第79話 皇太子妃?
食事を取るリリアンは騎士に違和感を感じる。食事は質素だが罪人が食べるには豪華すぎる。リリアンはスプーンを置いて騎士の方に向く。
「あなたは、誰なのです???」
騎士は少しだけ驚いたような反応を見せると、冗談だと思っているのか笑っているような反応を見せる。
「まさか、忘れられているのですか?公女様??」
ちゃんと声を聴いたリリアンは、目を丸くさせて飛び上がるように立ち上がる。
「あなたは、まさか!!!!!」
騎士は兜を取ると少しだけ汗をかいているランベルの姿に、『水も滴るいい男』という単語が頭の中に出てくる。
「あの、公女様??」
「はっ!!!すみません、つい」
「構いませんよ。お元気そうでよかったです」
「でもランベルさん、どうやってここまで」
「
「そうだったのですか」
リリアンは嬉しそうに軽く笑顔になると帝国の紋章ではない鎧だということに気づく。
「ランベルさん!!その鎧…!!!!」
「これは東国の鎧ですよw面白いですね、他国の鎧を着ていても誰にも怪しまれないのってwwww」
ランベルは嘲笑うようにくすくす笑っているとリリアンは頭を抱えたくなる。この皇宮がそんなに警備が甘いことに気づくとは思いたくなかった。あの皇宮の騎士団団長があのような人だとわかれば騎士団が無能ばかりだということは理解できる。
「笑っている場合ではないですよ…バレたら本当にどうするのですか…」
「その時はプランBに移るだけですよ」
「プラン??」
「それと、早めに食べてください。バレますよ」
「そ、そうですね」
リリアンは急いで食べるが、ランベルは詰まらせないかと心配になる。
「その、プランBとはなんですか???」
「気になりますか???」
「はい」
ランベルはリリアンに耳打ちをして教えてくれる。それはリリアンを誘拐する闇の宗教団体になるということ。リリアンのことを黒巫女として君臨させて、闇の支配者である魔王と婚約させるという計画らしい。
「とんでもない計画ですね…」
「そうなんですよね…でも、いくらなんでもこの鎧をつけていれば東国だということはバレバレですけどね」
苦笑いでいうランベルにリリアンも思わず苦笑いになってしまう。ランベルは兜を着けると食器を片付ける。また来ると伝え、そのままランベルは部屋を出ていく。リリアンはランベルがいるということを理解すると、朱炎もこの帝国にいるということが理解できる。
しかしいくらなんでも国を放っておいてここにいるとは考えられないと思うが、あの朱炎ならリリアンを優先にしそうに感じる。
「本当にそうだとしたら…私に執着しすぎでしょ!!!」
リリアンは頭を抱えていると部屋の外で騒いでいる声が聞こえる。声からするに騎士と女性の声が聞こえる。何かを争っているようにも聞こえる。
「皇・・・様!!いくら・・・・危険す・・・!!!お・・・・・い!!!!」
「皇・・妃様がお・・・・・・・ております!!!!!そこ・・・、部屋の・・・・なさい!!!」
会話が聞き取れないリリアンは顰めっ面で会話を聞いていると扉をノックをして扉を開ける黒髪のメイドは、怒っているような眼をしている。
「公女様、皇太子妃様があなた様とお話をしたいそうです。よろしいですね???」
「初めから私には拒否権なんてものは無いのでしょう??」
「そういうことですので、あなたたちはこの場を離れなさい」
きつく言うメイドに彼らはそれに従う。彼らが去っていくと腕に包帯を巻き、片目を隠しているヘリンがやってくる。どことなくヘリンとは思えない雰囲気にリリアンはヘリンを見つめる。
「お久しぶりですね、公女様」
「ヘリン…令嬢???」
「そうですが、何でしょうか????」
「公女でもあろうお方が、ご挨拶も無しに話しかけるなんて、ネルベレーテ公爵では教育もろくにできていないのですね」
「申し訳ありません。若き月…皇太子妃に、ご挨拶を申し上げます」
「これ、ナリータ。公女様になんという口を利くの。公女様に失礼ですよ」
「申し訳ありません。しかし…」
「言い訳は結構です。ですが、今回私が来たのは、公女様に罪を告白してほしいからです」
リリアンはヘリンの鋭い瞳孔に視線を向ける。今回の事件が起こる前は優しく微笑ましい雰囲気を出していた人が、汚物を見るような目をすることが出来るのだろうか。リリアンは今目の前にいるのがヘリンとは思えなくなってくる。
「私の罪ですか???」
「はい、公女様は誰が何と言おうとも闇魔法を使ったのです。自覚がなかったのですか?それとも、哀れなヒロインのふりをしているのですか???」
「何が言いたいのです…!」
リリアンはヘリンを睨み、怒りを見せるがヘリンリリアンの反応が分かっているような様子を見せる。
「私のこの怪我、公女様のせいなんですよ」
「私のせい???」
「公女様の黒魔法で私は怪我をしたのです。これは動かぬ証拠です、罪を認めれば処刑は免れるでしょう。ですが、一生私の奴隷ですけどね?」
ヘリンの言動にリリアンは違和感を覚える。事件前のヘリンは田舎に帰りたいと言っていたが、今目の前にいるヘリンは皇宮に居ることを望んでいる。それに彼女に付き人のメイドがいること自体変だと感じる。
「私は、黒魔法も黒魔女でもありません。お引き取りを」
「そうですか、残念ですね。罪を認めればいいのに。あ、それと公女様は処刑されませんよ。どうせ皇宮の奴隷になるのですから」
くすくす笑って去っていくヘリンに、リリアンは睨んで出ていくことを望む。リリアンは考えなければならないことが増えたような気がする。
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