里亜の近くを飛び回る。
「なに???????」
「そいつらは名前のない精霊。生まれたばっかりだからその姿なんだ」
「そうなの…」
羽虫のような音を出しながら、莉里亜の周りを飛び回る名前の無い精霊たち。その姿に莉里亜は歌を歌っているようにも聞こえてくる。莉里亜は笑っていると精霊女王はその精霊たちが莉里亜を受け入れているように見えてくる。
「そいつら、相当お前のことを気に入っているようだな」
「えっそうなんですか??」
「あぁ、私も長いこと精霊女王をやっているが、そんなに警戒心無しで近くを飛んでいるのは初めてだ。だからなのかな、お前が上級精霊を呼び出せたのは」
莉里亜はその言い方に違和感を感じる。それは莉里亜としてではなく、リリアンだからだ強い精霊を呼び出せたはず。莉里亜は黒魔法を使う黒魔女なのだから。
「それは、リリアンのおかげでしょう」
「いいや、お前だからだ。リリアンは器にしか過ぎない、お前自身が精霊使いなんだ。それよりお前、昔に何かを助けたりしなかったか??」
「助けた????いいえ、覚えていません」
「そうか、その白いやつ…お前に感謝をずっと言っているぞ。『釘を抜いてくれてありがとう』だとよ」
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