第101話 蘇った厄災

 皇宮に向かったランベル、タツキ、ガクド、ハンスはそのまま宮殿に突っ込むような突撃をする。皇宮の周りには兵士の生きる屍アンデットが発生している。


「すごい数だな…」


「大丈夫…!ランベルさん!!!!」


『落ちるなよ????!!!!!!』


 ランベルは上空に昇るとひと吠えをして大量の雷を降らせる。その雷は生きる屍アンデットたちを感電させて数を減らしていく。ランベルは地上に降り立つとタツキたちを降ろしていく。


「タツキ先に行け!!!こいつらは俺に任せろ!!!」


 残った生きる屍アンデットたちをランベルは人の姿に戻って相手をする。中に入ったタツキはルシファーの気配を追って地下へ潜る。地下にはひどい悪臭が漂ってくる。人間の体が腐敗したような嫌な匂いにタツキたちは顔を歪ませる。


「何だこの匂い!!」


「腐敗した匂いだ、どうせルシファーが犠牲にした人たちが腐敗したんだろ」


 地下までやってくるとルシファーとリリアンが立っている。ルシファーはタツキ達を見て嘲笑うかのような笑顔を見せる。


「遅かったな、お前ら」


「ルシファー、莉里亜を返せ!!!」


「彼女はもう居ないぞ?」


「リリィ!!!」


 ガクドはリリアンのことを呼ぶと、リリアンはガクドに目線を送る。うっすら笑顔になると、ガクドは嬉しそうに笑顔になる。ガクドはリリアンの元へ駆け寄ると、リリアンは静かに手を伸ばす。ガクドはその手を取ろうと近寄るとあと少しのところで腹部に突き刺さる痛みを感じる。

 ガクドの口からは鮮血が漏れ、鉄の味が口の中に広がる。ハンスはガクドを見つめると背後に見たことがある姿が目に入る。それは間違いなくイフの姿。イフは真っ黒な剣を持っており、それをガクドに突き刺している。


「イフ、お前何している…?」


「あ、そうだったね…イフ、そういう名前だったわ」


 リリアンが口を開くと空色のドレスは真っ黒に変わり髪色は黒に近い紫色に変わる。ルシファーはリリアンに跪くと優しく頭を撫でられる。


「ルシファー、よくやったわ」


「はい!!黒魔女様…」


 嬉しそうにしているルシファーはリリアンの手を握ると手の甲にキスをする。イフはガクドから剣を抜き取るとリリアンの背後に戻る。イフは真顔で何も思っていない表情でいることに、ガクドは違和感を感じる。


「イフ、お前…!どうしたんだ!!!!!」


「…………」


「答えろ!!!イフリート!!!!」


「……………」


「なにを聞いても無駄よ。彼はもう死んでいる。私が生きる屍アンデットにしたからね」


「生きるアンデットだと!!!!精霊をそんなことできるわけがない!!!」


「私ならできる。悪魔たちの王だからね」


「悪魔の王…!そうかよ…」


 ガクドは痛みで体勢を崩すとリリアンでは無く、黒魔女は高い笑い声を上げる。黒魔女は黒魔法でハンスたちを攻撃をする。タツキは妖刀で魔法を切り裂き、ガクドとハンスを連れて皇宮を出ていく。

 外に出たタツキたちは生きる屍アンデットに囲まれているランベルと遭遇してしまう。ランベルは驚いている表情をしており、タツキたちが出てくることを予想できていなかった様子。


「お前らどうしたんだよ???!!!」


「彼女が黒魔女に取られた!厄災が復活した!!!」


「私から、逃げるのね」


 タツキたちの背後から声が聞こえ、タツキは死を覚悟してしまう。


「これは、まずいな!!!!」


 黒魔女はタツキたちに黒魔法を打ち込むが、防御魔法によって防がれる。強力な魔法に黒魔女は顔を歪ませる。


「魔塔主!!!!!」


 ヒリリトンはその場に居たタツキ、ランベル、ハンス、ガクドは魔法で転送させる。転送した場所は黒魔女から少し離れた場所。そこには怪我を追ったランウェルたちの姿がある。


「みなさん、よく無事でしたね」


「ガクド様!これは大変…!早急に治療をしましょう」


 水華すいかは治癒魔法でガクドの傷を治療していく。意識が遠退く状態のガクドはリリアンのことを思い続ける。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 水の底に沈んだ感覚のある莉里亜りりあは一人、目を閉じ続ける。今目を開けたところで誰も居ない、なにもない空間にいることに苦しくなり、絶望してしまう。莉里亜はどこで選択肢を間違えてしまったのだろうかと思う。

 いつものリリアンのように悪役になりきって過ごせばよかったのだろうかと思ったりもした。しかしリリアンは幸せになりたかっただけ、それすらこの世界は許してくれない。莉里亜はもう諦めることを考える。莉里亜という女は、幸せになってはいけなかったのだ。だから、愛する家族を失ってしまったのだ。

 莉里亜が引っ越しをすることになったのは両親が亡くなった為である。その日はとても寒かった日だった。まだ秋だというのに、ひどく寒い風が吹き荒れている日。一人家に居た莉里亜は両親の帰りが遅く、部屋の中で待ち続けている。


『お父さんたち、遅いな〜』


 一人で人形遊びをしていると殴るように扉をノックしてくる音が聞こえる。莉里亜はその音に驚き物音を立てずにゆっくり玄関に向かう。ノックする音は強くなりドアノブを乱暴に回している。怯えている莉里亜は体を震わせていると男女が言い合う声が聞こえている。

 莉里亜は身を震わせていると優しく声をかけてくる男の人の声が聞こえてくる。その声にそれが母親の妹の旦那さんの声だと気づく。莉里亜はそっと扉を開けると妹である人は莉里亜に向かって怒鳴りつけてくる。

 旦那さんは彼女を宥めてから莉里亜と目線をあわせてくる。そして、両親の死をその時に知らされたのだった。

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