第80話 大会の森の中
リリアンが捕まったことにより、公爵邸は忙しく動いている。リリアンが黒魔法を使っていないことを証明しなければならない。
「リリアンちゃん…!!どうか無事でいてくれ」
「公爵様~~~~???自分のこと見えます????」
ハンスの目の前に姿を見せるイフに、ハンスは後ろに倒れて驚きを見せる。イフは申し訳なさそうな表情をとると、勢いよく扉を開けガクドが中に入ってくる。
「父上!!!!大丈夫ですか⁈」
「ガクド…」
ガクドはイフの姿を見るとほっと安心した表情をする。落ち着いた表情になったガクドは髪を掻き上げるとゆっくり中に入ってくる。
「騒がせて申し訳ありません。
イフは困ったような顔をしてハンスに話す。ハンスはリリアンのことに驚きイフの肩を掴む。イフは驚いた表情をしてハンスを見つめる。
「リリアンちゃんは無事なのか!!!!酷いことされていないか???!!!」
「お、落ち着いてください…!!
「そうか…」
ハンスはそのことを聞いて椅子に腰掛ける。リリアンの無事を確認できることに安心感を抱く。しかし、なぜイフを発動できるのかと考えるがよく考えればイフは精霊、使い魔とは違う。そのため魔法道具で魔法を封じても精霊を呼び出すのは簡単だろう。
「イフ、お前はこのまま行動可能か?」
「はい、可能です」
「なら、俺と行動しないか?」
「ガクド…!」
「父上、俺はこのままイフを連れて狩猟大会の会場へ行こうと思います」
「だがまだ皇宮騎士団がいるはずだ!注意しろ」
「わかっています」
部屋から出たガクドはイフを連れて会場へ向かう。このまま正面から向かえば、簡単に彼らにバレてしまう。
「イフ、透明にする魔法とか持っていないか?」
「そんなものは持ち合わせていません。しかし一定距離の間、認識を無くさせることはできます」
「なんか、それすごいな…」
「精霊のほとんどがそれを使えますよ」
「マジか!!」
イフはガクドと自分にその魔法を使い、兵士の横を通り過ぎていく。バレないかとヒヤヒヤしながらガクドたちは森の中に入っていく。森に入るとイフは術を解き、ガクドと捜索する。
「ところで、ガクドさんは何を探すのですか?」
「ヘリン令嬢だ」
「ヘリン⁈どういうことですか!!!」
「リリィが連れて行かれた後、彼女と会ったが匂いが違ったんだ」
「
「そういう意味じゃなくてだな…」
「ご
シルフィアは姿を見せてイフに説明をする。ガクドの生まれ持った能力で、魔力の匂いを感じ取ることが出来る。その力がこのような時に発揮できるとは思っていなかった。
「すごい力ですね。ところで匂いが違うというのは、どういうことですか??」
「どうにも彼女の匂いと違ったんだよ。例えると初めの彼女の匂いは砂糖菓子のような甘い匂いだったのが、リリィが連れて行かれた後の彼女の匂いはレモンのような匂いだったんだ。こんなに匂いが変わることは一度もなかったんだ」
「その話を聞くと、確かに変ですね」
「そうだろ⁈中身が入れ替わらなけれ無理な話だ」
「もしかして、今いるヘリンは偽物???」
イフの言葉にガクドは静かに頷く。しかし、彼女が入れ替わっているとしたら皇族が気がつかないわけがない。そうなると、初めから入れ替わることを知っているとしたら、不思議に思わず普通に接する、もしくは今まで以上に良くする。
「だけど、そのヘリンが誰なのかだな…」
「伏せて!」
ガクドとイフは歩いていると、イフは異様な気配を感じ、突然ガクドを伏せるように言う。イフはガクドの頭を掴みそのまま押し倒す。その影響でガクドは顔面から倒れ込む。
「痛ってぇな!!!!なにしや…!!!!」
「静かに!!!」
ガクドは鼻を痛がりながらイフに怒りを向けているとイフはガクドの口を塞ぐ。塞がれたガクドは怒った顔をしていると遠くの方で足音のような音が聞こえる。それと同時に話し声も聞こえてくる。声からして男女の二人組ではないのかと感じる。
二人の姿が目に入ったイフは殺気を立てないように静かに呼吸をする。こちらにやってくる二人の会話は隠れているイフたちにも届く。
「まさか、こんなことになるなんて…」
「考えておりませんでしたね」
「早く証拠になるようなものを見つけなければ…!」
女の方は焦っているような声でいるが、男の方は特に焦っている様子は感じられない。二人組は隠れているイフたちの前で止まるとその場所で会話を止める。その時にバレていることを感じ、ガクドは剣に手をかける。
すると草をかき分けて
「何しているのですか?」
「それはこちらのセリフです」
「あら!イフじゃない!!」
「やはり
「あんたたちは、東国の…」
「ガクド様、お久しぶりですね」
顔を見せる水華は嬉しそうに笑顔になり、イフたちに目線を合わせてくる。なぜ彼女らがいるのかが疑問だが、四人は草陰に隠れるように座り、お互いに話をすることになった。
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