第84話 本当の犯人

 ダンゲルの肩に居るカラスの姿をしたカリウルは、代わりに話すことにする。裁判長は巻物を開封すると書かれている内容に驚いている様子見せる。


「証人!これは一体どこで入手されたのですか⁈」


『ちょっとした裏ルートや!やけど詳細は聞かんといてや、渡してくれはった人に申し訳あらへんから』


「ところで、なんで鳥が話してるのですか?」


 周りの人はカリウルに注目が集まり、カリウルは人の姿に変わる。その容姿に全員が驚きを隠せずにいる。


「おいらは精霊や!こいつは公女はんとおんなじや!」


「公女様と…⁈」


「考えれない…!」


「やはり精霊使いなのか???」


 傍観者である貴族たちは驚きを隠せずに声が漏れ出ている。リリアンはダンゲルが持ってきたあの巻物にかけるしかない。


「それでは証人…この巻物について話してもらえると助かります」


「かまへんで〜、うんじゃ話させてもらいやす。そいつはとあるルートで入手した巻物の写しや。本物ほんもんは、東国にあるさかい」


 リリアンはまた東国にあると言うことに驚きを隠せずにいる。カリウルはその中身を話し始める。あの巻物の中には精霊使いのある娘が居たと言う。彼女の持つ精霊の力は魔塔主でさえ敵わないほどの強さだと言われている。

 だが、その娘の力に嫉妬した魔女はたくさんの人の命を生贄として捧げ、強力な悪魔を呼び出したという。だが、悪魔はそれでも足りないため、魔女は自分の持っている魔力の器を生贄にして強靭な黒魔法を手にしたと言う。魔女は黒魔女になってしまい、強力な黒魔法で精霊使いの娘に攻撃をしたという。

 彼女に黒魔法が当たる瞬間、彼女から黒い煙が発生したという。そして黒魔法を放った黒魔女は考えられないほどの激痛が走り、身体中に黒いひび割れができてしまったという。そしてその黒魔女は二度と魔法が使えなくなったという。

 全てを話し終えるカリウルはリリアンを見つめる。リリアンから出たあの黒い煙は精霊が契約者を守るために出たものだとわかる。そのことによって裁判長は驚いた表情をしている。しかし納得のいかないヘリンは声を荒げる。


「そんなの…!認められないわ!!!!!ならばどうして私はこんなに怪我をしたというの???!!!」


「あぁ、可哀想な皇太子妃…あのような悪が裁かれずに、泣寝入りさせられるなんて…!」


「じゃあ、あんた…!その包帯取ってみろよ…!」


 やっと話せるようになったダンゲルはヘリンを見つめる。ヘリンはダンゲルを睨むがダンゲルは引くことはしない。ダンゲルはリリアンを見つめると安心させてくれる目線を向ける。その様子にリリアンは勇気をもらい、安心感を持つ。


「あんたの包帯、右腕から左目まで肌が見えないように巻かれているけど、黒魔法を喰らったとしたら、でも呼ぶだろ?」


 そのことにヘリンはど肝を抜かれたような感覚が駆け抜ける。そのことに監察官であるハルサーンは驚いた表情をしている。黒魔法を喰らったとしたら、その身を蝕み聖職者の神聖な力で浄化をしてもらわなければならない。


「こいつはこの帝都にある全ての教会で、浄化するために呼ばれた聖職者のリストです。このリストの中には、皇宮に呼ばれた聖職者が誰一人としていません!」


 ダンゲルはそのリスト表をを裁判長に渡す。中身を読む裁判長は皇宮に呼ばれた聖職者の名前がどこにもいない。


「そんなの…!!!帝都の外の人に頼んだのです!!!その人のほうが信用できるので」


「では、その人はどこの誰ですか????ギルドメンバーに頼んで向かってもらいますが??」


「えっと…それは……!」


「言えないのですか????言える訳ありませんものね?そんな人いないのですから」


 奥歯を噛みしめるへリンの様子にリリアンはダンゲルに感謝をする。彼のおかげで助かっているのだから。


「包帯…取れますよね???」


 ヘリンは薄っすらと笑顔を見せると、まだ切り札があると言わんばかりの表情を見せてくる。彼女は静かに包帯を取るとその皮膚には黒魔法を喰らった素肌が見える。その姿にダンゲルは動揺を見せる。


「どうしたのですか???私がけがをしていないとでも思っていましたか???」


「嘘だろ…」


「裁判長…!私が聖職者を頼まなかったのは理由があります!」


「何でしょうか????」


「私は、生まれた時から神聖力にとても弱かったのです。なので浄化するためと神聖力を受けると、反動で体に酷い痛みを生じてしまいます」


「なるほど、ではそれを証明するものはありますか???」


「ベルウェン教皇様に聞いていただければ」


「彼は今、祈りを捧げていると聞いていますので…すぐに聞き出すのは難しいと…」


「あぁ!裁判長、私としたことがそんな重要なものを提出するのを忘れておりました!」


 わざとらしくハルサーンは書類を渡すと裁判長はそれを受理する。中に書かれている内容は確かにベルウェル教皇が書かれた内容で間違いないと裁判長は理解をする。


「検察官、今度からは忘れないようにお願いします」


「申し訳ありません。以後反省いたします」


 これにより、リリアンの判決が塗り替えることのできないまま、裁判は判決まで行くことになってしまった。

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