第92話 黒魔女の話
リリアンは普通にステロンと話をしていたが、まさかの悪魔の言葉だということは知らずに会話をしていたことに動揺を隠せずにいる。しかしウルファも話ができていたため、それはどういうことなのだとリリアンは思う。
「ヒリリトン様、もしもそうだとしたら自分が会話ができている理由を知っているのでしたら、教えてください」
ウルファはリリアンと同じように会話をできている自分を不思議に思い、ヒリリトンに訊く。
「それは…公女様となにか強く繋がる物があるのではないのでしょうか???」
「公女様と…もしかして、騎士の誓いが原因でしょうか????」
「その可能性が高いです。そのぐらいの強い繋がりがなければ、悪魔との会話ができないでしょう」
「じゃあ、私は本当に…黒魔女なんだ…」
「そういえば、最近帝都で事件がありましたね。黒魔法を使う人がいたと」
「それ、私です。少し前まで皇宮の牢獄に幽閉されていました」
リリアンはこそっと言うとヒリリトンは冷たい視線を向けてくる。ネイレーンの娘であるリリアンを幽閉して閉じ込めていた皇族が許せなく思っている。
「酷いことは、されていませんか?」
「はい、特には…」
「そうですか、公女様は唯一の精霊使いなので、死んでしまっては困ります…」
「気をつけます」
リリアンは反省を見せるとステロンは紅茶を飲むのを止める。ヒリリトンはリリアンを見つめているとウルファはむすっとした表情を見せてヒリリトンの視界からリリアンを隠す。
「ウルファ、何しているの?」
「魔塔主がお嬢様を見つめているので…!」
「申し訳ない、だけど前から気になっていたことがあるんだ」
「なんですか???」
ヒリリトンは持っていたカップを魔法で宙に浮かせると、リリアンと目を合わせる。その瞳はリリアンの奥を見つめているようで、リリアンは思わず引いてしまう。
「やっぱり公女様、二つの力が感じれます」
「二つの…」
「力ですか???」
ウルファとリリアンは同じように頭を傾げてヒリリトンを見つめる。ヒリリトンは頷くと執務用の椅子に腰掛ける。
「えぇ、どうやら公女様には精霊使いの力と黒魔女の力が合わさってしまっています。本来ならばあり得ないことです」
「どうしてあり得ないのですか?」
「精霊は普通に言えば光の結晶のようなもの、黒魔女の力は闇の結晶、その二つを持ってしまうと二つは喧嘩して、どちらも使えなくなります。公女様の場合、その二つの力がなんらかの原因で合わさってしまったような感じです。どちらかの力が、転生してきたのでしたら、別ですけど」
ヒリリトンはリリアンのことを見つめ、わかっているような反応を見せる。その反応にリリアンは思わずドキッとして冷や汗が出る。その話にウルファはリリアンが攻められているような感じが取れて思わず立ち上がる。リリアンは慌ててウルファを座らせる。
「ウルファ、落ち着いて」
「お嬢様、自分は少し怒りそうです」
「この人はこんな感じだから」
「失礼ですね…!でも、あながち間違いではありませんね…」
「間違っていないのかよ…」
思わず呆れてしまうウルファだが、ステロンはヒリリトンを見つめる。
「要するに、黒魔女様は転生してきたと言うことか???おいらではわかんないよ」
「ステロンが言っていることは、本当よ。私は別の世界、異世界から死んで、リリアン・ネルベレーテに憑依してしまったの」
「お嬢様が…」
「公女様、あんたが死んだ理由については興味が無い。聞いたところで僕には関係無いんだからさ」
「ヒリリトンさんなら、そう言うと思いました」
「そういえば、悪魔たちの言う黒魔女様のことについて書かれている書籍が出てきたんだけど、君たちも読むかい???」
「黒魔女⁈⁈⁈読ませて下さい!!!!!」
リリアンはヒリリトンから書籍を受け取ると中身を読み始める。ボロボロで読めない部分もあるが、絵柄だけで読めるところを読む。
時代はかなり古く、この帝国ができた前の時代の話。人間界と魔界が繋がっていた時代。人間界にいる人間たちは最強の力を狙って長い年月戦争を繰り返していた。その様子を見ていた黒魔女は多くの命が失っていく姿を見て一人涙を流していた。
そんな時に人間たちは殺してはいけない龍の王様である白龍を殺してしまう。白龍が死んでしまい、
そんな様子を見た黒魔女は自分の命を削って黒魔法を使って龍と闘った。やっとのことで黒龍を鎮め、黒龍に眠るように黒魔女は伝える。黒龍はその言葉に素直に応じ、山の中で眠ることにする。
負傷した黒魔女は一人町の中を歩いていると人間たちは黒魔女を捕らえてしまう。町を救った救世主を彼ら人間たちは彼女を火刑に処してしまう。人が死ぬのを見たくなった黒魔女は、人を助けるために力を使ったと言うのに、その人間たちに殺されることに怒りを覚え、自らの体を厄災に変えて人間たちを襲う。その厄災となってしまった彼女を悪魔たちは箱の中に封印したと言う。
「これ、本当の話なんですか????」
「さぁね、昔のことだから知らないよ」
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