第85話 黒魔法の真実
判決までやってきてしまったことにリリアンは平和な生活はもう無いのだと理解する。アドラが発言したのは弁護側の意見のみのような気もする。
「では、判決を…」
「裁判長!!!!」
「何ですか?検察官」
「彼女の判決は私が先ほど言った通りにしてください。彼女の爵位剥奪、皇族の奴隷にすると!!」
「わかりました!では判決を…!」
「裁判長さん、その判決なら…彼女の身柄はオレに任せてもらえませんか???」
「どういうことですか?!」
「彼女はたぶん黒魔法を扱えていないはずです。闇魔法を使えるオレが見ていたほうがいいと思います」
「何を言っているの!!!弁護側に任せられないわ!!!!」
「じゃあ、黒魔法で全員死ぬぞ」
「っ!!!!!」
「いいですよ、その代わり毎日彼女の様子を報告してくれるのならば」
「もちろんですよ、皇太子妃様」
アドラは笑って答えるとリリアンはそのやり取りすら耳に入ってこない。これでもう終わり、リリアンは舌を噛み切る準備をする。
「それでは…判決を!!!!」
すると扉を勢いよく開かれて、
「裁判、終わっちゃいましたか?!」
「今から判決を…!!!」
「あのババアはへリンじゃない!!!」
「バアア?!」
「爽呪…ババアはだめよ。クソババアよ」
「それはもう言い過ぎよ!!!!!なんなのあなたたち!!!」
怒りを見せるヘリンに二人はバカにした様子を見せている。そして二人の後ろからはもう一人のヘリンと
「えっ!!!ヘリン様が…二人?!」
「裁判長様、私が本物のへリンです!!彼女は皇后さまのメイド長です!!!彼女は黒魔法使いなのです!!!」
「そ、それは誠ですか?!」
「彼女は嘘をついています!!きっとあの人たちが作った偽物です!!!!」
「ではあのヘリンに解除魔法を掛けてくださればわかるはずです!!」
やってきたヘリンは包帯を付けていたヘリンを取り押さえるように言う。騎士たちは彼女を取り囲むが皇后がそれを阻止する。
「あなたたちは皇族の騎士でしょ!!!しかも女性に理由を聞かずに肌に触れるなんて、騎士の風上に置けない人たちね!!!」
「しかし、これもお役目なので…」
包帯をしていたヘリンはこの騒動で逃げ出そうとするが、それを爽呪は止める。水華は包帯を付けてたヘリンを取り押さえると爽呪はその隙に解除魔法を包帯を付けていたヘリンに掛ける。彼女は悲鳴を上げて抵抗をする。
二人は離れると彼女の体は見る見るうちに姿を変える。ピンク色の髪は紺色に変わり、体型も10代とは思えないほどの潤いのない体に変わる。
その姿はヘリンとは思えないほどの姿になる。その姿を目の当たりにした傍観者たちは言葉を失う。全員の注目が彼女に向いていると、朱炎はそっと口を開く。
「全員、見ただろ。あれがお前らの言っていた皇太子妃なのか????俺の目には、ただのババアにしか、見えないんだけどな」
そっと笑っている朱炎の姿に傍観者たちは怒りで騒動になる。その隙にリリアンを開放してハンス、ガクド、カーラ、ヘルミーナ、ダンゲル、カリウル、ヘリン、ウルファ、朱炎、水華、爽呪、アドラは裁判所を出ていく。裁判所を出たリリアンはアドラのもとへ向かう。
「カマエルス公爵様、ありがとうございました」
「礼はいらないよ、どうせ何もできていないんだし」
「でも、ちゃんと言っておきたいので」
「なら、また出会えたらちゃんとお礼をよろしく」
「はい!!」
リリアンは頭を下げるとアドラの姿はどこかに消えた後だった。馬車で帰った様子も無いため、魔法か何かなのだと感じる。
ーーーーーーーーーーーーー
帰りの馬車の中でリリアンは朱炎とダンゲル、ヘリンと一緒の馬車で帰ることになる。なぜこの組み合わせになったのはリリアンは理解できていない。
「あの、一つ聞いても…?」
「構いませんよ公女様」
「なんでこんな組み合わせに????」
「真実を話すためです!そうですよね?」
ヘリンは二人を見つめると二人は静かに頷く。朱炎は体のひび割れたような黒い傷跡を綺麗さっぱり消す。
「まずは公女様のあの現象についてですが、あれは間違いなく黒魔法です…」
「でしょうね…」
「だけど、公女様は精霊使い、どんな能力を持っているのは誰も知りません。なので、嘘情報を作ることにしたのです」
「嘘情報⁈もしかしてあの精霊使いの話は…」
「嘘ですよ、俺が作りました」
「朱炎様すごい!」
「巻物をボロボロにしたのはカリウルです」
カリウルはカラスの姿をして眠っている姿を見せる。リリアンはそっとカリウルの頭を撫でるとゴロゴロと言う音を出している。
「そして、それを実験して見せるために幻覚魔法を使って、裁判所にやってきました」
「それ…幻覚だったのですか⁈」
「もちろん、わざわざ怪我を見せる気はないので」
朱炎はにっこり笑顔で答える。自分のためにここまで頑張ってくれた朱炎になんとお礼を言っていいのかわからないが、彼らのお陰で命も、人権も守ることができた。助けられてばかりな自分が恥ずかしくも感じる。
リリアンはずっとあの部屋にいたためにしばらく起きていたが、疲れが出てすぐに眠ってしまう。ヘリンも同じように眠ってしまい、馬車の中では静かな寝息で充満している。
「ランウェルさん…」
「ダンゲル、お前はこれからは俺らと共に行動をしろ。奴らも動き出すはずだ」
「はい…」
ダンゲルは跡が残ってしまいそうな力で自身の腕を握る。これから起こるであろうことに、備える必要がある。
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