第91話 魔族の動き

 リリアンの頭の上に居る悪魔のことが気になるヒリリトンはリリアンに聞く。リリアンはどう答えるかを考えるが、嘘を言えばヒリリトンとの繋がりは悪くなると思い、リリアンは嘘をつくのをやめる。


「悪魔です、どう言うわけか私に寄ってきたのです」


「悪魔…ですか。その悪魔のことが気になりますが、ここに居ても何も無いでしょう。魔塔へいらして下さい」


 リリアンとウルファは頷き、魔塔へ向かう。ウルファはリリアンが乗ってきた馬を一緒に連れて魔塔へ向かう。ヒリリトンと会うのは今回で2回目だが、彼の存在はまだ分からない。脳内で作っていた物語とは大きく変わってしまったため、ヒリリトンも変わってしまっている可能性がある。


「公女様は魔塔に来てくれるのは今回で2回目ですね」


「そうですね」


「でも、本当にあの時は失礼しました」


「いいえ、私たちもたくさんのゴーレムを破壊しましたので…あのあと大丈夫でしたか?」


「ゴーレムはまた作ればいいので大丈夫です。そういえば、山賊に襲われませんでしたか????」


 ヒリリトンは山賊のことについて触れると、リリアンは静かに怒っている表情を見せてヒリリトンを怯ませる。リリアンの様子にウルファはヒリリトンに睨みを向ける。


「おかげさまで、ちゃんと山賊に襲われましたよ。酷い目に遭いましたよ」


「それは、大変でしたね」


「だからと言って、ヒリリトンさんを恨むことはありませんよ。ただ、一発殴らせてほしいだけです」


「殴るのはやめて下さい。顔に傷が残ったら嫌なので」


「私は心に傷ができそうでした」


「お嬢様、こいつ殺しましょうか???」


「やめて下さい!!!!!」


 悲鳴のような声を上げるヒリリトンだが、森の中のために助けてくれる人は誰もいない。リリアンはチャンスだと思うが、やる気が出ないためやめる。それに魔塔主を殺れば、これからの未来がどうなるのか分からない。


「そうこうしているうちに、魔塔に着いてしまいましたので、諦めます」


「い、命拾いしました…。どうぞ中へ」


 魔塔の前で二人が乗ってきた馬を置いて中に入る。前来た時とあまり変わっていない魔塔の中は静かで穏やかな感じになっている。


「なんだか、居心地が良くなっていますね」


「カーラ嬢が出入りをしていますので、穏やかになってしまいました」


「カーラ嬢は出入りしているのですか。よかったです」


 リリアンたちはヒリリトンの部屋に向かうと中が騒がしくなっている音が聞こえる。前来た時はとても静かだったが、中に何かが居るのはわかる。


「騒がしいですね」


 ヒリリトンは扉を開けると黒い狼のような魔物がヒリリトンに向かって噛み付くとしてくる。ヒリリトンは瞬時に防護魔法を展開し、魔物に噛み付かれるのを阻止する。魔法の鎖で魔物の動きを封じると鳥籠の中に閉じ込める。


「お怪我はありませんか????」


「はい、今のはなんですか????」


「狩猟大会の時に出てきた魔物です。生け捕りに成功しましたので、僕の部屋で研究をしていましたが、脱走していたみたいですね」


 ヒリリトンは魔物が入った鳥籠をロックすると魔物は出ようと頭を打ち続けている。


『出セ!!!ココカラ出セ!!!!!』


 リリアンは頭が割れそうなほどの痛みが走るとまた声が聞こえてくる。あの狩猟大会と同じような感覚にリリアンは顔を歪ませる。


「お嬢様!!!!」


「公女様、大丈夫ですか???!!!」


「ごめんなさい、たまにこうなるんです」


 二人はリリアンを座らせるとリリアンは狼の魔物を見つめる。あの狩猟大会の時から自分がおかしくなったような気がしてくる。


「今お茶を淹れますので、少々お待ちください」


 ヒリリトンは魔法を使ってポットを取り、お茶を注いで行く。前とは違うお茶の香りにリリアンはヒリリトンを見つめる。お茶を出されると二人はお茶を飲んで行く。


『黒魔女様、それうまいの???』


「あなたも飲むの????」


『飲んでみたい、人間が飲むもの全部気になるんだよ』


「でも、どうやって飲むのよ」


 ステロンは今の自分の姿を見てヒリリトンを見つめる。すると煙を上げてヒリリトンそっくりの姿に変わる。真っ赤な瞳をしたヒリリトンの姿にヒリリトン自身も驚きを見せる。


「あんた…人の姿にもなれるのね…」


「そうだよ〜てか言い忘れていたな申し訳ねえな黒魔女様」


 ステロンは紅茶をもらうとゆっくり飲んでいくが美味しくなさそうな表情をしている。その反応にリリアンはくすくす笑っている。その様子にヒリリトンは戸惑った表情をしている。


「あの、一つ聞いてもいいですか???」


「何でしょうか???ヒリリトンさん」


 ヒリリトンはリリアンを見つめながら疑問をリリアンにぶつける。


「まさかだと思いますが、その悪魔とずっとのですか??」


「えっ…??」


「その悪魔の言葉がわかるのですか???普通、悪魔の言葉は悪魔、もしくは黒魔女しかわからないはずなんです」


「えっ………!!!!!!」


 リリアンは思わずステロンを見つめる。ステロンはクッキーを頬張りながらリリアンを見つめる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る